研究テーマ

図書館へ行こう

子どもの頃、夏休みに、近くの図書館へ勉強や宿題をしに出かけた思い出を持つ方は多いのではないでしょうか。近年図書館は、オフィスを持たないノマドワーカーや、お年寄りの憩いの場としても注目されるようになってきました。今回は自宅でもない、会社や学校でもない、"第三の居場所"として利用が広がっている図書館に注目してみました。

図書館の自由

今年の4月5日に掲載したコラム「逃げる力」には、皆さんから大きな反響が寄せられました。このとき紹介したのは、鎌倉市図書館のツイートです。学校に行けない、もしくは行きたくない子どもたちに向かって、「もうすぐ二学期、学校が始まるのが死ぬほどつらい子は、学校を休んで図書館へいらっしゃい」「一日いても誰も何も言わないよ」「逃げ場所に図書館も思い出してね」と呼びかけたのでした。ツイートした日付は2015年8月26日。子どもの自殺が年でいちばん多くなる9月1日を意識してのものです。
図書館がこのようなツイートをしたのは、図書館が掲げているある理念と無関係ではありません。それは「図書館の自由に関する宣言」と呼ばれるもの。公益社団法人「日本図書館協会」が1954年に採択し、79年に改訂したものです。その第3条で「図書館は利用者の秘密を守る」とうたっています。鎌倉市図書館はこの理念にのっとり、子どもが平日の昼間に図書館にいても、「どうしたの?」「なぜ学校に行かないの?」などと声がけしないよといったのでしょう。そう、図書館は、憲法にある基本的人権の尊重にもとづいて、個人の自由を最大限に守ってくれる、安心して過ごせる居場所なのです。

ユニークな図書館

図書館といえば書籍の殿堂ですが、なかには特別なこだわりをもって蔵書を揃えているところもあります。東京都世田谷区にある「大宅壮一文庫」はそのひとつ。評論家の故・大宅壮一さんの雑誌コレクションを引き継いで誕生した日本初の"雑誌の図書館"で、74万点もの所蔵資料があります。ユニークなのは独自の「雑誌記事索引検索データベース」があること。館内にある端末に向かってキーワードを打ち込むと、それに関連した雑誌の記事が検索できるのです。これは「本は読むものではなく、引くものだよ」という生前の大宅さんの言葉から生まれた便利機能。マスコミ関係者、学者や文筆家など、調べものをしたい人にはうってつけの図書館です。
広島にも風変わりな図書館があります。まんがばかりを集めた「広島市まんが図書館」。開設は1997年5月、市内の公園内にあったミニ図書館を改装し、まんがに特化した図書館としてオープンしました。公共の施設なのに蔵書の99%がまんがという異例の図書館で、隣接する「広島市まんが図書館あさ閲覧室」と合わせると19万冊近くの蔵書があるそうです(2015年3月末)。
もうひとつ、秋田市にある公立大学法人「国際教養大学」の中にある「中嶋記念図書館」をご紹介しましょう。ここの最大の特徴は「眠らない図書館」であること。国際教養大学の学生と教職員は、なんと365日24時間、この図書館を利用できるのです。中嶋嶺雄初代学長の「いつでも勉強できる場を提供したい」との思いから生まれたものだとか。一般の人も平日は夜10時まで利用できるというから驚きですね。

まちライブラリー

メッセージを添えた本を持ち寄って、まちのあちこちに小さな図書館を作り、人と出会おうという活動が全国に広がっています。「まちライブラリー」と呼ばれるこの活動を提唱したのは、磯井純充さん。東京都港区にある六本木ヒルズで「アーク都市塾」や「アカデミーヒルズ」などの学びの場を作った人です。
この活動のおもしろいのは、ただ図書館をつくるだけではなく、本によって人と人をつなごうとしていること。まちの中にあるカフェやギャラリー、シェアオフィス、お寺、病院などに本棚が置かれ、小さな図書館が生まれ、そこを中心にお互いに学びあい、気づきあうワークショップやイベントが開かれています。なかには「亡くなった妻の蔵書を活かしたい」との思いから、自宅に本棚を作って「まちライブラリー」を始めた方もいらっしゃるとか。いろんな人がいろんな思いで始めた「まちライブラリー」は、今では全国で470カ所に(2017年6月17日現在※)。本を通じたゆるやかな人の輪が広がっています。

何万冊、何十万冊という蔵書を揃えた立派な「公共図書館」から、「まちライブラリー」のような私設の図書館まで、日本にはさまざまな図書館があり、誰でも気軽に本に親しめる環境が整っています。思えば、これは相当に幸せなことではないでしょうか。
読書に限らず、勉強をしたり、仕事をしたり、新聞を読みに行ったり、涼みに行ったりと、さまざまな使い方ができる"第三の居場所"としての図書館。あなたはどんなふうに活用していますか。

参考図書:
「本で人をつなぐ まちライブラリーのつくりかた」(磯井純充/学芸出版社)
※参考サイト:「まちライブラリー 森記念財団後援『まち塾@まちライブラリー』」

研究テーマ
生活雑貨