連載ブログ 音をたずねて

ホテルのお話しです

2012年07月25日

この仕事ではいつも、同じホテルに一週間以上宿泊します。長い滞在になりますので、カメラマン、コーディネーター、デザイナー、アカウント、音源制作、ドライバーと様々な業種のスタッフの要望を満たすものでなければなりません。スタッフが納得し最高の能力を発揮してもらうためには、宿泊と食事の基準を作ることがとても大切でした。はじめの頃は試行錯誤の連続でしたが、その中でできあがった基準をご紹介します。(1)値段が予算内であること、(2)お湯がちゃんと出ること、(3)現場が近いこと、(4)インターネット環境が整っていること、(5)出入り時間に規制がないこと、(6)部屋が広いこと、特にこの(6)が長期滞在にはとても重要だと言うことがわかりました。朝早くから夜遅くまでスタッフ全員で動きますので、独りになれるのはホテルの部屋だけです。部屋に戻ってからもそれぞれに作業があったりしますので、作業がしやすいようにツインやダブルのシングルユースになります。以前部屋の空きがなく二人部屋にしたこともあったのですが2日が限度でした。ストレスを出来るだけ減らすことが重要だと感じました。今回の旅はスコットランドエディンバラからインバネスまで撮影しながら毎日ホテルを替えて駆け抜ける初めての試みでした。毎日ホテルが変わることがこれほど辛いことだとは思いもよりませんでした。今回のブログはこの旅で泊まったホテルを紹介いたします。

モントローゼのリンクス・ベストウエスティンホテル

モントローゼのベストウエスティンホテル

海外のホテルの格付けを星の数で表すことがありますが、これがかなり当てにならないことを知りました。もう一枚前の写真はこのホテルの星が4つ付いています。ところがこの写真では3つです。全く同じホテルですが星を与えている団体によって評価が違う事がわかりました。エリアにおいての等級というコメントが付くようです。

客室です

出発前は寝るだけなのですから、どこでも良いと考えていたのですが、日々の疲れの抜け方がホテルによって全く違う事に気がつきました。荷物も完全に広げられない状態は大きなストレスになりました。

まずシャワーとトイレの点検です

撮影初日に泊まったLinks Hotelはベストウエスティンというホテルチェーンに属しています。このベストウエスティングループは世界中にあります。比較的コストパフォーマンスの良いホテルグループです。とりわけて特徴的なところはないホテルですが、基本的な部分がしっかりしていて料金が手頃なのでよく利用します。
各自、ホテルの部屋に入るとまずチェックするのはベッドとシャワー、トイレです。日本ではほとんどあり得ないことなのですが、お湯が出なかったり、配水が悪くお湯が流れなかったり、ベットマットのこしが抜けていたりする事が往々にしてあります。シャワーに関しては頻繁になんらかのトラブルがある場合が多いです。その点ベストウエスティンでそれらの問題があったことは無いように思います。このときは部屋も十分な広さでした。

ダイニングです

ダイニングはぱっとしませんが清潔に保たれていました。我々は朝食を食べただけでしたが夜も結構賑わっていました。

外観です

さすがにスコットランドのホテルです。ベストウエスティンにしては落ち着いた佇まいでした。このホテルは三つ星のホテルランクだと思いますが十分な機能を持っていました。最近ではインターネットも普及して大概Wi-Fi電波が館内を飛んでいて無料のことが多いですが、この頃はまだ有料の有線接続。1日で1500円程度支払いました。料金的にはワンランク上のホテル料金でもWi-Fiのあるホテルを選ぶほうが割安の場合があります。

アバディーン・ノーウッド・ホール・ホテル

車の横が玄関です

アバディーンの郊外に5kmほどに位置するこのホテルはマナーハウスかと思えるくらいにとても個性的でプライベートな感じがしました。我々が着いたのは夜でしたが、玄関に灯りもなくひっそりとしていました。この日の宿泊客は我々だけだったようです。

フロントの横には小さな暖炉があり火が燃えていました

2階の部屋をあてがわれて、2階に続く階段です

館内は贅沢な造りになっていましたが、賑わいはなくひっそりとしていました。まるでどなたかの別荘におじゃましているようでした。

部屋です

若干古めかしいしつらえでしたが、清潔で明るく居心地の良さそうな部屋です。ホテルの外見や入り口から感じる印象とは異なりとても温かな感じの室内でしたので安心しました。この部屋にもWi-Fiが備わっています。

バスルームです

バスルームも清潔に掃除され高級感のある素材でした。お湯も問題なく、トイレもスムーズに流れました。この日はホテルで夕食をとることになっていましたので着替えてさっそくダイニングに向かいました。

たしか鱈のレモンソースだったと思います

これはシーフードの盛り合わせ

料理の味はあまり記憶に残っていないので、すばらしい味では無かったと思います。ただ丁寧に料理し器にも気を使った上品な食事でした。撮影で歩き回って全員お腹が空いていたのでパンのおかわりとチーズをお願いしました。

朝の窓からの眺めです

朝起きると外で芝刈り機の音がしているので窓の外を覗いてみると綺麗に刈り込まれた芝が見えました。全体に古めかしく、大きな特徴のないホテルでしたが、貴族のマナーハウスやサマーハウスのように静かに時間だけが過ぎていくようなところでした。家族で長逗留したらとても落ち着ける素敵なホテルだと思います。この原稿を書くためにインターネットで検索しましたら今のホテルは、館は一緒なのですが内装が変わり、四つ星ホテルになっていました。我々が泊まったときは確か三つ星だったと思います。

トゥミントール・ゴードン&リッチモンド・ホテル

ホテル外観です

いよいよスペイサイドの中心部に入りました。トゥミントールという、グレンリベット蒸留所から南に20kmほど下がった集落にあるホテルです。準備段階でコーディネーターの真理子さんから、このエリアはホテルの数が少なく、B&Bのようなホテルだけれど他にないのでと紹介してくれたホテルです。
今回はクレイゲラヒーホテルに泊まることで宿泊予算が若干超えていましたので、ちょうど良い値段でした。

入り口です

集落の中ではなかなか立派な造りの建物でした。ドア周りには星は見られませんでしたが大きさからいえば最低、2つくらいの星が付いていてもおかしくないホテルでした。

客室ベッドです

シングルベットです。少しマットがへたり、サイズも少し小さな感じがしましたが清潔だったので良い事にしました。

バスタブです

バスタブの狭さには少し驚きました。私が入るのがぎりぎりの横幅です。太った方が多いヨーロッパでは入れない方もいらっしゃるように思いました。値段が値段でしたのでこれもバスタブが付いているだけ良いと考えました。お湯を確認したところかなり細いですが、出ましたのでこれも合格。

クロゼット・ロッカー

驚いたのはロッカーでした。扉が開いているので閉めようとしても締まりません。おかしいと思って確認してみましたら床が傾いているようでした。
試しに歩いてみると若干床全体に傾斜があるようでした。旅行用トランクの車輪を下にして置くとの少し動きます。部屋を変えてもらおうかとも考えたのですが、一日やっかいになるだけですし、値段も破格なので我慢することにしました。食事にしようとロビーにおりましたら、皆が困った顔をしていました。理由を聞きましたら、レストランがやっていないとのこと。近くにパブが一件在るだけのようです。ないよりましとパブに向かいました。

パブの煮込み料理のような品

半分あきらめて、入ったパブですが二種類の定食がどちらも美味しく、スコットランドの味覚レベルに感心してしまいました。お店の人も気さくで、我々がゴードンホテルに泊まって食事が無かったこと。お店がやっていて助かったこと、日本から来たことなどを話しながら、楽しい時間が過ごせました。こんなドタバタな撮影旅行でしたが、普段は泊まらないホテルに泊まれたことがとても貴重な体験になりました。今回はさまざまなスタイルのホテルに泊まりましたが、結局ホテルはスタッフのホスピタリティと周辺の人々の温かさがすべてであると思いました。次回は銘酒マッカランを訪ねます。どうぞお楽しみに。

  • プロフィール くらしの良品研究所所員
    Y.Iさん

スライドショー

最新の記事一覧