研究テーマ

ほんの気持ち、プチギフト

クリスマス、お歳暮と、贈りものが行き交う季節。儀礼的な意味合いの残るお歳暮はともかく、クリスマスプレゼントの方は、贈られる人だけでなく、贈る人にも喜びをもたらしてくれるものですね。相手が喜ぶ顔を見れば、素直にうれしい。そんな贈りもの本来の楽しさは、クリスマスのような行事や記念日以外にも、たくさんありそうです。今回は、ふだんの暮らしのなかにある小さな贈りもの、プチギフトについて考えてみましょう。

ふだんの小さな、贈りもの

お歳暮、お中元といった儀礼的な贈答習慣が減りつつある一方で、日常の何気ない場面で友人や知り合いにちょっとした贈り物をする「プチギフト」の人気が高まっているといいます。
学生の間ではちょっとノートを借りたから、社会人なら忙しいときに仕事の手助けをしてもらったから、あるいは留守中お隣さんに子どものことを気にかけてもらったから、などなど。改まって菓子折りを持って行くほどではないけれど、感謝の気持ちは伝えたい。そんなとき、肩ひじ張らずにやりとりするのがプチギフトなのでしょう。

気軽に、やりとり

プチギフトに使われるのは、贈る側も贈られる側も負担を感じなくてすむもの。お菓子、ハンドタオル、ハンカチ、石鹸、入浴剤など、手ごろな値段でかさばらないものが多いようです。なかでも一番人気は、お菓子。コンビニや駅なかのショップなどで手ごろな価格の小分けのお菓子が増えているのも、そうしたニーズに応えているのでしょう。
ある広告代理店の調査では、20代までの若者の半数以上が、こうしたお菓子を「ありがとう」という気持ちとともに贈ったことがあるとか。若者らしい背伸びしない感謝の形は、贈りものの新しい習慣として定着していくのかもしれませんね。

コミュニケーションツールとして

会社勤めをしているある女性は、デスクの引き出しに、小袋入りのお菓子をストックしているといいます。仕事で手を貸してもらった人に「助かりました」という言葉を添えて手渡したり、残業で疲れたときに周囲の仕事仲間に差し出したりと、使い方はさまざま。年齢もバックグラウンドも異なる社内の人とコミュニケーションするとき、小さなお菓子が会話のきっかけになることもあり、「コミュニケーションを円滑にするためにも欠かせないアイテム」なのだとか。個包装の袋にメッセージ欄のついたチョコレートが人気を博しているのも、同じような理由からなのでしょう。

アメちゃん、あげる

大阪のおばちゃんのバッグには必ず飴玉が入っているといわれます。飴玉は「アメちゃん」と呼ばれ、「お豆さん、おかい(お粥)さん」など食べ物を擬人化して呼ぶことの多い大阪人の間でも「ちゃん」づけで呼ばれるのは飴だけ。このアメちゃんは、折に触れて周囲の人に差し出されることでも有名です。ある人は、観劇中に咳をしたら隣と後の席の見知らぬ人から黙ってアメちゃんが差し出されたとか。他にも、大阪のタクシーに乗ると飴玉をもらうことが多いとか、大阪の飲食店や美容室のレジ脇にはよく飴玉が置いてあるとか、この手の話題にはこと欠きません。相手を喜ばせたいという大阪人の旺盛なサービス精神のあらわれであり、小さな飴玉が日常のひとコマひとコマで人と人をつなぐプチギフトの役割をしていることがわかります。

おすそ分けもプチギフト

「プチギフト」と言うと、なんだか新しいもののように聞こえますが、日本人は古くから小さな「贈り・贈られ」を繰り返してきました。その代表的な例が、「おすそ分け」。珍しいものが届いたから、夕食のおかずを作り過ぎたから、きょうは子どもの誕生日だからなどなど、さまざまな理由をつけて隣近所でモノが行き交うのは日常的な光景でした。それも、「あげる」という発想ではなく、「作り過ぎてしまったから」と、あくまでも相手の負担にならない言葉を添えて。こうした習慣がいまだに残っているのは、やはり地方でしょう。東京から地方に移住した人が驚くのは、おすそ分けが多いということ。畑の野菜が育ったから、漬物を作ったからと、いただきものはしょっちゅうで、そのお礼に何かを手渡すと、また返ってくる。小さなものを贈り贈られるなかで、なんだか幸せがループしているみたいですね。

自分に、ありがとう

「自分で自分を褒めてあげたい」─アトランタオリンピックの女子マラソンで、ゴール直後のインタビューに答えた有森裕子さんの言葉です。このときの有森さんのご褒美は銅メダルでしたが、自分で自分にあげるご褒美としてギフトを買う人も増えているとか。ふだんはガマンしているような高額のモノを買うギフトもあるでしょうが、「お疲れさま」と自分に声をかけながら一片のケーキや一輪の花を買うプチギフトは、日々の暮らしに彩を添えてくれそう。自分自身への「ありがとう」は、自分をもっとも大切な人として認めることにもつながる気がします。

プチギフトは、それ自体が目的というのではなく、「贈り・贈られる」ことでお互いの気持ちを確認し合うものなのかもしれません。だからそれは、モノでなくてもいい。明るい言葉をかけたり、笑顔を向けたりするのも、きっとプチギフト。いえ、もしかしたら、こちらは時と場合によっては、大きなギフトになるかもしれません。
みなさんは、どんなモノやコトをプチギフトにしていらっしゃいますか?

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生活雑貨

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