研究テーマ

汗の季節

ある調査で、「女性同僚が脇汗をかいていたらどう思うか」という質問を男性にしたところ、「清潔感がない」「信用できない」といった否定的な回答が上位を占めたとか。このことはテレビ番組でも紹介され、物議をかもしたので、ご記憶の方もあるでしょう。「頑張っているなと思う」という好意的な回答は、5位でやっと登場。こうした「世間の目」もあってか、汗ジミやニオイに悩む人も少なくないといいます。夏本番の今回は、気になる汗やそのニオイについて考えてみましょう。

汗をかくのは自然なこと

そもそも、汗は体温調節をするための重要な役割を担っています。暑い夏は外気温に合わせて体温が上昇しては困るので、汗をかくことで身体を冷やし、体温を一定にキープする。そのために、私たちの身体には無数の汗腺が用意されています。一方、犬が暑いときに舌を出してハアハアと呼吸するのは、足裏の肉球にしか汗腺がないから。口を大きく開けて唾液をたくさん出すことで、熱を体から発散させようとしているのです。汗腺を持つ人間が汗をかくのは、ごくあたりまえのことなんですね。

汗とニオイ

汗腺には「エクリン腺」と「アポクリン腺」の2種類があり、体温調節のための汗はエクリン腺から出るものです。この汗の成分は、99%以上が水分で残りがわずかな塩分。サラサラしていて、臭いもほとんどないといいます。それなのに、どうして「汗くさい」ことになるのかというと、汗腺から出る汗と皮脂腺から出る脂肪酸が混じり合い、皮膚に住む常在菌がこれらを分解することによってニオイが発生するから。つまり、「細菌が繁殖・分解してニオイを発する前(約1時間以内)に汗を拭きとれば、ニオイを抑えることができる」のだそうです。なぁんだ、そんな簡単なことだったのか──目からウロコが落ちる気がしませんか?

汗対策グッズ

とはいえ、スメルハラスメントという言葉が生まれるほど、ニオイに敏感な時代。汗対策を謳ったグッズはどんどん進化していて、愛用している方も多いことでしょう。
それだけに気をつけたいこともあって、特に注意したいのが「制汗成分」が入っているかどうか。細菌の増殖・繁殖を抑えてニオイを消すデオドラント剤と異なり、制汗剤は汗腺に働きかけて発汗そのものを抑えようとするもの。そもそも体温調節するために汗腺があることを考えれば、発汗を止めようとするのはあまり自然なこととは思えません。「制汗成分入りのものを使っていいのは、脇と足の裏だけ。身体全体にかけるのは危険」という専門家のアドバイスは、そういう理由からなのでしょう。

いい汗、悪い汗

「昔と比べて"汗の質"が変わってきている」と指摘する専門家もいます。「運動不足がエクリン腺の汗くささを強くすることがある」のだとか。
日ごろから有酸素運動をしている人の汗は、成分が水に近くサラサラしていてニオイも少ないのだそうですが、運動不足で空調のきいた部屋ばかりにいる人は「汗くささ」が強まるといいます。それは、皮膚抹消血管の血行が悪くなり、汗腺への酸素供給がうまくいかず、疲労物質の乳酸が大量に生産されて汗腺のなかでアンモニアの分泌を増加させるため。そして、運動不足になるとちょっと動いただけでも汗をかきやすく、そんなときの汗もアルカリ性が強く雑菌が繁殖しやすい悪い汗になるのだそうです。
いい汗をかかないで悪い汗のニオイを気にするのは、美食を続けながら痩せたいと望むようなものなのかもしれません。

ニオイはキタナイ?

もともと海外の人に比べて体臭は少ないといわれる日本人。毎日入浴する習慣もあり、「病気が潜んでいる場合は別にして、そんなにニオイを気にする必要はない」と専門家は言います。
たとえば加齢臭。その原因とされる物質、ノネナールは、一般的にはロウソクや古本、青臭いチーズなどのようなニオイと言われ、こうしたニオイを「大嫌い」と思う人はそんなにいないそうです。それなのに加齢臭をオヤジ臭などと言って嫌うのは、「若い世代の嗅覚にも問題がある」という人も。嗅覚は3~4歳頃までにほぼ完成されますが、この時期に祖父母と過ごした人などは成人しても加齢臭を嫌がらないのだとか。ニオイに対する好悪の反応には、さまざまな要素が絡んでいそうですね。

「額に汗して」働くことが美徳とされてきた日本では、かつて、汗をかくことは「一所懸命」と同じ意味でした。スポーツマンの汗を美しいと感じるのも、きっと同じ理由から。それなのに、働く場での汗がマイナスイメージでとらえられる背景には、社会全体に広がっている過剰な衛生観念もあるでしょう。また、「まじめ」や「一所懸命」を茶化す社会の風潮とも、どこかでつながっている気もします。
周囲への気遣いはたしかに大切ですが、周りの目を気にし過ぎる社会はどこか窮屈。そしてそれは、いま話題の「忖度(そんたく)する」社会の空気にも通じるような気がしないでもありません。
みなさんは、汗や汗のニオイについて、どう思われますか?

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