研究テーマ

瞑想してみよう

「瞑想」や「座禅」には心を鎮める働きがあるといわれています。でも、最近の研究では、心だけではなく体にもいい影響を及ぼすことがわかってきました。「ファイナンシャル・タイムズ・マガジン」の記事によると、アメリカでは「マインドフルネス」という瞑想法を導入する企業が増えているとか。ストレスに負けない元気な体を保つヒントとして、今回は「瞑想」に着目してみました。

ストレスの恐ろしさ

仕事や家事、学業などで忙しい現代人は、老若男女を問わず、何らかのストレスを抱えて生きています。仕事の締め切りや販売目標の達成にプレッシャーを覚える人。育児や保護者同士の関係に悩む人。また、友だちからのいじめに傷ついている子どももいます。こうしたストレスはこれまで「心の問題」として片づけられ、軽く見られる傾向にありました。ところが近年、過度のストレスが心だけではなく、体をもむしばみ、最悪の場合は死に至るケースもあることがわかってきました。今年6月18日・19日の両日にわたって放送された「NHKスペシャル」のタイトルは「キラーストレス」。番組では、失業や過労、家族の死など、過度なストレスが、脳梗塞や心筋梗塞、癌などの重い病気を引き起こすメカニズムを明らかにしました。

キラーストレス

人が強いストレスを受けると、脳の「扁桃体」という部位が反応し、「副腎」という器官に司令を送ります。副腎からは「ストレスホルモン」が分泌され、心拍数や血圧を高めたり、血液を固まりやすくしたりします。プレッシャーを受けると心臓がドキドキするのはこのためですね。
なぜこのような反応が起きるかというと、原因は数万年前の人類にまでさかのぼるとか。狩猟をしていた私たちの祖先は、猛獣などに出くわすと、瞬時に心拍数を高め、機敏に反応できるようになっていました。怪我を負ったときも出血を食い止めるために、血液が固まりやすくなっていたのです。その原始の時代の記憶が残っていて、今でもストレスを感じると体が瞬時に反応し、心拍数や血圧が上がり、血栓ができやすくなるのだとか。これが脳梗塞や心筋梗塞といった重篤な病気につながるのです。また、ストレスを浴びると免疫細胞の中にある遺伝子のスイッチが「ON」になり、癌細胞を攻撃しなくなることもわかってきました。過度の疲労や家族の死などで長期間のストレスを感じると、癌になる確率も高まるわけです。まさに「キラーストレス」。単なる「心の問題」といって片づけるわけにはいきません。

マインドフルネス

こうしたストレスへの対処法として番組が紹介したのが、「マインドフルネス」という瞑想法でした。「マインドフルネス」は、マサチューセッツ大学医学部で誕生した心理療法。「瞑想」から宗教的な要素を取り除いたもので、宗教に抵抗のある人でも気軽に取り組めます。
「マインドフルネス」のやり方は簡単。体の力を抜き、背筋をのばして椅子に座ります。次に、体と呼吸に意識を向け、その様子を感じます。浮かんできた雑念は考えず、今の瞬間の体の動きだけを感じます。これを毎日10分程度から始めるのです。
「マインドフルネス」の効果は、「今」に意識を集めることで生まれるとのこと。ストレスは過去や未来を想像することで再生産されるらしく、余計なことを考えず、「今」だけに意識を集中することで、ストレスの増幅が防げるのです。マサチューセッツ大学は実験を行い、8週間の「マインドフルネス」のプログラムを実施しました。その結果、1日10分ほどの瞑想で、ストレスへの過敏反応を抑えられることが確認できたそうです。

瞑想とセロトニン神経

脳科学の分野でも瞑想の効果は解明されつつあります。「セロトニン研究」の第一人者である東邦大学名誉教授の有田秀穂博士は、座禅の呼吸法が脳内のセロトニン神経を活性化させるという「座禅のセロトニン仮説」を提唱し、サイエンスの面から実証を試みています。「セロトニン」は、ドーパミンやノルアドレナリンと並んで心に影響を与える神経系のひとつ。精神の安定や睡眠の質に深く関わっていて、セロトニンが足りない人は、うつ病や不眠症になりやすいそうです。有田博士の研究によると、「座禅の呼吸法・読経・声明・ヨガ・太極拳などの呼吸リズム運動」などによってセロトニン神経は活性化できるとか。また、「自転車こぎ・スクワット・階段昇降などの歩行リズム運動、ガム噛みの咀嚼のリズム運動」などを行っても、セロトニン神経は活性化できるそうです。

さまざまなストレスと戦いながら生きている毎日、自分でも知らないうちに、大きな負荷が心と体にかかっています。本格的な「瞑想」や「座禅」となるとちょっと敷居が高そうですが、「マインドフルネス」や「リズム運動」などであれば気軽に始められるかもしれません。今年の9月28日に放送されたNHKの「ガッテン」という番組では、「3分間でできるマインドフルネス」が紹介されていました。イキイキとした毎日を過ごし、末永く健康でいるためにも、毎日の暮らしに簡単な「瞑想」を取り入れてみてはいかがでしょうか。

参考資料:
NHKスペシャル「シリーズ キラーストレス」
「ガッテン ボケない!脳が若返る『めい想パワー』SP」

参考図書:「仏教と脳科学/有田秀穂 スマナサーラ」(サンガ新書)

研究テーマ
生活雑貨

このテーマのコラム