研究テーマ

「本」を通してのコミュニケーション

学校の図書館で借りた本の図書カードに、友だちや知り合いの名前を見つけて、急に親近感を覚えたり、時には胸がときめいたり......そんな体験はありませんか? 1冊の本が、思わぬところで人と人をつなぐことがあります。

今回は、あるマンションの共有ライブライリーの仕組みについてご紹介しましょう。このマンションは、千葉県津田沼にあるパークハウス木々津田沼前原。共有ライブラリーはエントランスホール内にあり、本棚は「育つ・読む・食べる・住む・学ぶ・着る・遊ぶ」と7つのカテゴリーに分けられています。そこには少しの本が置かれていて、まだまだたくさんの本を置くだけのスペースがとってあります。

その本棚の空いたスペースには、このマンションの住人の誰もが自由に本を置けるのですが、基本は、人に勧めたい本、読んでもらいたい本を置くこと。そして、本を置くときには専用のタグが用意されていて、そこに推薦文を書くところがポイントです。すでに置かれている約150冊の本にも、その本を推薦するコメントが書かれています。もちろん本を読むこと自体も楽しいのですが、人の書いた推薦文や感想を読むのも、また楽しいものです。既に読んだことのある本でも、そこに書かれてあるコメントを見ることで、同じ本の違う良さを発見できるかもしれません。

でも本当の狙いは、そのコメントを通して住人同士が仲良くなっていくこと。本を通して、ただ挨拶をしていただけの人たちの間に共通の話題が生まれてくれば、と考えたのです。「あの人、こういう本が好きなんだ」「へー、こんな推薦文を書くんだ」などなど。推薦してくれる人の考え方を知ることで、その人に急速に親しみを感じたり、そのパーソナリティーを知ったりもできるでしょう。

最近できたある図書館では、とてもおもしろい試みがなされています。図書館のさまざまな場所に置かれている情報端末に本をかざすと、機械がICチップを読み取り、その本を中心に、関連する図書の一覧とその内容、イベント、研究会、また研究者達などが画面に映し出されます。ここでは、本が情報の起点になって、まわりの情報と結びつけてくれるのです。またネット販売などで本を探すと、「この本を買った人は、こんな本も買っています」という紹介ページが出てくるものもあり、興味をそそられます。ブログなどで勧められている本も、好きなブロガーの推薦文なら、その本が欲しくなったりすることもあるでしょう。
無数の情報が再編集されて、自分にとって有益な情報のかたまりになっている──もはや本は単体としての本ではなく、本を媒介としてさまざまな情報や人とつながっていくためのきっかけと言えそうです。

ここでご紹介したような、住人同士で行う共有ライブラリーの仕組みに取り組んでみるのもいいでしょう。それをきっかけに、近くの人と新たなコミュニケーションが生まれるかもしれません。

研究テーマ
生活雑貨

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