研究テーマ

シェアハウスという住まい

「LT城西」設計:成瀬・猪熊建築設計事務所

家族の形態が変わってきて、単身で暮らす人が増えている昨今。独居老人の孤独死といった悲しいニュースもありますが、一方で、血縁関係のない人が集まって一つ屋根の下で暮らすシェアハウスも広がりつつあります。キッチンやバストイレなど家の中の一部を共用しながら、個室空間も確保された住まい。今回は、ゆるやかに人とつながりながら暮らすシェアハウスについて考えてみましょう。

コンパクトはシェアする

たとえば、面積の限られた敷地内に何人かの単身者が暮らすための建物を考えるとき、均等に分割して一人分ずつの面積を確保するのが、従来のやり方です。それぞれの専有スペース内にキッチンやバスルーム、トイレをつくってコンパクトにまとめようとすれば、当然、それ以外に使える面積は狭くなります。「そう広くもない敷地に建てる建物の中に、いくつもキッチンやバストイレがあるのは不合理」と語る建築家も。たしかに、共用できるものを共用すれば、コンパクトな中にもゆとりのある住空間が生まれるはず。それを実現したのが、シェアハウスです。

シェアがもたらすゆとり

「LT城西」設計:成瀬・猪熊建築設計事務所

シェアハウスというと、なんだか新しい暮らし方のように見えますが、日本には、その原形ともいえるものが古くからありました。井戸や厠(かわや:トイレ)を共用しながら、隣近所で助け合う長屋暮らしが、まさにそれ。時代劇などで見ると、寝起きするそれぞれの専有スペースは決して広くはありませんが、それでもあまり窮屈さを感じることなく暮らせたのは、井戸端のような開かれた共用スペースがあり、そこに井戸端会議ができるだけの空間的ゆとりがあったからかもしれません。「余白」のスペースがあれば、専用部分が多少狭くても、広がりを感じることができる。シェアハウスを手がける建築家たちが「共用部分」の設計に心をくだくのも、そんな理由からなのでしょう。

コミュニケーションを生む家

「LT城西」設計:成瀬・猪熊建築設計事務所

現代版長屋暮らしともいうべきシェアハウスが広がっているのは、人と人との絆を見直そうという時代の空気とも関係があるかもしれません。かつて、他人に気をつかわずにすむ「自分だけの空間」に重点を置いてつくられたのは、閉ざされた空間ともいえるワンルームマンションでした。一時はブームにまでなりましたが、しかし、それだけでは充たされないものがあることに多くの人が気づいた結果、シェアハウスの広まりになってきたのでしょう。「ちょっとそこにいる人に声をかける。そんなささやかな楽しみの豊かさが、たくさん生まれるのがシェアハウス」━━そう語るのは、シェアハウス専門の紹介サイト「ひつじ不動産」代表の北川大祐さん。シェアハウスは、人と人とのコミュニケーションを前提に成り立っているともいえそうです。

シェアハウスで暮らすには?

「SHAREyaraicho」設計:空間研究所+Astudio

空間と同時にシェアハウスでポイントになるのは、運営と管理です。共用スペースの掃除やゴミ出しをどうするか? 共用の消耗品の補充は?…日常生活を回していくには日々の雑事も大切ですし、入居者間でのルールづくりも必要になってくるでしょう。「血縁のない大家族のようなものだから、オーガナイズする人が必要」と語るのは、シェアハウスを設計し、自らも住人としてそこで暮らしている建築家の内村綾乃さん。プロの管理人を置いているところもあれば、みんなで話し合い雑事を分担しあっているところもあり、その運営形態はさまざまですが、核になる人が必要なことは間違いなさそうです。また、「部屋の汚れ具合いの許容値が同じレベルなら、暮らしやすい」といったシェアハウス体験者の実感も。場を共用するということは生活の一部を共有することでもありますから、そうした生理的な感覚が合うか合わないかということも、住み心地を決める大きなポイントになるのかもしれません。

シングルマザーのためのシェアハウスは、既にあるといいます。高齢者のためのシェアハウスはこれから増えていきそうですし、そのうち、結婚したカップルが普通にシェアハウスに住む時代もやってくるかもしれません。家族のかたちが大きく変わってきた時代、人と人がゆるやかにつながりながら住まうシェアハウスは、これからの暮らし方の大きなヒントになるような気がします。

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くらしの良品研究所発行の小冊子「くらし中心 no.13(7月28日発行)」では、シェアハウスの具体例をご紹介しています。全国の無印良品の店頭で無料配布すると同時に、「くらしの良品研究所」のサイト小冊子「くらし中心」からもダウンロードできますので、ぜひご覧ください。

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