各国・各地で「千葉・鴨川 ─里山という「いのちの彫刻」─」
棚田の村へ入ると、まるで時計の針を戻していくように過去へとタイムトラベルしていきます。しかし、ここでの暮らしから見えるのは、過去を突き抜けた「未来の風景」です。

東アジアからの風

2017年06月28日

6月の有機米の会は、午前中にすがい縄づくりを行い、午後は田の草取りを行いました。
今回の昼食は、集落の料理上手なおばあちゃん「しろうべえ」さんと「こへいだ」さんにお願いしました。メニューは、タケノコの混ぜご飯、手づくり豆腐の味噌汁、キャラブキ、うの花、きゅうりのぬか漬け、じゃがいもの煮物、キャベツの酢の物です。
旬の食材を使ったこういう素朴なお母さんの手料理が一番おいしいのだと、若い頃アジアやヨーロッパを旅している時につくづく思ったものです。

今回の参加者は少数精鋭で15名でした。無農薬栽培のお米づくりで、最も大変かつ重要な作業は田の草取りなのですが、地味な作業のため人気がなく、あまり参加者が集まらないのが悩みです。

鴨川里山トラストで僕は、あえて農薬や機械が普及する前のお米づくりを体験してもらいたいと思っています。昔ながらの手作業のお米づくりは大変ですが、みんなで協力することで「結のこころ」が自然と育まれ、すがい縄づくりや天日干し等々の手仕事を通して「暮らしの知恵」を学び、「日本文化のルーツ」を再発見できるのです。

そして、それは東アジア共通の文化でもあります。

上海から鴨川を見つめる

5月の終わりに、中国からキム・ユイックさんが我が家へやって来ました。
韓国人のユイックさんは現在、上海で都会と田舎、人と自然をつなぐ和&同Harmony&Equalityコミュニティを運営しています。

日本語、英語、中国語を流暢に話すユイックさんは、日中韓の人々を草の根でつなぎ"東アジアの平和"を目指して、「土」をベースに活動しています。
かつてユイックさんは多国籍企業に勤め、金融ITコンサルとして世界を股にかけて仕事をしていました。しかし、311の東日本大震災の時、東京にいたユイックさんは、丸の内で揺れるビル群を見て、そして食べものがなくなるコンビニやスーパーを見て、電気が消えて交通が麻痺する都会を見て、生き方をシフトし、多国籍企業を辞めたそうです。
もともと"持続可能な社会"に関心のあった彼は、会社勤めの時は週末になると環境NGO等の市民活動に参加していましたが、今では立場が逆転して自分が都会から来る人々を受け入れる側になったそうです。

アジアの自然回帰

「どうして、韓国人のユイックさんが上海で都会と田舎をつなぐ活動をしているのですか?」
という僕の質問にユイックさんは、こう答えてくれました。
「今、中国社会は物凄いスピードで変化し、経済発展にともない自然は汚染され、都市に人口が集中し、農山漁村は過疎となり、格差と貧困が生まれ、日本と同じことが起きているのです。そんな状況で、GDPよりも健康な食べもの、きれいな水と空気と大地、そして本当の豊かさ、人間らしい暮らしを求めて、動き出している若者たちがいます。」
「こういうオルタナティブなムーブメントにおいて日本は40年、韓国は20年の歴史があり、中国は今まさに始まったばかりなのです。これらのムーブメントで一番歴史が長く、そして最も進んでいるのは、実は日本なのです。だから、日本のムーブメントは、これから東アジアにも訪れるのです。」
「IT技術が発達した今では、このような自然回帰運動、都市農村交流、有機農業、自然農、パーマカルチャー、フリースクール、自然療法、自然食、CSA、生協、提携、NPOやNGOの市民活動等々の情報は国を超えて共有されています。そして、日本で40年かかった変化を中国は10年で体験するほど時代は加速しているので、近い将来、韓国も中国も日本と同じ状況になるでしょう。」
「そして人口14億人の中国にそのムーブメントが広がり、社会化していくならば、それはアジアの新興国にとって大きな意味を持つでしょう。それは、世界全体にとっても。その時のために、私は日中韓をつないでいるのです。」
やさしい笑顔で静かに話してくれるユイックさんの目には、もう一つの未来が映っているようでした。

オープン+多様性+ポジティブ+デザイン

ユイックさんと僕はSNSでつながっていましたが、実は直接彼に会うのは今回が初めてです。彼は僕のブログを読んでくれていて、鴨川での活動にとても興味を持っていたそうです。
こういう活動の難しい点は、スピリチュアルな傾向が強い人々は宗教的なコミュニティとなったり、もしくはヒッピー的なコミュニティとなったり、理想を求めるがゆえに閉鎖的なコミュニティとなってしまう傾向があり、それだと広く社会へ浸透しないと感じていた中で、鴨川では企業、大学、自治体、NPO、NGO、農家、地元住民、移住者、都市住民、外国人等々、"オープンに多様な人や団体と連携"していることにとても可能性を感じると言ってくれました。
また、問題を抱える現代社会に対して悲観的になりすぎず、持続可能な社会へソフトランディングさせていこうと、ローカルから地に足の着いた"ポジティブな活動"にも共感してくれたそうです。
そして、もう一つ重要だと感じたのは"デザインと美しさ"だと言いました。
棚田、古民家、生活道具、里山をとりまく景観等々、それら全体が美的にデザインされていることは、多くの人を惹きつける魅力となり、土のある暮らしを広げるための重要なファクターになるだろうと話してくれました。
経済発展する東アジア諸国の伝統文化、暮らしの美しさ、農村風景が失われている状況で、鴨川の取り組みはこれからのアジアのモデルになるでしょうと、嬉しいことにユイックさんは話してくれました。

東アジア共通の地球市民文化

行き過ぎたグローバル経済は、東アジア共通の社会資本である農と自然とコミュニティを破壊させていますが、それは長く続かないことを敏感なアジアの若者たちはキャッチし始めています。
今、アジアの若者たちは、スマホを片手にジーンズを履き、西洋的な文化を享受していますが、僕らは今一度、東アジア・モンスーン地域の「稲作文化圏」の伝統を再評価する時期を迎えています。
かつて、千年以上前にユーラシア大陸から文明が中国や韓国を経由して、海を渡って日本列島へ伝わり、それらは日本の風土へ着地して日本独自の文化となりました。
そして21世紀の今、今度は日本からオルタナティブな文化が韓国や中国に渡り、日中韓で新しい文化を共に産みだそうとしています。
それは、人々の暮らしの中から内発的に芽生えた「東アジア共通の地球市民文化」です。
千年ぶりのダイナミックな文化創造の風が東アジアの各地から吹きはじめているようです。

Photo by Mizuho Seki・Yoshiki Hayashi

イベント情報

「手づくり味噌・醤油の会」(NPOうず主催・無印良品協力)第1回「大豆種まき」

「手づくり味噌・醤油の会」では、地大豆の種蒔きから始め、有機栽培した大豆を収穫、脱穀・選別、年明けに味噌を仕込みます
また、その有機大豆を使って釜沼産の有機小麦と天日塩と嶺岡山系の清水で1年間もろみを発酵させ、麦醤油と米醤油の2種類の醤油をしぼります。

開催日:2017年7月22日(土)
開催時間:10:00~15:30(予定)
開催場所:千葉県鴨川市
詳しくはこちら

天水棚田でつくる「自然酒の会」(NPOうず主催・無印良品協力)第3回「田の草取りとぐい呑み陶芸体験」

「自然酒の会」は、無農薬栽培のため除草剤を使いませんので、草取りを行います。
午前中は、安房地域初の試みですが、陶芸家西山光太さんの指導による釜沼集落の棚田の土を使ってぐい呑み陶芸体験(あわ焼)を行います。棚田を掘ったままの"自然な土"と、不純物を取り除いた"精製した土"の2種類の土で、ぐい呑みを2個つくります。
収穫祭で焼き上がったぐい呑みをお渡ししますので、自分で育てたお米でつくった自然酒「天水棚田」を"マイぐい呑み"で乾杯したいと思います。

開催日:2017年7月15日(土)
開催時間:10:30~15:30(予定)
開催場所:千葉県鴨川市
詳しくはこちら

天水棚田でつくる「有機米の会」(NPOうず・無印良品共催)第3回「田の草取りと太巻き祭り寿司づくり」

「有機米の会」は、無農薬栽培のため除草剤を使いませんので、草取りを行います。
午前中は、房総半島の郷土料理である「太巻き祭り寿司」を地元の料理上手なおばあちゃん「しろうべえ」さんと「こへいだ」さんに教わり、それをお昼ごはんとして頂きます。
かつて農村では冠婚葬祭を各家で行い、隣近所で助け合って食事の準備をしていました。
その時に、振る舞われたごちそうが「太巻き祭り寿司」です。肉や魚が手に入りにくかった山間部の農村に伝わる素朴ですが、華やかな"野菜のお寿司"を是非一緒につくりましょう。

開催日:2017年7月8日(土)
開催時間:10:30~15:30(予定)
開催場所:千葉県鴨川市
詳しくはこちら

2017年度「鴨川里山トラスト」スケジュール
有機米の会

2017年5月13日(土)第1回「田植え」
2017年6月10日(土)第2回「田の草取り」
2017年7月8日(土)第3回「田の草取りと太巻き祭り寿司づくり」
2017年9月9日(土)第4回「稲刈り」
2017年10月14日(土)第5回「収穫祭」
2017年12月23日(土)第6回「注連縄づくりとみかん狩り」

手づくり味噌・醤油の会

(年会費:3,000円:できあがった味噌1kg、麦醤油500ml、米醤油500mlをお渡し)

2017年7月22日(土)第1回「大豆種まき」
2017年12月16日(土)第2回「大豆収穫」
2018年1月20日(土)第3回「大豆脱穀・選別」
2018年2月17日(土)第4回「味噌仕込み」
2018年3月17日(土)第5回「醤油しぼり」

自然酒の会

(年会費:10.000円:できあがった自然酒720mlX4本をお渡し)

2017年5月20日(土)第1回「田植え」
2017年6月17日(土)第2回「田の草取りとすがい縄づくり」
2017年7月15日(土)第3回「田の草取りとぐい呑み陶芸体験」
2017年9月16日(土)第4回「稲刈り」
2017年11月18日(土)第5回「収穫祭」
2018年2月4日(日)第6回「寺田本家蔵見学」

※天候不良などによる予備日はすべてありません。

  • プロフィール 林良樹
    千葉・鴨川の里山に暮らし、「美しい村が美しい地球を創る」をテーマに、釜沼北棚田オーナー制、無印良品 鴨川里山トラスト、釜沼木炭生産組合、地域通貨あわマネーなど、人と自然、都会と田舎をつなぐ多様な活動を行っています。
    NPO法人うず 理事長
    T&T研究所 研究員

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