研究テーマ

早生まれと遅生まれ

年度の始まる4月は新入学のシーズンですね。さて、学校に上がるとき、その年の1月1日~4月1日生まれの人は「早生まれ」と呼ばれ、前年の4月2日以降に生まれた人と同じ学年になります。たとえば小学1年生の場合、4月生まれの子は入学してすぐに7歳になりますが、3月生まれの子は1年遅れでようやく7歳に。この1年の違い、大人になれば大したことはないのでしょうが、成長期にある子どものうちは意外なほど大きく影響するようです。というわけで、今回は早生まれと遅生まれの違いについて調べてみました。

プロスポーツ選手は遅生まれが多い

スポーツの世界では昔から、プロで活躍するような選手には遅生まれが多いといわれています。実際にそれを裏付けたのが、奈良女子大学の中田大貴准教授の研究で、Jリーグの選手を調べた結果、4~6月生まれの選手が全体の34.7%なのに対し、1~3月生まれの選手はわずか14.6%でした。野球も同じで、4~6月生まれのプロ選手は32.8%で、1~3月生まれは14.2%だったそうです。
中田准教授は同時に一般の児童・生徒の体力も測っていて、年度の前半(4月~9月)生まれの子と、後半(10月~翌3月)生まれの子を比較しました。すると男子では小学校1年から中学校3年までの全学年で、前半に生まれた子の体力が上回ったそうです。特に中学2年生の男子では、平均身長で4.6㎝、体重3.3㎏、立ち幅跳び14㎝、握力4.2㎏、50m走で0.4秒もの違いがあったとか。一般に、先生や保護者は運動ができる子を褒める傾向にあります。遅生まれの子は結果を残してどんどん自信を付けますが、負けがちの早生まれの子は、自信を失い早期に諦めてしまうのかもしれません。その結果がプロ選手の数の差となって現れているのでしょう。

海外では入学を遅らせる制度も

早生まれと遅生まれの差は学力にも現れるようで、早生まれの子のテストの点数が遅生まれの子に比べて低いということが、世界中の研究で報告されています。そして、この差は学歴にも反映されるらしく、一橋大学の川口大司准教授らの論文「誕生日と学業成績・最終学歴」によると、早生まれと遅生まれの人では、4年生大学の卒業率にも差があることが分かりました。もちろん遅生まれの人の方が高学歴の割合が高くなっています。このように、生まれ月によって不利になる傾向があるため、海外では早生まれの子の入学を1年遅らせる制度があるとのこと。アメリカではこれを「アカデミック・レッドシャーティング」と呼び、10%程度の保護者がこの制度を利用して、幼稚園や小学校の入学年齢を遅らせる選択をしているそうです。

中にはADHDと間違われるケースも

ここで一つ気になることがあります。アメリカで4~7歳の子ども約40万人を対象に、8月生まれと9月生まれを比較する研究が行われました(アメリカは9月入学なので、8月生まれが早生まれになります)。その結果分かったのは、ADHD(注意欠陥多動性障害)と診断された子の割合が、8月生まれは9月生まれより34%も高かったということ。生まれ月によってADHDの発生率が変わるはずはないので、早生まれの子の中にADHDと誤診されたケースが混じっていると推察されます。確かに小さい子の中には、落ち着きがなかったり、じっと席に座っていられない子がいたりします。でも、年齢が上がるにつれ落ち着きが出てきて、注意深く行動できるようになることもあります。ADHDの診断を下すとき、特に年齢が低い場合は、生まれ月を考慮に入れる必要があるのかもしれません。
と、このように不利なことばかりが目立つ「早生まれ」ですが、前述した中田准教授の研究では面白いことも分かっています。芥川賞・直木賞受賞者327人の生まれ月を調べたところ、1~3月生まれが37%で、4~6月の19.9%、7~9月の19%を大きく上回っているのです。それで調べてみたら、たまたまかもしれませんが、村上春樹や村上龍、三島由紀夫や芥川龍之介などはみんな早生まれでした。体力や学力で引けを取る分、早生まれの子は冷静に物事を眺めたり、考えたりすることに長けているのかもしれません。あくまで統計的に多いというだけなので、一概にはいえませんが、興味深い研究結果ではあると思います。

日本の学校には、海外のように入学を遅らせる制度はありません。園や学校に上がると、早生まれの子はいろんな面で遅れをとってしまう可能性があります。運動会の競争や、テストの成績などで苦い思いをすることも多いでしょう。でも、その差は成長とともに徐々に縮まり、大人になるころには自然に解消されます。ですから周囲にいる大人としては、子どもの時期に少々できないことがあっても、責めたり嘆いたりせずに、長い目で見ることが大切ではないでしょうか。人にはその人なりの成長のスピードがあるので、何月生まれの子であっても、できないことで劣等感を抱かないようにサポートしてあげることが大切だと感じました。

研究テーマ
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