子育て・教育のほとりで
子どもが一般の学校ではないオルタナティブスクールに通うようになってから、子育てや教育に興味を持ち、学ぶようになりました。学校外の「多様な学び」や「不登校問題」「海外の教育事情」など、子育て・教育まわりのさまざまな話題を取り上げて紹介していきたいと思います。

フィンランドの先生

2019年12月11日

忙しい日本の先生たち

日本の教育界ではかなり以前から、先生の働き方が問題になっています。労働環境があまりにもブラックすぎやしないかというのです。確かにうちの近くにも公立の小学校がありますが、夜のかなり遅い時間まで職員室に明かりが灯っています。以前にFNN系列のニュースで見たのですが、OECD(経済協力開発機構)が1週間あたりの教員の勤務時間を調査したところ、小中学校とも日本が最長だったそうです。勤務時間は小学校が54.4時間、中学校が56.0時間。1週間は5日なので、1日平均11時間も先生は働いている計算になります。職員室の灯がなかなか消えないのもうなずけますね。
なぜそんなに忙しいかというと、とにかく事務作業が多いのだそうです。教育委員会から来るさまざまなアンケート、いじめの調査・信頼できる大人がいるか調査・先生は体罰していないか調査・友達とトラブルになっていなかった調査などに答えるだけでかなりの時間を取られます。また、部活などの課外活動の負担も大きく、OECD調査平均が1.9時間なのに対し、日本の先生はその4倍近くの7.5時間を費やしています。そして、皮肉なことに実際に子どもに向かって授業をしている時間は短く、週18時間と調査平均の20.3時間を下回っているのです。日本の先生方は授業以外の煩雑な仕事に追われているのですね。
では、フィンランドの先生たちはどんな働き方をしているのでしょうか。今回のブログは、日本の中高一貫校で教員をしていたTさんの話をもとに書いています。日本の学校のあり方や教員の働き方に疑問を持ったTさんは、海外の事情を知りたいと思い、職を辞してフィンランドに渡り、中高一貫校でインターンを経験しました。そこで見た先生の働き方は、日本のそれとはまったくかけ離れたものでした。

フィンランドの先生の働き方

いちばんの違いは、勤務時間の短さです。フィンランドの先生は朝8時に出勤し、午後2時頃には学校を出て帰宅できるそうです。日本の先生のように事務作業や部活の指導で遅くまで学校に残ることはありません。また、夏休みが約2ヶ月半あり、さらに秋休みやクリスマス休暇もあって、その間は学校に顔を出す必要は一切ありません。たっぷり休みを取れることも、フィンランドの先生にとっては魅力のひとつになっているようです。
授業は一人1日3~4コマを受け持つそうで、これは日本とさほど変わりありません。ただし、フィンランドの先生には大きな裁量があり、教室でどんな教え方をするかはすべて先生に任されています。授業で使う教科書から、内容や進め方まで自由に決めることができるのです。また、いじめや不登校などの問題も、学校に専門のスタッフがいて、チームですみやかに対応していきます。何から何まで担任の仕事になっている日本と違って、フィンランドの先生は授業で生徒に教えることに専念できるのです。

恵まれた環境から生まれる先生のゆとり

「フィンランドの先生を見ていると、まったく強制されている感じがしないんですよね」とインターンを経験してきたTさんは言います。「先生たちもみんな仲がよく、授業のないときは職員室のソファでコーヒーを飲みながらゆったり過ごしています。楽しんで働いているなぁという感じ。生徒たちのいちばん近くにいる大人がゆったりしている、それがなんとも素敵だなと思いました」
フィンランドでは学校の先生の社会的な地位が高く、保護者からも信頼され、尊敬されています。そして、教員になるのも日本より難しく、大学の修士を出ていないとなれません。みんなの憧れの職業であるため、教員になるための大学入試の競争率も高くなっています。
日本もかつては先生が尊敬され、教員になるのが難しい時代がありました。しかし、過酷な労働が問題になったこともあり、先生という職業が敬遠され、教員を目指す人の数は年々減り続けています。そのためにさまざまな自治体で、いま学校の先生不足が深刻化しているのです。 最後にもうひとつ、OECDから発表された調査結果をご紹介しましょう。2016年における「初等教育から高等教育までの公的支出の国内総生産(GDP)に占める割合」です。トップがノルウェーの6.3%で、2位がフィンランドの5.4%、3位がベルギーの5.3%でした。で、日本はというと、教育に使っているお金はGDP比2.9%で、35カ国中の最下位でした。北欧の国々とは経済規模が違うので、単純な比較はできませんが、それにしても最下位とはなんとも不名誉な結果ではないでしょうか。

教育はその国の未来を創る無形のインフラだと思います。お金ですべてが解決するとは思いませんが、もう少し教育に予算を割いて、教員の待遇を改善すべきではないでしょうか。先生方が幸せになれない学校で、どうやって子どもたちは幸せになれるのでしょう。教員の働き方改革は、この国の待ったなしの課題だという印象を持ちました。

(イラスト:中田晢夫)

  • プロフィール くらしの良品研究所スタッフ。17歳の子どもの父親。一般財団法人東京サドベリースクール評議員。

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