各国・各地で「千葉・鴨川 ─里山という「いのちの彫刻」─」
棚田の村へ入ると、まるで時計の針を戻していくように過去へとタイムトラベルしていきます。しかし、ここでの暮らしから見えるのは、過去を突き抜けた「未来の風景」です。

未来への投資

2016年10月05日

9月10日土曜日は、鴨川里山トラスト・有機米の会の稲刈りを行いました。
前回のブログでもお伝えしたように長引く雨と度重なる台風の影響で、稲は倒れ、田んぼの水は抜けず、今回も稲刈りとしては最悪のコンディションです。
長老いわく、「こりゃ~、100年に一度の稲刈りだ~」だそうです。

鴨川里山トラストでは、棚田保全と同時に生物多様性も保全するので除草剤を使用しないため、2度の田の草取りを行いますが、7月の田の草取りが雨天のため出来なかったので、雑草が生い茂ってしまいました。残念ですが、そんな状況なので今年はお米の収量が低そうです。
農は自然に合わせるしかありませんので、今回のように予想外の天候に左右され、うまく行かないことも多々あります。
この道80年のベテランの長老も「百姓は毎年勉強だよ」と言います。
このように農は苦労もありますが、人間中心ではなく自然中心の体験を都会の人々と共有することは、「いのちの感受性」を養ってくれる貴重な体験だと思っています。

ワーカーズ・コレクティブ「からころ」

今回の昼食は、鴨川ではじまったワーカーズ・コレクティブ「からころ」にお願いしました。
お昼ごはんには、長狭米の新米、北海道チクレン牛・山形県平田牧場三元豚・千葉の米育ち鶏の卵のミートローフ、鴨川のひじきの煮物など、国産や地元産のこだわりの素材を使った美味しい料理をつくってくれました。
「からころ」とは鴨川に暮らす女性たちが、生活クラブ生協の組合員や地域通貨あわマネーの会員に呼びかけ、「地域に必要な機能、自分たちも必要としていて、自分たちが頑張れば出来そうなこと」を話し合ってできたお弁当屋さんです。

資金も専門性もない普通の市民が起業するための仕組みであるワーカーズ・コレクティブ(労働者協同組合)は、主旨に賛同したメンバーが、「出資」「労働」「経営」を共に行う事業スタイルで、「からころ」は高齢者や子育てママへの配食サービスを主に、職場へのお弁当配達、イベントのケータリングなどの事業を行っています。
「食は生命の根幹であり、生きる楽しみ」なので、地域の食材で安心安全な調味料を使い、お弁当をつくり、それを食べてもらうことで地域の人が健康になり、地域でお金と情報が循環し、地域で分かち合い、助け合い、つながり合うことを「からころ」は目指しています。
だから「からころ」とは、「からだ」と「こころ」に良いことを意味しているそうです。
そして、この事業が育てば、ゆくゆくは買い物代行、子ども食堂、フリースクールなど、今は鴨川にはないけれど、あったら良いなと思う場をつくっていきたいと、「からころ」のメンバーたちは夢をふくらませています。
「からころ」はローカルで生まれた女性ならではの、しなやかで素敵なワーカーズ・コレクティブです。

お米づくりは最高の幼児教育

稲刈りには都会から多くの家族連れが来てくれましたが、ぬかるんだ田んぼに足を取られ、やはり大変な作業となりました。

ドロンコになった子供たちは、虫探しに夢中になる子もいたり、泥が嫌で泣き叫ぶ子もいたり、中には鎌で手を切ってしまう子もいたり、それは、それは大騒ぎです。
都会からわざわざ山の中まで来て、親や大勢の大人と一緒にドロンコになって田んぼで作業することは子供にとって、特別な非日常体験です。

幼児教育は二十歳すぎにその効果が現れると言われていますので、この体験は子供たちが大人になった時にきっと何かしらの影響を及ぼすでしょう。
だから僕は、子供たちとのお米づくり体験は20年後の未来への投資だと思っています。
そして、同様に鴨川里山トラストも、地域通貨あわマネーも、ワーカーズ・コレクティブ「からころ」も、ローカルだからこそできる持続可能な未来へのステップだと思っています。

  • プロフィール 林良樹
    千葉・鴨川の里山に暮らし、「美しい村が美しい地球を創る」をテーマに、釜沼北棚田オーナー制、無印良品 鴨川里山トラスト、釜沼木炭生産組合、地域通貨あわマネーなど、人と自然、都会と田舎をつなぐ多様な活動を行っています。
    NPO法人うず 理事長
    T&T研究所 研究員

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