研究テーマ

敏感な子の育て方

「HSC」という言葉をご存じですか? 英語の「Highly Sensitive Child」を略したもので、人と比べて敏感な性質を持った子のことを指すそうです。HSCは、人と違う敏感さを備えているがゆえに、生きづらさを抱えることも多いとか。でも、その特性を理解してふさわしい育て方をすれば、思いやりをもってイキイキと活躍するすばらしい人になるそうです。今回は5人に1人の割合でいるといわれる、ひといちばい敏感な子、「HSC」に焦点を当ててみました。

HSCの特徴

幼稚園や保育園には、いろいろな子がいますね。元気に走り回る子がいれば、黙々と好きなことをやっている子がいる。ものおじせずに堂々としている子がいれば、恥ずかしがって人前に出たがらない子もいる。そんな中、アメリカの心理学者であるエイレン・アーロンさんは、他の子とちょっと違う性質を持った敏感な子たちがいることに気づき、「HSC」と名付けました。そして、アーロンさんの著書「Highly Sensitive Child」を翻訳し、「ひといちばい敏感な子」として日本に紹介したのが、精神科医でスクールカウンセラーでもある明橋大二さんです。
HSCの特徴は、以下の4つに集約できるといいます。(1)深く考える、(2)過剰に刺激を受けやすい、(3)共感力が高く、感情の反応が強い、(4)ささいな刺激を察知する。この4つの特徴をHSCは必ず備えていて、当てはまらないものがひとつでもあれば、その子はHSCではないそうです。
また、ここが肝心なのですが、HSCは病気や障がいではありません。あくまでも人より敏感という「気質」を持った子どもです。この敏感さは「治す」ものではなく、「自分らしさ」と捉えて伸ばしていくことが、HSCの子育てだと明橋さんはいっています。アーロンさんや明橋さんの著書にはHSCを見分けるチェックリストが載っているので、わが子がHSCかなと思った方は、ぜひ参考にしてみてください。

HSCの生きづらさ

社会で幅をきかせているのは、「普通」という概念です。「普通はこうだ」「普通にできるでしょ」と、日頃、私たちも無意識に「普通」という言葉を使います。この「普通」という概念は、大多数の人の価値観から成り立っています。だから、人より敏感な少数派のHSCは、ときとして「普通」に合わせられずに苦労するのです。
たとえば、HSCは感受性が強いので、大声で叱られるのが苦手です。他の子の何倍も強烈に感じてしまいます。中には自分ではなく、他の子が叱られているのに恐怖を感じる子もいます。靴の中の石ころやシャツのタグなどを異常に気にしたり、まぶしすぎる照明や騒々しい場所を嫌がったりします。また、刺激を避けようとするため、人見知りになりがちで、仲間になかなか溶け込めない、あるいは発表の場で固まってしまい、発言できなくなることもあります。「普通にできるでしょ」ということが、できない。それで苦労するのです。
幼児教育のうちはまだいいのですが、学校に上がるとHSCの苦労は何倍にも増してきます。学校が子どもに「普通」を強要してくるからです。休み時間の教室の騒々しさなどは、HSCにとっては地獄のように耐えがたいもの。先生の怒鳴り声に身がすくみ、恐怖で学校に行けなくなる子もいます。このため不登校になったり、引きこもりになったりするケースも少なくないといわれています。

HSCの育て方

一方、HSCにはいいところもいっぱいあります。なにより敏感なので、人の気持ちがよく分かります。直感がすぐれ、想像力豊かで、思慮深いという側面もあります。繊細で、感情豊かで、愛や思いやりにあふれた、すてきな子たちなのです。
子育てをしていると、どうしても子どもの「できない」に目が行きがちで、人並みにできるようにしてあげたいとの思いから、つい叱ったり、厳しくしつけたりします。でも、感受性の強いHSCに、このような対応は逆効果かもしれません。明橋さんの本には「敏感な子がイキイキと伸びるために親ができること」が挙げられています。そのひとつが、「強い語調で叱らない」こと。そして、「いいところを見つけて、ほめるようにする」こと。叱らずにほめてばかりいると、「甘やかしている」と見られがちですが、子どもの要求を受け入れるのは、決して「甘やかし」ではないとのこと。人に比べて敏感なHSCの、マイナスをプラスに変えるための子育て法なのです。

子育てをしていると、自分の親や周囲の人からさまざまなアドバイスを受けることがあります。ところが、「HSCを育てるときには、そういうアドバイスは、たいてい的外れ」と明橋さんはいいます。「5人に1人の子を育てるときに、5人に4人の子育てのアドバイスは、合わないことが多い」からです。
HSCの子育ては、一般の子と違うので、親は苦労が多いかもしれません。でも、敏感な子は愛情もいっぱい受け取る力があるので、人の気持ちの分かるすばらしい子に育つといわれています。
あなたのお子さんは敏感ですか? もし、よその子と比べて少しでも敏感だなと思うところがあったら、ぜひHSCについての情報を集めてみてください。子育てについての考え方が、根本からガラッと変わるかもしれません。

参考図書:
「HSCの子育てハッピーアドバイス/明橋大二著」(1万年堂出版)
「ひといちばい敏感な子/エイレン・N・アーロン著 明橋大二訳」(1万年堂出版)

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