研究テーマ

エネルギーとコミュニティー

日本でもエネルギーの自由化が進みつつある今、小さな会社でもエネルギーを売り買いできるような時代が近づいています。そうなると、エネルギー消費に対する人々の考え方は、大きく変わってくるかもしれません。大きな電力会社に頼らず、自分たちの地域でつくられたエネルギーを使う、といった選択肢が生まれる可能性もあります。今回は、地域でエネルギーをつくることについて考えてみましょう。

ここ10年、「持続可能な社会を目指す」ということがよく言われるようになりました。そのキーワードは「自立」です。自立には、「食・エネルギー・経済」の3つのテーマがあります。大きな力に頼らないで、これらの3つを、緊急時にも自分たちの生活する地域内でコントロールできるのが理想とされます。
エネルギーに関していうと、二つのアプローチが必要です。ひとつはエネルギーを自分たちでつくること。そしてもうひとつは、エネルギー源を化石燃料などに頼らず、自然エネルギーでまかなうこと。後者は、風力・地熱・太陽光などで、これについてはよく議論されています。

では、前者の「自分たちでつくるエネルギー」とは、どういうものでしょう。生ゴミからつくるメタンガス、間伐材からつくる薪やペレット、工場から出る木材の破片でできるペレット、動物の糞尿からつくる燃料などが考えられます。これらをつくるために必要なことは、地域の人々が協力すること。地域内で循環させるためには、いらなくなったものを集めたり、資源として使えるように分別したりと、コミュニティー内でお互いに協力する必要があるのです。

循環型社会をめざして、地域内の生ゴミからエネルギーをつくっている企業があります。「京丹後循環資源製造所(京丹後市エコエネルギーセンター)」というプラントを運営する、アミタ株式会社がそれ。ここでは、バイオマスエネルギーの装置を使って「発酵」の力で、地域内の生ゴミをメタンガスに変えているのです。その仕組みは、酸素を使わないで発酵するメタン菌(土壌菌)を使って生ゴミを分解し(嫌気性発酵)、その時に発生するガスを集めて燃料にするというもの。京丹後にある大きなプラントでは、1日30トンの生ゴミを投入し、それを発酵させて約3000ノルマルm³、電気に換算すると400kwをつくり出せるといいます。生活のすべてをまかなえる量ではありませんが、エネルギーの課題を考えるよい機会になるでしょう。
ここではまた、住民2000人単位ぐらいのもっと小規模なプラントを、地域にひとつずつ持つことができないか、という提案と取り組みをしています。すでに南三陸では、より小さな80世帯程度のコミュニティーでの実験もおこなわれたとか。そのときになされたのは、80世帯程度のコミュニティーを3つの生ゴミステーションで管理するということでした。メタンガスの採取では、生ゴミに不純物が入らないように生ゴミの分別をすることが重要です。大きな単位ではどこか無責任になってしまうのが人間の習性ですが、お互いの顔や家族のことまでわかる関係なら、連帯感も強まります。この実験が成功のうちに終わったのも、そうした連帯感と無縁ではないでしょう。実際、毎日の生ゴミ収集の場では、ふだん話すことのなかった人たちの間にも会話が生まれ、実験が終わる時点では、会話の場がなくなるのを残念がる声も多かったといいます。

地域でエネルギーをつくるということは、単にエネルギーを確保するだけでなく、コミュニティーの連携を強くしていくことにもつながるのでしょう。コミュニティーといっても、ただ人が集まるだけでは、その絆は深まらないものです。何かを共同でおこない、そこに役割も発生することで、他人事ではなく自分のことにできるのかもしれません。
エネルギーをつくりながら、コミュニティーをつくる。こうした取り組みが、もっとおこなわれていけばと思います。

メタンガスは、メタン菌が生ゴミを分解する「嫌気性発酵」によって生成されます。メタン菌は、それぞれの土地にいる土壌菌のかたまりで、活動のために酸素を必要としない「嫌気性」の複合菌。土の中やヘドロの中を好み、高い温度で発酵がおこなわれ、強い分解力をもつことが特徴です。
1月24日に発行される「くらしの良品研究所」の小冊子「くらし中心 no.12 ─発酵のちから─」でも、くらしに生きる発酵の知恵という視点で、この取り組みを紹介しています。

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