研究テーマ

「エシカル」な風

4月の熊本地震以降、スーパーや八百屋さんで熊本産の野菜や果物を「選んで」買う人が増えています。東日本大震災以降活発になった「応援消費」と呼ばれるもので、被災地の産物を買うことで少しでも役に立ちたいという気持ちのあらわれ。いま世界的に広がりつつある「エシカル消費」も、同じような思いから発したムーブメントです。今回は、「消費することによって社会を変えていこう」とする新しい動きについてご紹介しましょう。

エシカル消費とは

エシカルとは、倫理的、道徳的という意味の英語ethicalを、そのまま片仮名に置き換えた言葉です。「エシカル消費」を直訳すれば「倫理的に正しい消費」。つまり、「自分にとってどれだけ得か」といった基準ではなく、より広い視野で、人や社会、地球環境などに配慮して作られたモノを購入する消費行動やライフスタイルを指しています。安くて良いものをたくさん欲しいという従来型の消費ではなく、人権問題や環境、気候変動問題などのグローバルな課題にも視線を向けていることから、「良心的な選択」と説明する人もあります。

消費することで応援する

日本でエシカル消費が定着したのは、東日本大震災がきっかけでした。東日本大震災から1ヵ月後の4月。自粛ムードで消費が停滞する中、YouTubeで「被災地岩手から"お花見"のお願い"」という動画が配信されたのをご記憶の方もあるでしょう。岩手の日本酒の蔵元さんが「自粛をしてもらうよりも、お花見をしてお酒を消費してもらうほうがありがたい」と呼びかけたもの。それをきっかけに、「東北のお酒を飲んで応援しよう」という動きが生まれました。
また、福島をはじめ東北や北関東で、風評被害に苦しむ生産者の様子を見た消費者が、各地で開催されている物産展に足を運んだり、ネットを通して農家に直接発注したりするケースも。自分の買い物が被災地の人々の役に立つことをイメージして自然発生したこのエシカルな行為は、「応援消費」と呼ばれ、今回の熊本地震への対応にも引き継がれています。

思いやりとは、思いを馳せること。

モノに囲まれ、それを消費して暮らしている私たちですが、それらのものが、どこで、誰の手によって作っているかについては、あまり知らないかもしれません。
例えば、多くのコットン畑では農薬と化学肥料に頼った栽培がおこなわれ、そこで散布される大量の農薬を浴びて、深刻な健康被害が出ていること。それは河川や土壌の汚染につながり、生態系を狂わせて砂漠化の原因にもなっていること。モノの背景にあるそうしたストーリーを知ると、それらが貧困や人権、気候変動など、世界中で課題とされているさまざまな問題とつながっていることに気づかされます。
でも、農薬を使わずに栽培するオーガニックコットンを、買い手が適正で公正な値段で継続的に購入すれば、農家の生活改善や自立を支援することもできるのです。もちろんそれは、地球環境にもよい影響をもたらすでしょう。

エシカル商品

エシカルな商品として知られるものは、地球環境に配慮したエコカーや省エネ家電、省エネ住宅などですが、もっと身近なものもたくさんあります。
フェアトレードと呼ばれる公正な貿易によって適正価格で輸入されたバナナやコーヒー、チョコレート、紅茶。農薬を使わない土地で栽培した綿花で作るオーガニックコットンの衣服やファブリック、森林保全の過程で生まれる間伐材を使った家具や雑貨、長寿命でエネルギー効率のよいLED電球を使った家電製品などなど。強制労働や児童労働と無縁の鉱山で採掘した貴金属や貴石でつくったエシカルジュエリーといったものもあります。

消費者のチカラ

消費動向が経済指標の一つに挙げられるように、私たちは日々、何かを消費しながら生きています。日本のGDPのうち、個人消費が占める割合は約6割(『平成27年版消費者白書』消費者庁)。私たちが何を基準に何を選んで買うかによって、社会や経済に与える影響は大きいといえそうです。
「悪いモノを買わない」ことで社会を変えようとするボイコットという方法があるなら、「良いものを選んで買う」ことで何かを変えられる可能性もありそう。
そう考えると、私たちの毎日の消費行動は決して個人的な行為ではなく、「何かを買う瞬間、人や社会、環境、ひいては未来にまで影響を与えている(一般社団法人エシカル協会)」という主張にも、素直にうなずけます。
環境や社会への視点からモノやサービスを「選ぶ」エシカル消費は、社会を変えていく主導権を生活者の手に取り戻そうとする動きなのかもしれません。

貧困問題、人権問題、気候変動、環境破壊…日々のニュースからは、世界が抱えるさまざまな課題が伝えられてきます。そうした現実があることを知りながら、私たちは、それは企業や社会、政治が解決する問題として、目をそらしてきたような気がしないでもありません。
私たち一人ひとりの日々の消費が社会を変えるチカラになるとしたら…みなさんは、どんなモノを選ばれますか?

研究テーマ
生活雑貨