連載ブログ 音をたずねて

若い鍛冶職人に会いました

2013年06月12日

BGM8のライナーノーツ表紙になったダリアの花をいただいた家を後にして、カール・ラーション・ガーデンの周りをうろうろしていると、小さな鍛冶屋を発見しました。

中を覗いてみると誰も居ません。炉の火だけが赤々と熾っていました。おかしいなと話していると後ろから声がしてご主人の登場です。どうやら小屋の裏手で作業しておられたようです。

2代目さんでしょうか、まだ若い鍛冶屋職人さんでした。撮影のために仕事ぶりを拝見させていただけるかうかがうと、快く承諾してくださりすぐに仕事に取りかかりました。そのとたんに炉の火の勢いが一層増し、その中に何かをいれて作業をしています。手慣れた仕草からも、しっかりとした修行をされた職人さんなのだということが見て取れました。職人の動きは古今東西変わらずに美しいものだと感心してしまいました。無駄がなく気迫が溢れるからなおでしょうか鮨職人も鍛冶職人も同じ美しさを持っていることがうれしくなりました。

先ほどご婦人を発見した場所からほんの少し離れた場所に、ぽつんと建っているこの工房。はたしてお客さんは来るのだろうかと余計な心配しました。話をうかがってみると様々な依頼があるそうでそれなりに仕事になっているとのことでした。鉄が好きで鍛冶職人をやっているから楽しいし、閑なときはこんなものを作っていると、小さな作品をいくつか見せてくださいました。燭台や蝶番、ハンガーフックやお守り、中には何だかわからないものまで沢山ありました。硬い鉄、大地からの授かり物を自由に加工できる技術を羨ましく思いながら、お話しを伺っている間に作品を手に入れたくなってしまい、お守りを買い求めました。

その品がこの二つです。職人さんの説明ですと、左がオオカミ除けのお守り、名前はないそうです。右の名前がトロール・クッラ。北欧に伝わる伝説上の妖精トロールは騒音を嫌い鐘や教会からは離れて暮らし、気に入った人間には富と幸運をもたらし、気に入らないものには不運と破壊をもたらすそうです。このお守りは森でトロールに会ったときに仲良くなれるお守りと聞きました。丁寧に鉄を打ち曲げたり、多面体の球状にしたり大変な作業だと思うのですが、驚くほど手頃な値段でした。いくつか分けていただき、北欧の心のこもったお守りとして今でも大切にしています。スウェーデンは鉄の国。生産される鋼材はスウェーデン鋼と呼ばれ、国際的にも日本の安来鋼と並んで硬く上質の鋼材として評価が高いと聞きました。この素材は聞きそびれましたが、不思議なことに手に入れて数年経つ今でもまったくさびが付きません。

やっと昼食です

スウェーデンの食事はとても胃に優しい料理が多いように思いました。森のインタープリター、アリシアさんが料理は箱から作ると言われたように、手の込んだ料理が少ないように思いますが、それが幸いしてか、どれも素材を生かした美味しい料理が多かった印象です。

これが本日のランチです。新鮮なトマトににんじんとレタス、元気なジャガイモ、肉だんごとソーセージにピクルスそれと美味しいパンとバター。日本人には十分な量です。

一緒にランチをとる女性ドライバーのブリタさん。とても安全運転できびきびしていました。左が通訳のミーケルさん。大学で講師をしておられるとのことで専門は東欧文化研究だそうです。お二人とも目的地がはっきりしない、被写体遭遇重視の大変なロケに嫌な顔ひとつしないでお付き合いくださいました。移動中のバスの中でのミーケルさんとの北欧ケルト話はとても面白い体験でした。スウェーデンの方々のとてもとてもフレンドリーな姿勢のおかげで素敵なロケ旅になりました。

そんな話をしているとフレンドリーな友人が遊びにきました。

そのほかに興味深いものを数多く発見

食事が終わってぶらぶらしていると、こんどは素敵なお店を発見しました。こういった構えの店は日本を含めた各国にありますが、スウェーデンほど周囲と調和して無理のないお店も少ないように思います。ひょっとしたら世界で多いこの手の店は、スウェーデン仕込みなのかも知れないすら思いました。

こんなディスプレイも嫌みなくとても自然でした。古い新しいではなく、それなりの美しさを見つけることがとてもうまく、それはものを大切にする事と日常生活をもっと楽しもうとする気風のような気がしました。

これから塗るのでしょうか? 鳴子のこけしのようにダーラナ地方のどこでも売っていた赤い木馬でしたが、こちらの品は色が塗られていませんでした。自分で塗るのでしょうか。このオレンジ色の木馬が気に入ってしまいました。

こちらは麻紐のようです。綺麗に染められボール状に沢山ありました。

こちらはトナカイの蝋燭。可愛いですね。このままでも使えそうですが自分で色を塗るのでしょうか? なぜかとても無印良品的な印象を受けました。

この日は移動してストックホルムに入らなければならず、あまり時間がありませんでした。興味深い店や興味深い品々もそこそこにバスに向かいました。ひとつ気がついたのは、今回のロケ中に観光客らしい方々にほとんど会わなかった事です。季節はまだ9月十分に観光の時期だと思うのでとても不思議でした。そのかわり沢山の地元の皆さんに出会い話を伺うことができました。

今回のロケで北欧デザインとは本来デザイナーの領域ではなく、生活者1人1人のスタイルなのではないかとの思いが湧きました。合理的で美しく、優しいデザインはモノにではなく心にあるもの、日常生活の中にある豊かさを大切にした丁寧な生活。大自然と人との関わりを大切にする生活。観念、理論ではなく、実質的な生活の積み上げ、気質と技術の賜が北欧デザインではないかとすら思いました。日本の指物、日常雑器、和船、陶芸、織物、染色に通じる伝統と人々の実直が生むデザイン。少し前までは世界は共通の美意識を持っていたような気がする旅でした。次回はストックホルムに入ります。竣工式の日1300m走り、沈んだ巨大戦艦ヴァーサ号のお話しをいたします。どうぞお楽しみに。

  • プロフィール くらしの良品研究所所員
    Y.Iさん

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