研究テーマ

眠りの意味 ─夢とレム睡眠─

眠りに「レム睡眠」と「ノンレム睡眠」があることは、よく知られています。
一般的には「レムは浅い睡眠で、ノンレムが深い睡眠」と理解されているようですが、本当は少し違うようです。今回は、レム睡眠の仕組みをひもときながら、眠りの意味について考えてみましょう。

レム睡眠とは

レム(REM)とはrapid eye movementの略で、脳波はまどろみ状態を示しているのに、目の動きだけが速くなる状態です。1953年、シカゴ大学の学者が乳児の寝顔を観察していて発見しました。目の動きは、普通なら起きている状態で活発になるはずですが、眠っていてもそんなことが起きる「眠りでも覚醒でもない第3の状態」があるのを発見したのです。
その後の研究で、この眼球運動が刺激となって夢の映像が生成されることがわかってきました。ノンレム(=レム状態ではない)睡眠の間にも夢は見るのですが、レム睡眠の時にはもっと鮮明な夢を見ていることもわかってきました。夢の研究は、猫の実験によってより深く解明されていきます。猫は、夢の中で餌を獲るシミュレーションを行っているらしい、とわかってきたのです。猫は眠っている間に昼間や過去に得た情報を整理し、具体的に使える情報に組み立て直す作業をしていて、それが「夢」だというのです。多くの場合、夢は獲物を獲る寸前で終了し、その時点でシミュレーションは完成するといわれます。そして、この種の夢を見るのが、レム睡眠の時間。レム睡眠は眠りの浅い状態の時に起きるので、「レム=浅い睡眠、ノンレム=深い睡眠」と思われがちですが、ただそれだけの意味ではないことがわかります。

またレム睡眠中は、脳から骨格筋を脱力する指令が出ますので、体を動かすことはできません。夢を見ている時に体が動くと、危険だからです。霊的な出来事として受け止められることの多い「金縛り」も、このレム睡眠の発見で説明がつくようになりました。睡眠導入時に、いきなりレム睡眠が訪れてしまうのが「金縛り」。意識がまだ半分ある状態なのに体だけが動かなくなってしまい、夢が現実のように体験されてしまうのだといいます。

眠りと覚醒の関係

夢は現実のシミュレーションで、記憶は寝ている間に整理され定着し、夢によって訓練されている。眠ることは、ただ体を安めるのではなく、それまでの記憶を「使える」状態に変換していくこと。となると、眠っている間、脳は休んでいるのでなく、働き続けていることになります。そう思うと、眠りをおろそかにはできません。眠っている時間に意識を向けることで、睡眠時と覚醒時との関係をあらためて考えさせられます。
疲れたから眠るのでなく、眠りは夢を見て現実のための訓練を行う時間。そう考えると、眠ることが楽しくなってきます。さあ、今夜の夢はうまくいくでしょうか? 夢がうまくいくのなら、現実もきっとうまくいくはずです。また、夢でハッとさせられるようなことがあれば、それは危険予知。気をつけて一日を過ごしましょう。眠りと覚醒の関係、夢と日常の行動との関係、それぞれが表裏一体につながっていると考えられそうです。

みなさんは、眠りや夢が現実の世界に深く関わっているということについて、どう思われますか?

この内容は、くらしの良品研究所発行の小冊子「眠りを楽しむ」に詳しく書いています。店舗にも置いてありますので、お手に取ってご覧ください。ウェブサイトからダウンロードもできます。

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