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ミドリムシは地球を救うか?

小学校5年生の理科の教科書に「水中の生き物」というページがあります。そこに「ミジンコ」や「アオミドロ」と一緒に紹介されているのが、今回の主役「ミドリムシ」。どこにでもいるプランクトンですが、今、地球が抱える諸問題を解決するのではないかということで注目を浴びています。一体ミドリムシのどこが凄いのか? なぜ地球を救えるのか? 今回は世界一小さな巨人「ミドリムシ」にスポットを当ててみました。

地球が抱える問題とは

今現在、地球には70億人を超える人間が住んでいます。1961年の人口が30億人ですから、半世紀あまりで2倍以上に膨れあがった計算です。このまま人口が増えれば、2050年には90億人、世紀末には100億人を突破すると言われています。まさに爆発的な人口増加です。地球上にこれだけ人が増えると、いろいろな不都合が生じてきます。まず、水が足りなくなる。食料も足りなくなる。そして困ったことに、食料を確保しようと農地を増やせば、今度は森林が減少し、温暖化の問題が生じます。あちらを立てればこちらが立たずというわけです。また、エネルギー問題も深刻です。原子力の信頼が揺らぐ中、石油や石炭に変わる決定的な代替エネルギーはまだ登場していません。こういった問題のすべては、私たち人類が有限な地球の中で暮らさざるをえないことに起因しています。一言でいえば、「もはや地球が狭すぎる」のです。では、このような問題を、ミドリムシはどうやって解決してくれるのでしょう。

食料問題を解決する

理科で習ったことを思い出してください。ミドリムシは光合成をするのに、自らの力で動くことができます。つまり、植物と動物の両方の性質を持つ不思議な生き物。植物でもあり動物でもあることから、ミドリムシは豊富な栄養素を作り出せるようになりました。その数59種類。βカロチンやビタミンB、C、D、ナイアシン、パテント酸、葉酸、ミネラルも豊富でカルシウムやマグネシウム等を含みます。また、アルギニン、アスパラギン酸など栄養ドリンクに入っている成分も。そして驚くべきは、青魚が持っているDHAやEPAまで含んでいるのです。宇宙食としてNASAが興味を示すのもうなずける話。すでに健康食品や加工食品として商品化されているミドリムシですが、食糧自給率が低い日本にとって頼もしい存在であるとともに、世界の食糧問題を解決に導く可能性を秘めています。

燃料になり、CO2も吸収

ミドリムシのもう一つの奇跡は、石油に代わる燃料が作れるかもしれないということ。しかも、トウモロコシやサトウキビ由来のバイオ燃料より高効率のエネルギーが取り出せそうなのです。石油の代替燃料として、商社や石油会社、航空会社などが期待を寄せ、研究開発に参入しています。遠からずミドリムシから取れた燃料でジェット機が飛び、クルマの走る日が来るかもしれません。また、ミドリムシはプールで培養できるので、生産用の畑を作るために森林を破壊する必要がありません。それどころか砂漠化が進んでいる土地でも日照さえあれば、パイプラインで水を引き、簡単に増やすことができます。さらに、原始的な生命のミドリムシは、地上の高等植物に比べて圧倒的にCO2の処理能力が高いと言われています。それだけ地球温暖化の防止に貢献できるということ。まさに地球の救世主となるべく、さまざまな資質を備えた生き物なのです。

実は太古の昔から救世主だった

もっとも私たち人類が今日生きていられるのは、そもそもミドリムシのおかげなのかもしれません。というのも5億年前、太古の地球にはほとんど酸素がありませんでした。そこにミドリムシが現れて、強力な光合成で二酸化炭素を吸収し、大量の酸素を放出したのです。それで地球は多様な生物が生きられる生命の楽園になりました。ミドリムシは今でも海や湖沼、池や田んぼなど、地球のいたるところに生息しています。そのミドリムシを食べることで小魚が命をつなぎ、それを大型の魚や動物が補食して生命の連鎖が形成されています。アジやサバなどの青魚に含まれるDHAやEPAなども、もとはといえばミドリムシが作ったもの。微生物がくれる恩恵を地球のみんなで分かち合って生きているのです。

私たち人類はともすると生態系の頂点に君臨する優れた生き物のように思いがちですが、それは誤解であって、実は最も小さくて弱い生き物、ミドリムシのような微生物の力によって生かされているのです。酵母や菌をだいじにしてきた昔の日本人は、無意識にこの事実に気づいていたのかもしれません。
奇しくも世界中の研究者が挑んで果たせなかったミドリムシの大量培養に成功したのは、日本人の若者でした。ベンチャー企業を立ち上げた出雲充氏は著書の中で次のようなことを述べています。「僕の天命は『ミドリムシが地球を救う』ことを手助けすること。あくまでも『ミドリムシ』が救うのであり、僕がバイオテクノロジーを使って救うのではない。主人公はミドリムシだ。」
自然の前に謙虚であること。結局それが地球を救う唯一の手だてなのかもしれません。

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