各国・各地で「千葉・鴨川 ─里山という「いのちの彫刻」─」
棚田の村へ入ると、まるで時計の針を戻していくように過去へとタイムトラベルしていきます。しかし、ここでの暮らしから見えるのは、過去を突き抜けた「未来の風景」です。

里山ゴールドラッシュ

2018年09月19日

僕のところには、移住の相談や見学の申込みがチョクチョク来るので、この夏「鴨川1DAYツアー ~鴨川から始まる新しいライフスタイル~」を開催してみました。
告知はほとんど口コミな感じでSNSのみでしたが、20代から50代の様々なバックボーンの人たちが12名も集まってくれました。
当日の集合は、朝9:30に旧大山小学校をリノベーションした里山オフィスです。

ここは、高速館山道を保田インターで降りると、約20分で到着します。
里山オフィスは長狭街道に面し、広い駐車場があり、冷暖房完備、スクリーンとプロジェクター、椅子やテーブルも揃い、インターネットもサクサク入り、山の中なのにメチャクチャ便利なのです。

里山は鴨川の新しい「西の玄関」

「鴨川って割りと近いんですね!」と参加者の方は驚いていました。
そうなんです、ここ大山地区は車なら渋滞がなければ東京から約1時間30分で到着します。
鴨川といったら、太平洋や鴨川シーワールドのイメージがあり、今まで鴨川の「東の玄関」は里海でした。でも、これから鴨川の「西の玄関」は里山です。
鴨川1DAYツアーでは、鴨川の仲間たちがそれぞれのライフスタイルを紹介してくれました。

トップバッターは鴨川市ナンバーワンの限界集落である天津小湊の山間部にある四方木地区へ地域おこし協力隊として入った橋詰良子さんが、「四方木の挑戦」と題して地域の取り組みについて話してもらいました。
橋詰さんはフリーランスのライターとしての仕事も並行して続けているので東京にも拠点を持ち、9割鴨川で1割東京の2地域居住のライフスタイルです。
四方木地区では地域の方々と空き家をセフルリノベーションし、都市農村交流の拠点として四方木ベース「したなおい」をつくり、地域活性化を行っています。また、現在はモミジの蜂蜜を採取し、地域の商品開発にトライしています。

走る神職

続いては、天津神明宮の禰宜の岡野大和さんです。
学生時代にITベンチャーを起業し、Uターン後は神職を引き継ぎながらローカルフリーペーパーのKamoZine、ローカルメディア「かもナビ」を創設しました。

現在はアウトドア・スポーツによる街づくりを進め、鴨川の女子サッカーチーム「オルカ鴨川」の運営に携わり、「南房総サイクルツーリズム協会」の共同代表となり、「房総神社サイクルライド推進委員会」という若手神主たちと安房の神社を自転車で巡るツアーを行い、プライベートでも南房総のロードを楽しむサイクリストです。
そして、二人は僕と一緒に参加している鴨川の街づくり委員の仲間でもあります。

半農半X・Y・Z

その後、半農半デザイナー&料理人&ダンサーの畑中亨くんの家と棚田を訪問しました。
美しい棚田に囲まれた畑中くんの家は、センスの良い家具が置かれ、どこを見ても絵になります。
かつて、自宅で南インドカレーを提供する人気店「カフェ草(so)」を営んでいましたが、近所から頼まれた棚田が増え続けたため、稲作を優先するためにカフェ営業を辞め、料理はイベント出店やケータリングにしぼりました。

仕事は他に、書籍のデザイン、里舞のダンサーと半農半X・Y・Zといくつもの生業を持ち、里山で家族と共に半農半X・Y・Zなライフスタイルを送っています。

畑中家の後は、鴨川の「西の玄関」を代表する東京から最も近い日本棚田百選の大山千枚田を見学しました。
ここは、いつ来ても気持ちが良い本当に大好きな場所です。

大山千枚田の後はSDF(里山デザインファクトリー)へ移動して昼食を取りました。
SDFとは、友人のクリスたちハッカーファームのメンバーが中心となって様々な移住者たちが運営する多目的スペースです。
昼食は畑中くんが提供してくれた棚田で育てた無農薬のプリンセスサリーというインディカ米で食べる絶品の鴨川産南インドカレーとチャイです。

肯定する力

昼食後は、「多様性のある田舎 ~なぜ、里山に外国人移住者が集まるのか~」と題して、アメリカ人の友人クリスのプレゼンです。
米海軍の軍楽隊のサックスプレイヤーとして横須賀へ来日したクリスは除隊後、東京でIT企業に勤めていましたが、2001年の世界貿易センタービルに旅客機が突っ込んだ911事件以降、この社会が根本的におかしいと疑問を持つようになりました。

そして、当時東京の1等地に暮らしていた彼は、各地のエコヴィレッジやオルタナティブコミュニティへ訪れる中で鴨川に出会い、里山へ移住しました。そして、仕事もIT からフリーランスの翻訳へ変え、人生を大きくシフトさせました。
そして、今ではクリスの友人の外国人ITエンジニアたちが続々と移住しています。
多様性を大切にするクリスたちは、外国人移住者だけで固まるのではなく、積極的に地域コミュニティに関わり、さらに移住者たちをつなげるトークイベント「安房ギャザリング」も開催しています。

クリスの次は、里山保育「わらぼっち」を主催する渡辺恵さんにプレゼンしてもらいました。
渡辺さんは若い頃、イギリスにあるシュタイナーの思想に基づいたキャンプヒル共同体で暮らしていた経験があり、また昨年は一緒にデンマークを旅し、「森のようちえん」も見てきました。
自然に寄り添った暮らしの中には、教育の本質があります。
渡辺さんはヨーロッパで学んだ経験を活かして、日本らしい「森のようちえん」を四季折々の里山暮らしを通して表現しています。

「安房ギャザリング」も「わらぼっち」も、鴨川では何か新しいコトが始まると誰も否定せず、みんな肯定し、応援する雰囲気があります。
この肯定力が、鴨川の良いところです。
最後は僕の住む釜沼北集落に来てもらい、里山や棚田を見学し、「古民家ゆうぎづか」でお話をしました。

僕は「すべての人はアーティスト」と題してプレゼンをしました。
今回のツアーで紹介した人たちは、自分の人生を「自分らしく生きる」ために鴨川へ移住してきました。
人生こそ最高の芸術であり、創造であり、いのちの表現です。
そんな移住者が多く集まる鴨川の里山は「新しいライフスタイル」のシンボルだと思っています。それはまるで「里山ゴールドラッシュ」です。
21世紀、人々は一攫千金を求めるのではなく、自然豊かな土地で、家族や友人、コミュニティを大切にし、この人生で本当に自分のやりたいことを見つけ、「自分らしく生きる」ことを求めて里山へ集まって来ます。

Photo by Yoshiki Hayashi

イベント情報

天水棚田でつくる「有機米の会」(NPOうず・無印良品共催)第5回イベント「収穫祭」

10月13日(土)「鴨川里山トラスト・有機米の会」の収穫祭を行います。
おかげさまで、今年も都会に暮らす人々とお米を育て、この美しい天水棚田を保全することができました。
自然災害が多発していますが、こうして無事にお米づくりができた奇跡に感謝して、皆さんと共にお祝いしたいと思います。
今年のお米づくりに参加された方は新米をお渡ししますので、是非いらしてください。

開催日:2018年10月13日(土)
開催時間:11:00~15:30(予定)
開催場所:千葉県鴨川市
詳しくはこちら

「鴨川里山トラスト」今後のスケジュール
有機米の会

2018年5月19日(土)第1回「田植え」
2018年6月9日(土)第2回「田の草取りとごはん茶碗づくり」
2018年7月7日(土)第3回「田の草取りとすがい縄づくり」
2018年9月8日(土)第4回「稲刈り」
2018年10月13日(土)第5回「収穫祭」
2018年12月22日(土)第6回「注連縄づくりとみかん狩り」

手づくり味噌・醤油の会

(年会費(3,000円):味噌1kg、麦醤油500ml、米醤油500ml)

2018年7月21日(土)第1回「大豆種まき」
2018年8月18日(土)第2回「大豆畑の草刈り」
2018年12月1日(土)第3回「大豆収穫」
2019年1月19日(土)第4回「大豆脱穀・選別」
2019年2月16日(土)第5回「味噌仕込み」
2019年3月16日(土)第6回「醤油しぼり

自然酒の会

(年会費(10,000円):720ml×4本)

2018年5月26日(土)第1回「田植え」
2018年6月16日(土)第2回「田の草取りとすがい縄づくり」
2018年7月14日(土)第3回「田の草取りとぐい呑みづくり」
2018年9月15日(土)第4回「稲刈り」
2018年11月17日(土)第5回「収穫祭」
2019年1月26日(土)第6回「寺田本家蔵見学」

※天候不良などによる予備日はすべてありません。

  • プロフィール 林良樹
    千葉・鴨川の里山に暮らし、「美しい村が美しい地球を創る」をテーマに、釜沼北棚田オーナー制、無印良品 鴨川里山トラスト、釜沼木炭生産組合、地域通貨あわマネーなど、人と自然、都会と田舎をつなぐ多様な活動を行っています。
    NPO法人うず 理事長
    T&T研究所 研究員

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