研究テーマ

子どもの食器

何年も前の話ですが、「器も味のうち」という名コピーがありました。同じお料理でも、どんな器に盛りつけるかでおいしさが違うのは、多くの人が実感するところですね。ところが、いざ子どもの食器となると、「どうせ割ってしまうから」「子どもには、もったいないから」といった理由で、「いいもの」をわざわざ遠ざけていることはないでしょうか?

子どもだからこそ

子ども用食器の多くは、軽く割れにくいプラスチック系の素材でできています。小さな子どもは手の力が弱くて、食器をすぐに落としてしまうから、といった理由なのでしょう。それらは割れても惜しくない程度の値段で売られていて、それを実用的といえばその通りなのかもしれません。
しかし子どもだからといって、惜し気もなく使えることが、本当にいいことなのでしょうか? 惜し気もなく使えるという感覚の裏には、壊れてもいいという気持ちがどこかに潜んでいるような気もします。たしかに、高価な食器を与えられて「壊さないように」と注意されてばかりでは、食事の楽しさどころではないでしょう。だからといって、割れても惜しくないモノで育てられる子どもの立場になってみたら…ちょっとさびしい気がしないでもありません。

子どもに漆器

置いて使うお皿はともかく、手に持って使うご飯茶碗や汁椀は、子どもに扱いやすい軽さとサイズが求められます。その意味で、おススメの食器は、先のコラム(「日本の手仕事─漆器─」)でもご紹介した漆のお椀。漆椀はそもそも軽いものですが、子ども用につくられたそれは85gくらいの軽さに仕上げられていて、小さな手にも楽に持てそうです。そして、天然木に漆を薄く何回も塗り重ねることで生まれるやさしい手触りとなめらかな口当たりは、プラスチック製品と比べるまでもありません。また、木製のお椀は熱伝導率が低いので冷めにくく、最後まで温かいまま食べられるのも嬉しいところ。しかも、熱いスープなどを入れても、手にはやさしいぬくもりで接してくれます。
扱いがむずかしいから、高級品だから、「子どもにはもったいない」と敬遠されがちな漆器。でも、越前漆器の産地・鯖江市のすべての小学校の給食には漆のお椀が使われていて、それらは食器洗浄機にも対応できるよう工夫がなされているのだとか。「子どもたちにこそ、本当に良いものを使わせたい」という大人たちの想いが込められているようです。

家族で使う

磁器や陶器なら、「子ども用」と限定するのではなく、子どもの手にも持ちやすい小ぶりの器を家族で共用するという方法もあります。子どもに使いやすいものは、大人にも使いやすいもの。同じデザインで大中小と揃えておけば、大人も小鉢や小皿として普通に使え、離乳食からお酒の肴まで一生寄り添ってくれる器に。毎日繰り返し使うことで愛着がわき、長く大切に使い続けられるはずです。
同じデザイン・同じ大きさの器を、漆器・磁器・陶器といった異素材でつくる試みもあると聞きました。重さも手触りも異なり、産地ごとに特色の違う器を、デザインを共通にすることで、家族みんなで使うことができるようにしたもの。年齢や好み、お料理にあわせて家族で組み合わせて使えますし、子どもが小さいうちは軽い漆器を子ども用に回すのも良いでしょう。

食事は学びの時間

食事は身体を養うだけでなく、子どもの心を養う場でもあります。食べものの名前を覚えたり、新しい味に出会ったり…色や味、匂い、食感をひとつずつ感じながら、食べることの楽しさを知り、日本の食文化も自然に身につけていくのでしょう。毎日使う食器がそこで果たす役割は、きっと大きいはず。視覚・聴覚・嗅覚・味覚・触覚が育つ大切な時期だからこそ、触れて心地よい食器を使い、五感で食事を味わってほしいものです。
磁器も陶器もそして漆器も、乱暴に扱えば割れてしまうこともあります。けれども、割れてしまうから、危ないから、遠ざけるのではなく、良質な食器を普段から使うことで、モノの大切さを教えることもできるはず。自分が好きだと思って使っているモノが割れたとき、子どもは初めて、モノをていねいに扱わなければいけないと知るのではないでしょうか。

みなさんは、子どもの食器についてどう思われますか?
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