研究テーマ

自分でつくる ―家の間取りを考える―

家をつくる時、どのような間取りにするかを考えるのは、とても楽しいことです。でも、間取りを自由に考えて実現できるのは、一戸建ての、しかも一からつくり始めることのできる限られた場合だけ。マンションや建て売り住宅では、「間取りの自由」はほとんどありませんでした。そんな中で生まれてきたのが、リノベーションという新しい動きです。

暮らしは人それぞれ

マンションや建て売り住宅の間取り図には、リビングやダイニングといったお決まりの記号がつけられています。しかし、そこでどのような時間を過ごすのか、家具をどう配置するのか、洗濯物はどこで干すのか、アイロンはどこでかけるのか...そんなことを考え始めると、頭を悩ませることになりそうです。
大量生産を目指した日本のマンションは、その多くが同じような間取りをつくり、それを繰り返すことで最大公約数の欲求に対応してきました。その方法は、限られた面積の中で合理的でバランスのとれた間取りをつくるのには確かに役立ちましたが、暮らしは人それぞれ、みんな違うはずです。
こうしたことを考えるため、もうひとつの潮流として生まれつつあるのが、リノベーションという動き。中古マンションを購入し、構造体だけ残してすべてをはぎ取り、内装のすべてを一から行うという家のつくり方です。

間取りは暮らしのプログラム

人口の減少が続く日本では、これから家が余ってきます。子供の数も減り、一人あたりの床面積も増えてきます。そして何より、新築のマンションは購入したその時点から不動産価値が下がり始め、10年から15年で半額にまでなってしまいます。そうした背景もあって、新しい家を買うことだけでなく、古い家を購入して自分らしく直すという選択肢が生まれてきたのです。
そこでは自由に間取りを考えることができるので、自分の暮らしにあった空間の優先順位がつけられます。家の真ん中にお風呂があってもいいし、ダイニングを小さくして、その分、大きなリビングにしてもいい。個室を極限まで小さくして、ベッドだけを置くという方法もあるかもしれません。宿題や仕事をする机は家族みんなで共有して同じ空間で過ごしたり、家事効率をよくするために洗濯室を設けたりと、人によってさまざまなことが考えられます。料理が好きな人はキッチンを大きくしてもいいでしょうし、そのキッチンに数百万円する高額なシステムキッチンを入れることだって可能です。逆にキッチンは小さくして、その分、他の場所を贅沢にしたいという人もいるはずです。本棚に囲まれて暮らしたいとか、寝室を大きくして快適な眠りの空間を一番に考えるとか、その可能性は限りなく広がっていくでしょう。
こうした動きは中古物件だけではありません。新築でも、自由設計型のマンションや初めから一緒に家づくりに参加できるコーポラティブマンションなども徐々に生まれつつあります。

家の間取りを考えることは、自分の暮らしを考えることに他なりません。どこでどのように過ごすのか、自分はどんな暮らしをしたいのか、どんなものに囲まれて過ごしたいのか。お仕着せの家でなく、自分や家族の暮らしを中心に考える。そんなことが可能になった今、家の間取りを考えながら、あらためて自分の暮らしに向き合ってみるのもいいでしょう。

みなさんは、家の間取りについてどう思われますか?
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