研究テーマ

人と自然 ―いつものもしも―

3月11日に発生した東日本大震災から、半年近く経ちました。復興への道のりはまだまだ遠いのが現状ですが、被災者の方々の復興への思いやパワーに、逆に日本中が勇気づけられています。
私たち日本人は、これまで数多くの災害に見舞われながら、その都度、力強く立ち上がってきました。阪神淡路大震災の時も、中越沖地震の時も、そして今回も......。

風化しがちな体験

9月1日は「防災の日」。88年前、10万人近い犠牲者を出した関東大震災が起きた日です。この時の教訓を忘れないために、またこの時期に多い台風への心構えの意味もこめて、1960年に「防災の日」が制定されました。しかし今回の震災では、教訓を忘れずに「備え続ける」ことの難しさを再認識させられたのも事実です。
6月に「くらしの良品研究所」がWEB上で実施した「防災についてのアンケート」には、2500名以上の方からご回答をいただきました。その中で、「"備え"をするきっかけになったのは?」という質問に対して、多くの方が「阪神淡路や中越沖などの地震を経験したから、あるいは報道を見たから」と答えています。反面、地震についての意識度では「あまり・まったく意識していなかった」と答えた人が40%ありました。阪神淡路の教訓でさえ、16年の歳月の中で風化し始めていたのです。
実際、非常時のために防災用品や食料品の備蓄はしていたものの、電池や賞味期限が切れていて役に立たなかったという声も数多くありました。
いつ来るかわからない「もしも」のために備えをするには、精神的にも経済的にも限界があるのかもしれません。

防災を日常化する

災害時にもっとも大切なことは「安心・安全」を実現することです。そのために必要とする装備や技術を検証していく中で、私たちはあることに気がつきました。それは、エマージェンシー(緊急時)もアウトドアもトラベルも、「非日常」という意味においては同じであり、そこで求められる知識や技術、道具は共通だということです。それなら、アウトドアや旅を楽しみながら、防災の知識やスキルを身につけ、道具の備えもできるはず。そして、いざという時にいつも通りにそれらを使いこなせれば、「本当の備え、防災力」となるでしょう。
「いつものもしも」と名づけたこの考え方は、いつ来るかわからない「もしも」のために備えるのではなく、「いつも(日常)」していることを積み重ねて「もしも(非日常)」の時に役立てていこうというものです。

時代の転換期

「備える」ということは、言い換えれば、「最低限のものを、どう持つか」「あるもので、どう過ごすか」を考えることでもあります。今回の大震災を経験して、「ものはなくなる」という意識も広まっているようです。ものを「所有する」ことが豊かさの象徴だと思ってきた私たち現代人の価値観が、今、問い直されているのかもしれません。
アンケートの結果からは、これまで「備え」の意識が低かった若い世代(20~30代前半)の意識が変わりつつあることが読み取れます。若い世代の意識が変わるということは、時代が変わっていくということ。今回の大震災は、そんな時代の変化を促進したとも言えるでしょう。

みなさんは、9月1日「防災の日」をどのような思いで迎えられますか?
ご意見・ご感想をお寄せください。

「いつものもしも」については、店舗にて配布中の小冊子「くらし中心no5・いつものもしも」でもご提案しています。また、WEBサイトにおいて『防災についてのアンケート結果報告』も公開中です。

無印良品 有楽町では、2011年9月1日(木)~10月5日(水)まで2階ATELIER MUJIにおいて『地震ITSUMO展~くらしの備え。いつものもしも。~』を開催いたします。

研究テーマ
生活雑貨