研究テーマ

里親の日

世の中には、さまざまな事情により家族と一緒に暮らせなくなった子どもたちがいます。このような子ども(0歳~18歳まで)を一定期間迎え入れ、養育する家庭のことを「養育里親※」と呼びます。1948年(昭和23年)に始まった制度ですが、国が推進しているにも関わらず、なかなか広がりをみせていません。今回は10月4日の「里親の日」にちなみ「里親制度」について考えてみました。

養育里親とは

「里親」といってもいろいろな形があるようで、まずは仕組みを知るために、東京都新宿区にある社会福祉法人「二葉乳児院」をお訪ねしました。説明してくださったのは、里親開拓コーディネーターの肩書きを持つ吉川公一さんです。
「さまざまな事情で、家庭で育つことができない子どもを、家庭に代わって公的に育てる仕組みを『社会的養護』といいます。社会的養護には大きく2つあって、より家庭に近い環境で育てる『家庭的養護』と、乳児院や児童養護施設で育てる『施設養護』です。そして、家庭的養護の代表となるのが『養育里親』の制度ですね。私どもとしては、できるだけ家庭で愛着関係を築いて育つことが望ましいとの思いから、『養育里親』になっていただける方を探しています」

里親と養子縁組の違い

里親開拓コーディネーターの役割は、里親制度を一般の人に広めていくこと。しかし、周知の取り組みにもかかわらず、まだまだ知られていないことが多いようです。たとえば、「養育里親」と「養子縁組里親」の違いもその一つです。
「里親になるというと、即、実の親子関係を結ぶことになると思う人が多いのですが、これは誤解です」と吉川さん。「養育里親」は自治体から委託されて一定期間お子さんを家庭で預かる制度なので、戸籍上の親子関係は結ばないそうです。ですから、子どもの戸籍上の苗字はそのまま。また、委託されて子育てをするので、養育に必要な手当や生活費が自治体から支給されます。実親の戸籍から離れ、戸籍上の親子関係を結ぶ特別養子縁組を目的とした「養子縁組里親」とは異なる制度なのです。
では、実際にどのような人が里親になることを希望するのでしょう。里親委託等推進員の鷲尾彩織さんの話によると、「養子縁組里親」の場合は実のお子さんがおらず、不妊治療を経験した方も多いとか。一方、「養育里親」の場合は、実の子を育てながら社会的貢献のために里親になる方もいらっしゃるそうで、中には子育てが一段落した頃に、「ふたたび子育ての喜びを味わいたい」と言って里親になられる方もいらっしゃるようです。

里親が増えない理由

さて、実際に社会的養護の子どものうち、どれくらいの割合が「養育里親」の元で暮らしていることになるのでしょうか。鷲尾さんの話によると、その割合は全国平均で2割にも満たないとのこと。大半の子どもは里親家庭ではなく、乳児院や児童養護施設といった施設で暮らしています。国としては「養育里親を増やしたい」「家庭で育つ子を増やしたい」という目標を掲げていますが、なかなか思うようにいきません。その理由のひとつとして考えられるのが、「実親の承諾」が得にくいことです。いざ、子を里親に預ける段になると、子どもを里親にとられるような気がしたり、施設にいるほうが面会しやすいと考えたりして、難色を示す親御さんが多いのです。「自分では育てられない。でも、子どもを手放すのはイヤ」。実親と子どもの気持ちを汲み取りながら里親委託の話を進めていく、ここに里親の推進に携わる人たちの苦労があるようです。

里親の体験談

日本で里親の制度が始まったのは、1948年(昭和23年)10月4日のこと。それを記念してこの日を「里親の日」とし、10月、11月を「里親月間」と定めて、さまざまなイベントが開かれるようになりました。その中で注目したいのが、各自治体が開いている養育里親の「体験発表会」です。この発表会では、実際に里親を経験された方のリアルな話を聞くことができます。どのような思いで里親になったのか、初めて里子と会ったときの気持ち、家庭に入ってきてからの子どもの成長、感謝されたときの喜びなど。辛いこと、苦しいこと、それに勝る楽しいこと、嬉しいことなど、里親としての悲喜こもごもを実体験にもとづいて語ってくださいます。
日本で里親の制度が広まりにくいのは「血縁を重視する文化があるから」という人がいます。でも、「生みの親より育ての親」という言葉があるように、里子たちはいつの日か、一所懸命育ててくれた里親の想いを知り、その深い愛情に応えてくれます。決して平坦な道のりではないかもしれませんが、児童相談所をはじめ、さまざまな人びとのサポートを受けて、里親は子どもと一緒に育っていきます。
これから始まる「里親月間」、あなたも里親の体験イベントに参加してみませんか。体験会で語られる話の数々は、里親希望の方はもとより、子育てをしている一般の親御さんにとっても役立つものになるかもしれません。

※「養育里親」の呼び方は自治体によって異なります。東京都では「養育家庭」と呼ぶそうです。

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