連載ブログ 音をたずねて

豊かな森との共生

2013年05月08日

コーディネーターのやすこさんに地元で森のインタープリターをなさっている方を紹介されました。元は学校の先生をなさっていて、引退後はボランティアで活動されておられるとのことでした。水と森の国スウェーデンの人と森の豊かな共生の一場面をご紹介します。

野生のブルーベリーです。森の中辺り一面に広がって自生しています。実は野生種のブル-ベリーにはビルベリーとローブッシュ・ブルーベリーの2種類があるようです。私たちがブルーベリーだと思ったのはビルベリーという種類でヨーロッパに多く自生するベリーでした。

そしてこちらは地元でリンゴンと呼ばれているコケモモです。ちょうど我々が行った時期はブルーベリーとリンゴン・ベリーの最盛期で森のいたるところに自生していました。

遠くから見ると木々が密集しているような森も中に入ってみると明るく下草も豊富に生えています。おとぎ話に出てくるような森には、白いこけのような植物が繁茂し、その間にブルーベリーやリンゴン・ベリーが一面に広がっていました。思わず白雪姫の物語を思い出しました。

我々が森の豊かさに驚きながらブルーベリーを指で拾い集めていると、笑いながらインタープリターのアリシアさんがベリーの摘み方を見せてくれました。

彼女は箱のような形状で一方に口が開き、その下部には櫛の歯のように金属の棒を並べて付けてある、金属製のチリトリ型の道具を取り出しました。その道具で豊富に生えているベリーをその櫛の歯の部分を使いじょうずに剥いていきます。そうすると瞬く間に箱の部分一杯にベリーが集まります。このとても効率が良い道具を貸していただき、皆でベリー狩りが始まりました。

すぐにこのような量になりました。目の悪いクリエイティブ・ディレクターの新村さんはブルーベリーばかりを選りすぐり、その場で食べています。まるで熊のようでしたが、本人は目が良くなることを祈って食べ続けていました。

この写真は市場で売られていたリンゴン・ベリーですが、ベリーの中では収穫量が多く、このリンゴンには驚くほどのビタミンEとマンガンが含まれており、ポリフェノール、レスペラトールなどは赤ワインに匹敵するらしいです。地元ではジャムやソース、ジュースなどにして、肉料理を中心とした様々な伝統料理の付け合わせに無くてはならない植物のようです。リンゴンに含まれる安息香酸は防腐剤を必要とせず、生のまま砂糖と混ぜてジャムにする場合もあるらしいです。

夢中になってベリー摘みをしている我々にアリシアさんから声がかかりました。
彼女の傍までいってみると手作りの3時のおやつが大きなナプキンの上に並んでいました。皆に食べさせようと持って来てくださったようです。さっそくいただいてみると手作りの滋味豊かな味がしました。

アリシアさんからスウェーデンの森や生活のさまざまなお話をうかがうにつれ、伝統を現代生活に生かしながら豊かに暮らすスウェーデンの方々の姿が少しずつ見えてきました。スウェーデンに来て気がついた、各家の窓の装飾や庭の手入れについて驚いた話をしましたら、冬が長く家にいることが多いこの国では、自分の住む場所に最大の力を注ぎ、快適に過ごせるようにするのだと教えていただきました。

共稼ぎの多いスウェーデンでは「料理は箱から作る」というジョークもあるほどに、男女隔たり無く料理をするので簡単にできる料理がとても盛んであると笑いながらおっしゃっていました。例としての写真、ニッポン・ソッパと聞こえたジュースです。実はニィーポンと発音するらしいのですが日本人にはニッポンと聞こえてしまいます。このニィーポンはスウェーデン語でローズヒップになるルゴサと言うバラ科の植物で、原産は日本のハマナスだそうです。

おもしろがってお話しをうかがっていたら、すぐわきを指さし、この植物だと教えてくださいました。これがニィーポンの実です。味は少し甘酸っぱくネクターのようなジュースでとても美味しく好きになりました。帰国してから調べて見ましたら、日本でも、北海道ではジュースを作っておられる方がいらっしゃいました。ビタミンCがとても豊富で体に良さそうな自然食品のようです。

豊かな森の恵みを大切にしながら、自分達で採取、加工し長い冬に備える。その土地の食材はその土地にあった栄養を与えてくれます。日本の里山も昔は同じように活用され、森と共に暮らす生活があったように思います。箱から作ると笑いながらおっしゃっていた森のインタープリター、アリシアさんは昔のまま豊かな森と共生しスウェーデンの伝統的な食文化を守っておられるように思いました。日本のスーパーマーケットはとても便利ですが、地元の森で採れた豊かな食材を手にいれることはできません。スウェーデンでは現代でも伝統的な森との共生生活が保たれているようで、とてもうらやましくなりました。その話をアリシアさんにすると「明日はあなたがうらやましがる生活をお見せします」と笑いながらおっしゃっていました。次回はそのうらやましい生活をご紹介します。

  • プロフィール くらしの良品研究所所員
    Y.Iさん

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