研究テーマ

地球温暖化がもたらすもの

ここのところ「日本の気候がなんとなくおかしい」と感じてらっしゃる方は多いのではないでしょうか。「猛暑日」「ゲリラ豪雨」「特別警報」など、これまでなかったような新たな気象用語も増えてきました。「地球温暖化」の影響がいよいよ本格的に現れてきたのでしょうか。

日常化する異常気象

最近、東京近郊では池の氷が張らなくなったという話をよく耳にします。富士五湖の山中湖や河口湖などでは、ひと昔前は冬になると厚い氷が張り、子どもたちのスケート場になっていました。しかし、近年はめっきり全面凍結することが少なくなり、ワカサギ釣りなども氷上ではなく船上で行うようになってきたそうです。
気象庁の発表によると、この冬(2015年~16年)の平均気温は、13の地点で観測史上の最高を記録したとのこと。また、2015年1年間の平均気温も、2010年までの30年間の基準値と比べて0.69℃、20世紀全体の平均値と比べて1.30℃も上まわりました。世界全体で見ても2015年は高温の年だったようで、2010年までの30年間の基準値を0.42℃上まわり、2年連続して統計開始以来の最高記録を更新したそうです。もはや地球の温暖化は仮説ではなく、厳然たる事実として私たちの目の前に現れてきているようです。

原因は人間の活動?

2015年1月25日付のロイターに、次のような記事がありました。米国の科学者などが参加する研究チームが、「2000年以降記録的な期間にわたって高温が続いている原因は、ほぼ確実に人間の活動による温暖化であり……自然の変動が原因である確率はほとんどない」との研究結果を発表したそうです。この研究リポートによると、2000年から2014年までの15年間のうち、13年が記録的高温だったそうで、そうなる確率は770分の1、人間による影響のない状態なら1万分の1と推定したそうです。つまり、ただの自然現象によって、15年のうち13年もこのような高温が現れる確率は極めて低いということです。国連気候変動に関する政府間パネル(ICPP)の第5次評価報告(2014)でも、1880年から2012年までの傾向で、世界の平均気温は0.85℃上昇しているとなっています。今後、温室効果ガスの濃度がさらに上昇し続けると世界の気温はさらに高くなり、最悪のシナリオでは2100年までに最大4.8℃の気温上昇が予測されているそうです。このように地球の気温が上昇すると、どのような不都合が暮らしに生じるのでしょうか。

気候の急変で、世界は大変に

地球温暖化によって懸念されるもののひとつは、気象現象の激しさです。以前のコラム「天気を読む(夏編)」などでもご紹介しましたが、平均気温が上昇すると空気中に含まれる水蒸気の量が増加して、激しい雨が降るようになります。また、全体のエネルギーも増えるので、台風などが強大化し、予想もつかない大災害をもたらす恐れがあります。河川や海の堤防をはじめとして、日本の国土はこれまでの気象を基準に最大の災害に耐えうるように設計されています。しかし、温暖化が進行すれば、想定以上のパワーを持つ自然災害が起こらないとも限らない。つまり、「想定外の災害」が起きる可能性が、想定されはじめたということです。
もうひとつは海の問題です。温暖化で海の水位が上がることは知られていますが、それ以上に心配なのが海流の変化。地球の海の底には北極と南極に端を発する「深層海流」というものが流れています。極地方では低温のために海の水が凍りますが、氷は塩分を含まないため、その海域の海水は逆に塩分濃度が高まります。この塩分を多く含む冷たい水は、比重が大きいためにゆっくりと沈み込み、深層を這うような海流となって世界の海を巡っています。この千年以上の時をかけて地球の海を巡る「深層海流」は、南北の温度差を解消し、穏やかな気候を保つのに役立っているといわれています。
ところが近年、北極の氷が減少しはじめました。夏場の北極海では、毎年北海道に匹敵する分の面積の氷が消えているとか。もし、北極海の氷が消えたら、世界を巡る「深層海流」に異変が起き、地球の気候に大きな変化が生じるかもしれません。それで最も恐いのは、農作物へのダメージです。「深層海流」の消滅で起きる気候変動は、エルニーニョのそれどころではありません。米や小麦の生産地の気候が急変すれば、地球規模の大飢饉が起き、世界は大変なことになるかもしれません。

一方で、「地球の温暖化は人間活動が出すCO2が原因ではない」と主張する学者もいます。地球の気温上昇は自然要因によるもので、むしろ気温が上昇することで海に溶けているCO2が放出され、増加しているのではないかというのです。しかし、万一そうであれ、人間のさまざまな活動が余計な人工物を大量に排出していることは疑いようのない事実。PM2.5のような大気汚染物質、マイクロプラスチックのような海洋汚染物質、自然界にはないレベルの放射性物質などが、地球を人や動物の住みにくい星に変えつつあります。

ネイティブインディアンの言葉に、こんなものがあるそうです。「人間が命の糸を編んでいるのではない。人間はその糸の一本にすぎない」と。
その一本の糸の狂いから、美しく見事に織りなされた地球の自然がほつれはじめているのかもしれません。
地球温暖化が顕著になってきた今、私たちはもう一度暮らしのあり方を見つめ、考え直す時期に来ているように思います。

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