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風呂敷は、元祖エコバッグ?

プラスチック製レジ袋の有料化がスタートした7月以降、エコバッグ持参で買い物をする人が増えてきました。その一方、新型コロナウィルス禍の中でエコバッグを使うことに衛生面で不安を感じる人も。たしかに、食べものや生ものを入れるとなると、そうした不安もわからないではありません。そんな中、風呂敷をエコバッグ代わりに使う人が増えているとか。今回は、知っているようで知らない風呂敷にスポットを当ててみましょう。

エコバッグは心配?

ある調査でエコバッグの使用頻度を尋ねたところ、「必ず使う」「ほぼ使う」人が半数近く。「時々使う」人も合わせると、80%近くの人がエコバッグを利用しているという結果でした。ただ、同じ調査で「エコバッグで困る点は?」と尋ねると、「新型コロナウィルスを考えると衛生的に心配」と答えた人が46%以上になったとか。「必ずレジ袋を買う」という人(この調査では約20%)以外は、多くの人が衛生面を気にしながらエコバッグを使っていることになります。几帳面な人は、買物の後、その都度、袋の内と外を除菌スプレーなどで拭いているという話も。とはいえ、毎回そこまでする余裕がない人も多いのではないでしょうか。

一枚布だから、できること

そこで最近注目を集めているのが、風呂敷。どの家にも眠っている、あの四角い一枚布です。なんの変哲もない、と言ってしまえばその通りですが、その分、変幻自在。入れる物の形や大きさ、量に応じて、四角いものも丸いものも長いものも包めるマルチクロスです。立体でないから、汚れが溜まる場所がなく、洗濯もしやすく衛生的。サイズさえ選べば、結び方ひとつで、のし袋から弁当箱、ワインボトルや一升瓶、スイカ、剣道の竹刀(しない)や布団まで包めるという懐の深さは、シンプルな一枚布ならでは。結ぶことで固定して安定して運べたり、自転車のカゴなどにくくりつけたりできるのも、最初から形づくられたバッグにはない利点と言えるでしょう。さらに、スカーフやショール、ひざ掛け、ソファーカバーなど、包む・運ぶ以外で幅広く使えるのも魅力です。

つつむ、はこぶ

奈良時代にはすでに存在していたといわれる風呂敷。当時は、僧侶の袈裟や楽器などを包むのに使われ、「平包み」「ころも包み」と呼ばれていたようです。「風呂敷」の名前で呼ばれるようになったのは、室町時代に蒸し風呂の床の上に敷いたり、脱いだ衣服を包んだりしたところから。その後、江戸時代の銭湯の普及とともに庶民の間に広まり、同時に旅の大衆化で荷物を運ぶのに便利なものとして使われていったとか。そういえば、時代劇では風呂敷に包んだ手荷物や弁当を斜め掛けしている旅人の姿をよく見かけますし、安藤広重の「東海道五十三次」にも、風呂敷を背中にくくりつけた庶民の姿が数多く描かれています。ものを包むにも持ち運ぶにも便利で、繰り返し使える風呂敷は遠い昔から多くの人に愛用されていたんですね。

風呂敷でエコバッグ

風呂敷で作るもっとも簡単なエコバッグは、隣り合う角を真結びし、もう一方の隣り合った角も真結びして、結び目を持ち上げるだけというもの。その他、ショルダーバッグやリュックも簡単にできるようで、インターネット上にはさまざまな結び方が動画で紹介されています。ちなみに、エコバッグに利用する場合、スーパーの買い物などには100×100cm以上のサイズが使いやすく、肩に掛けたり背負えるリュック型にしたりする場合は115×115cmくらいあった方が良いとか。「ハンカチ王子」ならぬ「ふろしき王子」と称する人もいて、その動画を見ると、エコバッグはもちろん、斜め掛けのバッグ、ウエストポーチ、巾着袋、浴衣用の帯まであって、自由な発想に驚くばかり。「結び方次第で、折り紙のように形を変えて楽しめるのが風呂敷」という言葉は、一枚布の可能性を感じさせます。

撥水加工なら、さらに多用途に。

昔ながらの風呂敷だけでなく、昨今は水をはじき汚れが付きにくい撥水加工を施した風呂敷にも人気が集まっているようです。雨の日でも気にせず荷物を運べるだけでなく、冷凍食品や生鮮食品などの買い物にも使えるという衛生面の安心感もありそう。
また、エコバッグとしてだけでなく、急な雨の時のレインカバーにしたり、旅行のサブバッグとしてキャリーの取っ手にくくりつけたり、ジムやプール帰りの濡れた衣類を包んだり、赤ちゃんと一緒に外出するときのおむつ替えシートにしたり、大判のものはテーブルクロスにしたり、アウトドアでは荷物置きやレジャーシートにしたりできる汎用性も魅力。撥水加工がしっかりしたものは給水バッグにもなるので、防災袋に常備している人もいるようです。

風呂敷でエコバッグと聞くと、なんとなく難しそうな気がしますが、実際にやってみると意外と簡単です。それに、結んだりほどいたり、何度でもやり直しできるのが風呂敷。さらに、繰り返し使え、簡単に洗えてゴミも出さないとなると、環境問題に関心の高い人たちが風呂敷に注目するのもうなずけます。風呂敷の良さをもう一度見直して、いまの暮らしに合う新しい使い道を工夫してみるのも楽しそうですね。

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