研究テーマ

リフォームと型紙の時代

「もったいない」という日本語が環境を守るための世界共通語になっている一方で、持ち過ぎたモノを捨てようと「断捨離(だんしゃり)」が叫ばれる日本。矛盾しているようにも見えますが、根底にもったいないという思いがあるからこそ、溜め込み、収拾がつかなくなっているのでしょう。そろそろ、モノとの付き合い方を根本から考え直す時代に来ているのかもしれません。

リフォームの時代へ

日本の高度成長期は、大量生産と大量消費の時代でした。技術の革新と目まぐるしい流行の変化によって、新しいものが次々と現れ、消費の欲求を駆り立ててきました。すぐに古びてしまうそんなモノたちに囲まれて、住空間もどんどん狭くなっていきました。
しかし今、そうした大量生産、大量消費という価値観が変わろうとしているようにも思えます。高度成長の後にやってきた低成長あるいは衰退していく経済は、見方を変えると成熟の社会とも言えるものです。人々の価値観が安定し、美意識が高まると、使い捨ての時代は終わるでしょう。ピカピカの新しいものよりも、良いものを永く、修理しながらでも愛着をもって使う。そんな本物の時代がやってくるのです。そのことを、ここでは「リフォーム」と呼ぶことにしましょう。
住宅の分野では、新しい家を買うより、古い家を買って自分で改修するリノベーション(リフォーム)が注目されています。家具も、新しく買い替えるのではなく、古い家具の布地を張り替えたり、壊れた部分を付け替えたりして楽しむ人が増えています。それは、時を重ねたものが持つ深い味わいを、手触りや体で感じることかもしれません。

型紙の必要性

最近では資源の枯渇から、いらなくなった物を回収し原料として再生させていく方法も注目されています。しかし本当は、形を変えて再利用する前に、原形を生かしながらもう一度使っていく、またはもとの姿以上に価値あるものに変えていく「リフォーム」を見直すべきかもしれません。
あるものを使い続けるためには、「型紙」が必要になります。洋服の型紙はよく知られていますが、家具であれば木の型や布地の型紙、家であれば設計図にあたるものです。型紙があれば、使い手が自分で修理したり再生したりすることもできるでしょう。
今のように既製服が普及していなかった時代、多くの人は自分で着るものを自分の手でつくっていました。そこでは、「型紙」が頼りでした。服飾雑誌は誌上で掲載した洋服の型紙を付録にし、その型紙が目的で雑誌を買う人も多かったようです。特に日常着が着物から洋服へと移行していく時代、型紙はモノの基本を読み取るためのガイドラインであり、ものづくりのために用意されたツールでもあったのです。
完成品を買うことがあたりまえになっている現代の暮らしでは、モノが完成するまでのプロセスはほとんど見えません。出来上がった製品が複雑になればなるほど、その構造はブラックボックスとなり、使い方、楽しみ方さえわかればいいという感覚が出てきました。たしかに、それはそれで便利なのですが、一方で、主体的に関わって何かをつくりだすという原始的な楽しみを手放しているような気もします。完成品ばかりを手にすることで、私たちの周りには「わからない」ことが増えていないでしょうか? ものづくりの基本になる型紙というツールが、そんな私たちを、自由にしてくれるかもしれません。

何かを表現しようとする時、その基本パターンとなるのが型紙です。そう考えていくと、食べものの型紙はレシピですし、音楽の型紙は楽譜です。型紙は、マジックの種明かしのようなものかもしれません。さまざまなものの型紙が公開されれば、生活者が自分の手でモノをつくったり、リフォームしたりもできるようになるでしょう。型紙を手にすることで、私たちは再生可能な知恵を身につけることができるかもしれません。

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