研究テーマ

各国・各地で

地域通貨と法定通貨

地域通貨という言葉を聞いたことがありますか? ある地域やコミュニティーの中だけで、限定して使う通貨のことです。日本ではまだ一般的ではありませんが、それでも500以上の地域で使われています。一方、海外では多く使われていて、イギリスやオーストラリアなどのLETS、アメリカのイサカアワー、カナダのトロントダラー、フランスのSEL、アルゼンチンの交換クラブ、ドイツの交換リングなどなど。また、スイスのWIR銀行、北欧のJAK銀行、バングラディッシュのグラミン銀行なども含むことができるでしょう。
地域通貨は、経済の状況が悪くなると、さまざまな場所で使われるようになります。その運用に成功しているところもそうでないところもありますが、国や公共のサービスがうまく機能しなくなったときに、自分や仲間で身を守っていく「自立」への本能的な動きとも言えそうです。

地域通貨の種類

通貨の種類は、小切手型・通帳型・紙幣型の3つに大きく分けられます。小切手型は、それを使う人が裏側にサインをして履歴を残し、コミュニティー内で使われていることを認識するもの。ある種の信用補完になりますし、同時に誰のもとをたどってきたかの経緯がわかります。
2つめの通帳型は、一番多く使われているもの。対価が発生したとき、支払う側と受け取る側のそれぞれの通帳に、金額と内容を記入します。コミュニティー内全員の総和が、プラスとマイナスでゼロになることが特徴です。マイナスになることは、必ずしも悪いことではありません。多くの人と関わり、人の長所を見つけ出して仕事を頼んだという証でもあるからです。とはいえ、あまりにマイナスが多くなれば、コミュニティー内で意識してそういう人に仕事を出すようにします。
3番目の紙幣型はお金と同じように地域内で使えるお金ですが、地域通貨には利子がありません。利子がないだけでなく、中には「マイナス利子」といった早く使わないと目減りしてしまうようなものもあります。貯蓄をしないで、経済の循環をよくするためです。そのほか、時間単位の労働をコインなどに換算し、それを使ってサービスの交換をする「タイムダラー」と言われるものもあります。

地域通貨で買えるもの

その内容は、時間単位の労働が中心です。掃除をする、本人に代わって買い物をする、子どもの面倒をみる…誰にでもできることに対価を発生させて、お互いに助け合います。日本では昔、田植えのときや家を建てるとき、地域の人や親戚がお互いに力を貸し合う「結(ゆい)」という習慣がありましたが、それに近いかもしれません。そうした助け合いを、もっと日常的なことにしていく方法のひとつとも言えそうです。
労働だけでなく、野菜やパンなどの食べものも地域通貨で買う対象になります。食べることとサービスを交換する仕組みがあることで、人々は安心して過ごすことができるのです。こうしたことで、地域内の経済を活性化することが、この通貨の何より大きな特徴と言えるでしょう。

お互いの長所を見つけ合う

多くのコミュニティーでは地域通貨と法定通貨を併用していますが、地域通貨が成功するかどうかは、両者のバランスにかかっています。日常の暮らしにかかる費用を、なるべく地域通貨で支払う。地域通貨を使うことは人に何かを頼むことですから、そのためには、その人がどんな人なのか、どんなことが得意なのかを知らなければなりません。コミュニティー内の人がお互いに関心をもち、お互いの長所を自然に発見できる、というのが地域通貨の最大のメリットなのです。
もちろん、税金による公共福祉や医療・教育など、地域通貨では解決できないこともたくさんあります。それでも、自分たちの暮らしを、なるべくコミュニティーの中で解決していこうとする。そんな「自立」への動きが、地域通貨だと言ってもよいでしょう。
貨幣経済の最大の落とし穴は、富が誰かに集中するという仕組みです。そこでは、お金を得ることが豊かさになります。しかし地域通貨では、人々への関心の度合いが豊かさとなっていくのです。誰か困っている人はいないか、そのことをいつも考えるようになります。そして、自分が困っているときは、いつでも自然に声をあげることができるのです。

IT技術と地域通貨

こうした地域通貨の仕組みの問題点は、やり取りが面倒なことです。書き込みをしたり、通帳を発行したり、時々全員の手持ち残高を集計したりということが必要になります。しかし、IT技術が進歩したことで、もっと簡単に地域通貨が使えるようになるかもしれません。たとえば携帯の端末を使って地域内で使えるようになれば、今までの貨幣に代わって、もっと多く使われる可能性も出てくるでしょう。「コミュニティー」と言うとき、普通は地縁や血縁を指しますが、現代では、同じような価値観を持った人が地域を越えてひとつのコミュニティーを形成していくこともありそうです。少し離れたところでも、日常の暮らしに必要なものをお互いに提供し合うことができれば、地域通貨の価値は高まります。物物交換にも似たプリミティブな経済の仕組みですが、IT技術を活用することで、私たちの暮らしを変えることもできるかもしれません。

貨幣には、人間の欲望を増幅する仕組みがあるようにも思われます。もし、そこから離れられる別の経済の仕組みがあるとすれば、これからの暮らし方は大きく変わるかもしれません。
地域通貨について、みなさんはどのように考えられますか?

研究テーマ
生活雑貨

このテーマのコラム