研究テーマ

天気を読む(春編)

最近、「日本の天気はどこかおかしい」と、そう感じている方が増えているように思います。事実、毎年のように異常気象が起こり、いままでにない災害が多発するようになりました。防災に「自助」という言葉があります。万一のときには「自分の身は自分で守る、これが原則」という考え方。そこで当コラムでは気象予報士の力をお借りして、季節ごとの天気の特徴や、注意すべき点などを教えていただくことにしました。転ばぬ先の天気の読み方。まずは春編から。

春という季節

「春はあけぼの。やうやう白くなりゆく山際、少し明かりて、紫だちたる雲の細くたなびきたる」。清少納言が書いた枕草子の一節です。早朝の霞みのたなびく美しい山の端の情景が目に浮かぶようですね。空気のキリリと乾いた冬から、一転春になると、うっすら空に霞がかかるようになります。これは空気中に含まれる水分が増えてきた証拠。乾燥した冬の季節風が収まり、南から吹いてくる風が南洋の湿った空気を運んでくるのです。その南風を吹かせるのが「温帯低気圧」と呼ばれる低気圧。日本の四季が豊かな変化に富むのは、列島を周期的に横切っていく、この温帯低気圧のおかげなのです。

温帯低気圧

「温帯低気圧」は、基本的に南北の温度差によって生じます。今の時期、北の大陸には真冬なみの寒さが残り、空気が冷凍庫のように冷えています。対して日本には海があり、暖流が流れているため、水温は今の時期でも15度を超えています。この海に暖められた空気と、キンキンに冷えた大陸の空気がぶつかり合い、その温度差がエネルギーとなって、温帯低気圧が発達するのです。
温帯低気圧の周りでは、風が反時計回りに渦を巻いて吹いています。中心を軸にして低気圧を二つに分けると、東側では暖かい南風が吹き、西側では冷たい北風が吹いています。つまり、これから低気圧が近づいてくる地方では、南よりの風が吹いて温度が上がり、逆に低気圧が過ぎ去った地方では、北よりの風が吹き、気温がぐっと下がります。このように温帯低気圧が一つ通過するごとに、日本付近の空気が全体的にかき混ぜられ、南北の温度差が解消されていきます。こうして一雨降るごとに春が深まっていくのです。

注意すべき災害

春の温帯低気圧は、ときに悪さをすることがあります。その一つが「雪融け」です。急に発達した低気圧は強い南風を吹かせ、山岳地帯の気温を急上昇させます。これに雨が加わると、降り積もった雪が融け、雪崩や、ときには洪水を発生させることもあります。これから登山やスキーに出かける予定のある方は、低気圧の動きに十分に気を付けてください。雪崩の危険があるときは、必ず天気予報で注意の呼びかけがあるはずです。
また、低気圧が急速に発達する場合は、突風にも注意が必要です。毎年のように運動会のシーズンになると、校庭で発生するつむじ風によって怪我をされる方が出てきます。また、竜巻に近い「ガストネード」という巨大なつむじ風もあり、この場合は被害も大きくなります。強風の予報が出ている場合は、イベント会場のテントなどはしっかり固定するように。また、海上ではさらに風が強まるので、船で海に出る人も十分に注意が必要です。

季節はずれの雪

そして、春先の時期に意外に多いのが、雪による被害。関東などの太平洋岸では、真冬よりもむしろ冬型が緩む頃に、雪の降ることが多くなります。季節はずれの雪を降らせるのは、日本の南の海上を通っていく温帯低気圧(南岸低気圧)です。地上の気温が0℃近くまで冷えている場合、ちょうど八丈島あたりを低気圧が通過すると、関東は雪の公算が大きくなります。1965年からの50年間で調べてみると、東京に20cm以上の積雪があったのは7回。そのうち5回が2月4日の立春を過ぎてからの降雪です。関東地方の雪の予報は極めて難しく、空振りになることも多いのですが、「転ばぬ先の杖」と思い、車での外出を控えたり、滑りにくい靴を履いたり、天気予報を見ながら気をつけてください。

観天望気

「観天望気」とは、自然の現象を観察することで天気を予報すること。ベテランの漁師さんの予報などは、局地的には天気予報よりも当たると言われています。たとえば「夕焼けの翌日は晴れ」ということわざ。これは温帯低気圧が頻繁に発生する春と秋には、よく当たると言われています。夕焼けがきれいに見えるのは、西の空が晴れているから。天気は低気圧とともに西から東へ移っていくので、西の空が晴れている場合、翌日は晴れの公算が大きくなります。ただし、これが通用するのは主に春と秋の話。夏や冬の天気は温帯低気圧以外の要因に左右されることが多いので、このことわざ通りにはいきません。

春の天気は、一見穏やかそうで、その実激しい気性を持っています。春の嵐というように、突然天気が大荒れになり、台風なみの風が吹くことも。お出かけ前にはぜひ天気予報をチェックして、今日、どんなリスクがあるのかを確認したいものです。備えれば備えるほど、我が身にふりかかる危険は小さくなるのですから。

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