研究テーマ

サイバーセキュリティ

世界最初のiPhoneが発売されたのは、2007年6月29日のこと。それからまだ12年しか経っていないのに、もはやスマホは生活に欠かせない必需品となりました。あらゆるものがネットでつながる便利な時代。しかし、便利であるが故に、そこには落とし穴もあります。アカウントやパスワード、個人情報を盗み取るフィッシング詐欺から、国家を脅かすサイバー攻撃まで。このような犯罪から、私たちはどうやって身を守っていけばいいのでしょうか。

Society5.0とは

「Society5.0」という言葉をご存じですか。狩猟社会、農耕社会、工業社会、情報社会と進化してきた人類が、いま第5段階の社会に突入しているということを意味する言葉だそうです。Society5.0の中核を成すのは、最新のデジタル技術。すべてのモノをインターネットにつなげて活用する「IOT(Internet of Things)」もそのひとつです。スマホと家電をつなげて、外出先から見たいテレビ番組を録画するとか、帰宅する前にエアコンのスイッチを入れて部屋を冷やすとか、昔の人が見たら魔術のようなことがIOTによってできるようになりました。また、リアル空間に設置したさまざまなセンサーからデータを集め、集積されたビッグデータをAI(人工知能)で解析して、社会の課題を解決するということも行われています。道路を走っている無数の自動車から情報を集めて渋滞予測に活かすとか、車全体の流れを把握して信号機の時間を調節することも可能になるでしょう。このようにリアルな空間とサイバー空間を超えて情報が行き来する便利な社会が、Society5.0なのです。

便利の裏に潜む危機

これまで、「インターネットでつながる」といえば、パソコンやスマホのことでしたが、Society5.0の社会ではあらゆるものがインターネットに接続します。となると、サイバー犯罪やテロの手口も従来のものと変わってきます。たとえば数年前、アメリカで次のようなことが起きました。米国製の車がハッカーに乗っ取られ、ハンドルやブレーキを意のままに操られる可能性があることが指摘されたのです。この問題をきっかけに、実際に140万台の車がリコールされるという騒ぎになりました。近い将来、日本でも車の自動運転が実現することでしょう。顔の見えないハッカーに自分の車が乗っ取られる可能性があるかと思うと、穏やかではいられません。また、街中のいたるところにある防犯カメラもハッキングされる恐れがあるそうです。防犯カメラから流出した映像によって脅迫されるといった犯罪も起こりえるかもしれせん。たいへんな世の中になってきたものです。

巧妙化する詐欺の手口

ある日、銀行からメールが届き、「あなたのアカウント情報に不備があります。セキュリティを強化してください」と言われます。慌ててメールにあるアドレスを開くと、デザインからロゴまで本物そっくりな銀行のホームページが現れます。「パスワードを入れてログインしてください」という指示に従った瞬間、あなたは大切なパスワードを盗まれてしまいます。
このような「フィッシング詐欺」と呼ばれる手口は年々巧妙になってきています。2015年1月に起きた日本年金機構の個人情報流出事件も、似たような手口でした。谷脇康彦さんの著書「サイバーセキュリティ(岩波新書)」によると、日本年金機構宛に着信した不審なメールの件名は「厚生年金基金制度の見直しについて(試案)に関する意見」、「給付研究委員会オープンセミナーのご案内」、「厚生年金徴収関係研修資料」、「【医療費通知】」となっていたそうです。よほど疑い深い人でないと信じてしまいますね。事実、職員たちはうっかりメールを開封し、パソコンが感染して、125万件という大量の個人情報が流出してしまったのです。
このような犯罪に対しては、電子機器に残された証拠から犯人を割り出す「デジタルフォレンジック」という技術があるそうですが、攻撃者が他人になりすましたり、匿名を維持するための技術を使ったりするらしく、実際に犯人を特定するのは至難のワザのようです。それにもともとインターネットは、電気、ガス、水道などと違って、民間主導で広まってきたインフラです。国家がどこまで介入するかというのも微妙な問題を含んでいるのです。
結論からいうと、サイバー犯罪や攻撃から完全に身を守る方法は、今のところなさそうです。どんなに厳重に家に鍵をかけても、空き巣や泥棒が根絶できないのと同じことかもしれません。パスワードをマメに変える、疑わしいメールは開かない、個人情報は安易に入力しないなど、世間一般で言われている対策を講じて身を守るしかなさそうです。

今後は、スマホやパソコンを使っている世代がどんどん高齢化してきます。となると、今は電話を使って行われている"振り込め詐欺"なども、メールやSNSに移行してくる可能性があります。息子や娘の名をかたって送られてきたメールを開いたらパソコンが感染した、そんな被害が出てくることも十分に予想されます。
バーチャルとリアルが交錯する社会が生み出す落とし穴に、私たちはもっと注意を向けていくべきなのかもしれません。

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