2地域居住 ─富士山と東京、行ったり来たり─
東京から約100km離れた富士山の北麓で暮らしながら、週の半分近くは仕事で東京へ。そんな2地域居住を続ける研究所スタッフのブログです。過去50回にわたって連載したブログ「富士山麓通信」の続編となる今シリーズでは、時折り都会の出来事も織り交ぜながら、暮らしのあれこれを綴ります。

①手軽に手前味噌

2018年03月28日

味噌作りを始めたのは、20年以上も前のこと。東京で暮らしていたころ、近所のお友だちから手作り味噌をいただいたのがきっかけでした。「手前味噌ですが…」と手作りをおすそ分けする暮らしぶりがとても素敵に思えて、しかも「簡単なのよ」と聞けば、これはもうトライしないわけにはいきません。
そして実際に作ってみたら、たしかに簡単! その後、手前味噌を作りつづけ、子どもの通う小学校の総合学習の授業に教えに行ったこともありました。

恒例になっていた味噌作りですが、この冬は仕込みの時期にバタバタしていて時間の余裕がなく、気がつけば3月。ここ富士山麓は東京に比べて気温が低いのでギリギリまだ間に合うのですが、追い込まれた感じではゆったり味噌作りをする気分になれず、いたずらに時間が過ぎていきました。

そんなとき見つけたのが、いつも甘酒用の麹を買う味噌蔵で、今年から冬季限定で売り始めたという「蒸し大豆」。即、飛びついたのは、言うまでもありません。
味噌作りは基本的に簡単な作業ですが、前の晩から大豆を水に浸して、翌日その大豆を茹でるところまでが、いちばん手間と時間のかかる作業。その部分を省けるなら、追い込まれた私にもできそうだと思ったからです。
しかも、自分で作るときは「茹で」大豆ですが、この味噌蔵のものは、国産の有機大豆を味噌作り職人が「蒸し上げた」もの。蒸すことで、大豆の旨みと栄養もしっかり閉じ込められているはずです。
いちばん大変なところを人まかせにしていいのかなぁという気がしないでもありませんが、それでも、自分で作れば手前味噌! というわけで、今年はちょっと手抜きの手前味噌作りとなりました。

※材料は、たったこれだけ。左から、蒸し大豆、米麹、塩。

前日から大豆を浸しておくという工程がないので、材料が届いたその日に、さあ、仕込み開始です。味噌の材料は、大豆と塩と麹のみ。仕込みの作業もいたってシンプルで、煮大豆をつぶして塩・麹と混ぜ合わせ、団子状の塊にして容器に詰めるだけ。それだけに材料の良し悪しで仕上がりが左右される気がして、私はいつも越前の有機味噌蔵に注文します。以前、取材でうかがったことのあるこの味噌蔵の米麹は、自然栽培や無農薬有機栽培の米に蔵付きの麹菌をつけたもの。麹の元気度はピカイチです。

※麹は自然栽培玄米に蔵付きの麹菌を付けたもの

【蒸し大豆を使った味噌作りの手順】

1)蒸し大豆は、人肌に温めて使います。

2)人肌に温めた大豆をつぶします。すり鉢がなくても、麺打ちの棒やビン、ポテトマッシャーなど、自宅にあるもので代用できます。

3)塩と麹は混ぜて合わせて、塩きり麹にしておきます。

4)大豆をすりつぶしたら、塩きり麹と混ぜ合わせます。次におむすびを作る要領で団子状の塊にし、容器に打ち付けるようにして空気を抜き、押し込みながら平らに詰めていきます。

5)空気に触れないようにラップをかけ、落しぶたをして重しをのせたら、仕込み完了。

途中4~5ヵ月後に一度ふたを開けて「天地返し(上下をひっくり返す作業)」を行いますが、あとは、麹菌が活動して発酵を促してくれるのに任せ、ひたすら熟成の時を待ちます。そして半年から10ヵ月後にはおいしい味噌の出来上がり。気温の低いここ富士山麓では、発酵に1年はかかりますが、その分、長期熟成ならではのこなれたおいしさに仕上がります。

1年のうちの一日を味噌作りにあてるだけで、どこにも売っていない味噌が食べられるのですから、こんなおいしい話はありません。ましてや今回のように蒸し大豆を使えば、半日にも満たない作業。忙しいときは一部を人に頼りながらでも、手作りという本筋だけは守り通したいと実感したことでした。

今回は、小学生のころ一緒に作り今では大人になった子どもが、面白がって手伝ってくれました。「無心になれるところがいい」とは、彼の弁。たしかに、何も考えずに夢中になってする手作業は、子どものころの砂場遊びにも似ている気がします。多忙な生活で頭脳が疲れている人には特に、癒しの効果があるかもしれません。初めての方や時間のない方は、まずは蒸し大豆か茹で大豆を使って、手軽に手前味噌作りをなさってみては、いかがでしょう?

  • プロフィール くらしの良品研究所所員
    M.Tさん

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