研究テーマ

eスポーツ

エレクトリックスポーツ(略してeスポーツ)をご存知ですか。野球やサッカーのように、体を使って汗を流すスポーツではありません。モニター画面に向かい、コントローラーを操って対戦するゲーム形式のスポーツです。なんだ、テレビゲームのこと? と思う人がいるかもしれません。でも、そのゲームスポーツの人気が高まり、いまや数億円の賞金が出る大会が開かれるまでに至っています。すでにプロゲーマーも誕生し、まもなくオリンピック種目になるかもしれない、そんな"現代eスポーツ事情"にスポットを当ててみました。

海外では高額賞金の大会も

いきなりお金の話で恐縮ですが、eスポーツの大会はどれくらい賞金が出るのでしょうか。賞金の多寡は、その分野が仕事として成り立つかどうかの一応の目安になります。で、調べてみたところ、驚くべきことが分かりました。去年「DOTA2」というPCゲームの世界大会がカナダで開かれましたが、その賞金総額は約2,550万ドル。日本円でおよそ28億円でした。そして、優勝チームが手にした賞金は12億円を超えていたのです。ちなみにテニスのウィンブルドンの賞金総額は約42億円、男女のシングルスの優勝賞金が3億円ほどですから、決して見劣りしない賞金額です。
なぜこのような高額賞金が出せるかというと、「DOTA2」というゲームには限定アイテムが手に入るプレミアムチケットがあって、そのチケットの売上の25%が大会賞金に当てられるからです。つまり、ゲーム人口が増え、チケットが売れればそれだけ賞金総額が増え、その賞金を目当てにゲームに参入してくる人が増えるという仕組み。たかがゲーム、されどゲーム、これだけ高額賞金が出るのであれば、プロスポーツとして十分に成り立ちますね。

2022年アジア競技大会の正式種目に

2018年、インドネシアのジャカルタで開かれた「第18回アジア競技大会」では、陸上競技や水泳をはじめ、サッカー、バレー、バスケなど、41競技465種目の試合が行われ、日本は中国に次ぐ75個という金メダルを獲得しました。この大会でeスポーツはデモンストレーション競技のひとつとして採用され、日本の代表チームは「ウィニングイレブン18」という競技でみごと金メダルを獲得しています。日本ではまだ子どもの遊び程度にしか認識されていないゲームの世界ですが、アメリカはもちろん、中国や韓国などのアジア諸国ではすでに立派な競技として成り立っています。次回、2022年に中国の杭州で開かれる「第19回アジア競技大会」では、eスポーツは正式種目として採用されることが決まっています。日の丸を背負った代表チームが、外国人ゲーマーとしのぎを削り、熱戦を繰り広げる姿が見られるのです。

お寒い日本のeスポーツ事情

世界中で盛り上がりを見せているeスポーツですが、日本は世界から一歩も二歩も遅れを取っているのが現状のようです。アジア競技会で優勝はしたものの、あくまで「ウィニングイレブン」という日本生まれのゲーム種目のみ。他の五種目「リーグ・オブ・レジェンド」「アリーナ・オブ・ヴァラー」「スタークラフト2」「ハースストーン」「クラッシュ・ロワイヤル」など、海外で人気のゲームは、日本では競技としてあまり普及していません。理由として考えられるのは、国内大会の賞金の安さ。海外では数千万~数億円も出る賞金が、日本の大会ではせいぜい10万~30万円ほどだそうです。壁となっているのは「景品表示法」という法律。企業が主催する大会の場合、賞金は「景品」と見なされるために上限の縛りが出てくるのです。また、大人世代にあるゲームに対する偏見も障壁となっているかもしれません。ゲームは子どもの遊びであって、大人が真剣にやるものではない。そんな認識が、本格的なeスポーツの普及を阻んでいるようです。

出てくるか、eスポーツ界のスター選手

「ゲームばっかりやってないで、勉強しなさい」と日本の親はよく言います。でも、野球でプロを目指すような子に、「野球ばかりやっていないで」とはあまり言いません。野球は仕事になるけれど、ゲームじゃ食っていけないという認識が親の世代にあるからでしょう。
でも、これからは違うかもしれません。野球やサッカー、テニスなどと同じように、小さい頃からeスポーツに夢中になり、世界の舞台で活躍する選手が出てくる可能性はあります。テニスのメジャーな大会のように、世界のトップゲーマーが競技場で対戦し、それが全世界に中継される日が来るかもしれないのです。
一方で、ゲームをやりすぎると「ゲーム依存症」になるなどの健康被害が心配されています。また、IOC(国際オリンピック委員会)のバッハ会長も、「オリンピックの競技に暴力や差別を助長する競技が入ることはありえない」と、いまのところeスポーツには消極的的です。2024年にパリで開催されるオリンピックで、eスポーツが正式種目になるかどうかはまだ分かっていません。

ただ、それでも「ゲーム=子どもの遊び」という認識が、世界中で変わりつつあることは事実です。昨年、日本FP協会が発表した「小学生が将来なりたい職業」の1位はサッカー選手で、2位が野球選手だったとか。もしかすると、その順位の中にeスポーツがランクインして来る日は、そう遠くないのかもしれません。

研究テーマ
生活雑貨

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