研究テーマ

援助や配慮が必要なすべての人へ

たとえば妊娠初期の女性や難病を抱えている若い人などは、一見しただけでは「援助や配慮が必要な人」には見えません。そのため電車やバスの優先席などに座っていると、白い眼で見られることもあるのだそうです。なかには「なんで座っているんだ!」と叱られてしまうことも。そんな外見からでは分からない「援助や配慮を必要とする方」のために誕生したのが「ヘルプマーク」です。東京都から始まった取り組みが、全国へと広がっています。

ヘルプマークって何?

ヘルプマーク

「ヘルプマーク」を作成したのは、東京都の「福祉保健局」というところ。そのホームページには「義足や人工関節を使用している方、内部障害や難病の方、または妊娠初期の方など、外見から分からなくても援助や配慮を必要としている方々が、周囲の方に配慮を必要としていることを知らせることで、援助を得やすくなるよう、作成したマークです」という説明が載っていました。確かに、困っている人がいたら手を貸したい、席を譲りたい、と思っている人は多いはず。でも、外見からそれと分からない人には、手を差しのべたくても、差しのべようがありません。そのために「ヘルプマーク」が生まれたのです。
東京都によれば、「ヘルプマーク」誕生のきっかけを作ったのは、東京都議会の山加朱美議員。山加さんご自身が人工関節を使っていて、「助けが必要でも外見がわかりづらい人が優先席に座っていると、辛い目にあうことが多い」という実体験から、2011年に提案されたそうです。これを受けて東京都では2012年に「ヘルプマーク」を作成し、配布と普及に取り組み始めました。

どこでマークはもらえるの?

「ヘルプマーク」の対象者は、義足や人工関節を使用している方、内部障害や難病の方、妊娠初期の方など、援助や配慮を必要としている方です。「必要とされる人で希望を申し出た方」に配布することになっています。では、どこでこのマークはもらえるのでしょう。普及を始めた東京都の場合は、都民向けに「都営地下鉄」各駅の駅務室(一部除く)や都営バスの営業所をはじめ、東京都心身障害者福祉センター(多摩支所を含む)、都立病院、公益財団法人東京都保健医療公社の病院などで配布しています。また、「ヘルプマーク」は東京都の呼びかけによって全国に広がりをみせ、現時点で34の都道府県で配布されています(平成30年11月末現在)。配布場所については、各自治体ホームページ等にてご確認ください。

ヘルプマークを見かけたら?

ところで、電車やバスの車内、街中などで「ヘルプマーク」を身に付けた人を見かけたら、私たちはどうすればいいのでしょうか。東京都福祉保健局のホームページでは、大きく3つの対応をお願いしています。ひとつは、「電車やバスなどの交通機関で席を譲ること」。見かけは健康そうに見えても疲れやすかったり、立っていることが苦痛だったりする人がいます。優先席はもちろん、一般の席でも席を譲るように心がけたいものです。
ふたつめは、「困っているような人がいたら声をかけてみる」。ヘルプマークを付けた人の中には、突発的な出来事に対応するのが苦手な人がいます。人混みでこのマークを付けた人が困っているのを見かけたら、「何かお手伝いできることはありませんか」と、ひとこと声をかけてみてください。
そして、もうひとつは、「災害時の支援」です。地震や火災などで避難が必要な場合、さまざまな障害をお持ちの方は状況の把握が難しく、逃げ遅れてしまう可能性があります。災害時には我が身を守るとともに、ヘルプマークを付けた人に支援の手を差しのべてください。

課題は認知度を上げること

全国に普及しつつある「ヘルプマーク」ですが、いま課題となっているのは認知度の低さだといわれています。東京都をはじめ、各自治体でポスターやPR動画などを使って啓発に努めていますが、まだまだ「ヘルプマーク」の意味を知っている人は少ないようです。しかし、このマークを提唱した山加さんのように、世の中には、見た目は健康そうでも立っているのが辛い人や、人混みで混乱してしまう人がいることは確かです。そういう人は、ぜひ遠慮せずに「ヘルプマーク」を受け取って、身につけてみてはいかがでしょうか。一人でも多くの人がこのマークを使うことで、認知度も高まっていくのかもしれません。

「助けがほしい」と「助けたい」、ふたつの想いをつなぐ「ヘルプマーク」。入手方法や配布場所についての詳細は、下記「東京都福祉保健局」のホームページをご覧ください。

参考サイト:ヘルプマーク 東京都福祉保健局

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