研究テーマ

もったいない発電

家に帰ってスイッチを入れると、当たり前のように電気がつきます。エアコン、冷蔵庫、洗濯機、テレビ、電子レンジなど、ありとあらゆるものが電気で動き、便利で快適な生活を支えています。その元となる電気はどこから来るのか。日本の電気は足りているのか。小水力発電など、クリーンエネルギーが注目されるなか、あらためて電気のことに目を向けてみました。

125歳の水力発電所

(上)蹴上発電所水圧鉄管
(下)蹴上第2発電所

京都府東山区、南禅寺のほど近くに、日本初の事業用発電所があります。「琵琶湖疎水」の豊富な水で発電する「蹴上(けあげ)発電所」です。完成は1891年(明治24年)。ここでつくられた電力によって、京都市内の工場や鉄道などを動かし、明治の産業振興に大きく貢献しました。「蹴上発電所」のすごいところは、今なお現役で発電を続けているということ。古い部品を交換し、壊れたところは修復し、新技術を導入し、125年もの長きにわたって京都の暮らしを支えてきたのです。「水力発電所のいいとろは、メインテナンスさえしっかりやれば半永久的に使えること」と教えてくれたのは、長年水力発電所の開発に携わってきた伴至(ばんいたる)さん。技術革新のめまぐるしい火力発電所などは、30年から40年 もすると技術そのものが陳腐化し、効率が悪くなるので、一度壊して建て替えることもあるとか。それに比べて水力発電所は、落ちてくる水でタービンを回すというシンプルな構造なので、だいじに使えばいつまでも長持ちするそうです。

水力から火力へ

かつて日本のエネルギーは「水主火従」といわれていました。「水力発電」が主で「火力発電」が従という意味です。一般的に発展途上国の場合、経済成長率と電気の消費量は正比例するのだとか。日本も急速に経済成長した国なので、昭和の時代には著しく電気の消費量が伸びました。日本が「水主火従」から「火主水従」へと転換したのは昭和37年度のこと(※1)。工業の発展や新幹線の開通に向けて、産業用電力の需要が高まり、さらなる電力が必要となってきたのです。水力発電所をつくる場合は、まずダムの建設が必要になります。ダムをつくるのは大変で、計画から完成するまで10年近くかかります。急速に増大する電気需要に応えるには、短期間で完成できる火力発電所の方がだんぜん有利。それでますます火力の割合が高まっていったのです。

水力発電を見直す動き

小水力発電

これまで日本の電力供給を支えてきたのは、火力、水力、原子力の3つ。ところが、東日本大震災をきっかけに、原子力の割合が大きく落ち込みました。資源エネルギー庁の調べによると、日本の総発電量に占める原子力の比率は、震災前の2010年12月に32%だったのが、2012年12月には2%にまで減少。その分を石炭、石油、LNGを使う火力発電で補っています。しかし、火力発電はCO2発生という問題があります。そこで注目されてきたのが、環境にやさしい水力や風力、太陽光などのクリーンエネルギーです。
なかでも優等生と目されているのが、水力発電。未来永劫燃料を必要とせず、天候に左右されにくく、また、昔から日本にあるので技術的に成熟しているというメリットがあります。耐久性にもすぐれ、だいじに使えば京都の「蹴上発電所」のように100年以上長持ちします。このようなことから、最近は農業用水路や砂防ダムなどを利用した「小水力発電」にも注目が集まっています。ひと昔前に水車があったような場所は、水力発電にうってつけの場所。地元のお年寄りの記憶を頼りに、発電に適した箇所を探すなど、地域の魅力再発見にも小水力発電はつながっています。

もったいない発電

しかし、もっとクリーンで素敵なエネルギーが日本にはあります。それは「節電」です。節電というと「不便」「めんどう」と思う方もいらっしゃるでしょうが、ちょっと待って。誰でも簡単にできる節電があるのです。それは電力会社との契約を見直すという方法。前述の伴さんが教えてくださいました。
電力会社から来る「電気ご使用量のお知らせ」に「ご契約」という欄があり、そこに「30A」とか「40A」という数字が入っています。Aはアンペアの略。このアンペア数の契約を見直すのです(※2)。40Aを30Aに落とすと、一度に使える電気量が少なくなります。たとえば、エアコンや電子レンジなど、電気を食うものを一度に動かすとブレーカーが落ちることも。でも、それは最初のうちだけで、慣れてくれば、どれだけの家電を同時に動かすとブレーカーが落ちるかが分かってきます。電子レンジを使うときは、エアコンを止める。ドライヤーを使うときはテレビを消す。契約を見直せば電気の基本料も下がるので、家計にもやさしくなります。

40Aの契約を30Aにすれば、10A分節電できます。ワット数でいえば1000ワット。つまり1キロワットの発電所を家庭内に持つことになります。ちなみに「くらしの良品研究所」に「いいね」をされている100万人が、すべてのご家庭で契約を10A分見直せば、生まれる電力の余力は100万キロワット。なんと原子力発電所1基分の発電出力量に相当します。
電気の契約を見直すだけでできる「もったいない発電」、あなたも始めてみませんか。

※1 出典:電気事業便覧 平成27年版 電気事業連合会 統計委員会編P272
※2 関西電力、中国電力、四国電力、沖縄電力の4つの電力会社はアンペア制が導入されていないため、契約アンペア数の見直しはできません。

※参考資料:電力比較サイト「エネチェンジ」

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