各国・各地で「千葉・鴨川 ─里山という「いのちの彫刻」─」
棚田の村へ入ると、まるで時計の針を戻していくように過去へとタイムトラベルしていきます。しかし、ここでの暮らしから見えるのは、過去を突き抜けた「未来の風景」です。

棚田オフィスとウッドデッキができました

2017年05月31日

今年も2017年度の「鴨川里山トラスト」がはじまりました。
例年通り、最初のイベントは「有機米の会」の田植えです。
当日はあいにくの雨となってしまいましたが、66名もの方が来てくださいました。
今年は棚田の一番上に、昨年のHOUSE VISIONで良品計画さんが展示した棚田オフィスが移築され、さらに棚田オフィスの横には能舞台のようなウッドデッキも完成しました。
このウッドデッキは、一般の参加者と良品計画さんの社員と一緒に、みんなでつくったので愛着があります。

棚田オフィスの設計は、建築家アトリエ・ワンの塚本由晴さんです。
ハーバード大学大学院建築学科の客員教授として教えていた塚本さんは、昨年アメリカから学生たちを連れて鴨川へ研修に来ました。そして、この地域に求められるデザインとは何か? を、学生たちと学び合いました。

デザインはモノだけでなくライフスタイルやコミュニティ、地域づくりや社会全体へとその領域が広がっています。後日、アメリカから学生たちの斬新でユニークなアイデアが送られてきました。

デザインが地域を変える

見晴らしの良い棚田オフィスの目の前には美しい里山や棚田や広がり、ここで仕事をしたら素晴らしいアイデアが生まれそうです。

棚田オフィスのコンセプトは、1階が農具置き場や休憩できる場となり、2階が会議やパソコンができる仕事場です。

大きなウッドデッキではお弁当を食べたり、コンサートを開いたり、景色を見ながらゆっくり休んだり、本を読んだり等々、色々な使い方ができます。

現在はIT技術の進歩により、仕事は都会にいなくても田舎でも出来るようになりました。そんな「ローカルの時代」において棚田オフィスは、都会と田舎を結び、新しい働き方のシンボルとなるでしょう。

棚田をデザインすることで新しい価値が生まれ、稲作の空間から異なる意味を持ち、人が集い、遊び、学び、楽しみ、文化芸術を創造し、仕事をつくり、地域を活性化させる多目的でクリエイティブな空間へと進化しました。

天然のコンサートホール

午前中は、棚田オフィスとウッドデッキのお披露目会として、棚田オフィスでミニコンサートを開きました。
みなさん傘をさし、レインウエアを着て、雨の中の野外コンサートとなりましたが、鋸南町在住で邦楽を代表するギタリストの千代正行さんと斎藤隆広さん、さらに世界的に活躍するフルート奏者の吉川久子さんも来てくださり、心地よいナチュラルな音楽を奏でてくれました。

里山に抱かれた棚田の地形は、古代ギリシャの円形劇場のようにすり鉢状になっているため、音が良く響きます。だから、僕はいつかこの棚田でコンサートをやりたいと願っていたので、とうとう長年の夢が叶いました。

時には強く雨が降り、揺れる木々や風の音も、カエルの鳴き声も、ギターの音色も、フルートの調べも、それらがひとつになって響きあい、里山全体がいのちのオーケストラを奏でているようでした。

雨ニモ負ケズ、風ニモ負ケズ

コンサート終了後は古民家へ戻り、「こころ」の木村夫妻が旬の恵をたっぷり使って調理してくれた昼ごはんを美味しくいただきました。

いよいよ、午後からは田植えですが、雨は降り続けていました。
このところ鴨川は雨が全く降らず日照りだったので、天水棚田にとっては嬉しい恵みの雨ですが、田植えイベントにはツライところです。
農イベントは自然現象に左右されるので、予測がつかないことがあります。
でもこんな雨の日も、農は人間の都合ではなく自然に合わせることなのだと、知ってもらえる良い機会になるのではないかと思っています。
そして、雨がやまないので急遽、僕は参加者のみなさんに提案しました。
「みなさん、雨が降っていますが、希望者の方のみ田植えをしましょう。でもこの雨なので、無理しなくて結構ですよ。田植えをしない方は古民家へ残り、長老たちとすがい縄づくりをしましょう。それでは、僕と田植えを希望する方は手を上げてください。」
驚いたことに、何組もの親子が手を上げてくれました。
雨の降る中、都会からはるばるこの里山へやって来たのですから、気合が入っています! みなさん、レインウエアを着て喜々として棚田へ来てくれました。

宮沢賢治の雨ニモ負ケズ、風ニモ負ケズのように、僕らは雨に濡れながらワイワイと田植えをしました。と言っても、この雨なので無理せず2枚の棚田だけやり、残りの田植えは後日、良品計画さんの新入社員研修でやってもらいました。

300名との田植え

ゴールデンウィークから始まった「釜沼北棚田オーナー制」の田植えには130名、その次の週末は「鴨川里山トラスト・有機米の会」の田植えに66名、その週明けには良品計画新入社員研修の田植えに80名、そして最後は「鴨川里山トラスト・自然酒の会」の田植えに17名と、5月はスタッフを入れると延べ300名近くの人と田植えを行い、毎週お祭りのような賑わいで、里山に笑顔があふれました。

今年も、「鴨川里山トラスト・有機米の会」では天水棚田でお米をつくり、「手づくり味噌・醤油の会」では地域の大豆を栽培し、その大豆で味噌と麦醤油と米醤油を仕込みます。
また、「自然酒の会」では天水棚田で育てたお米を、神崎町の蔵元寺田本家にて自然酒「天水棚田」を仕込んでもらい、今年は新しい取り組みとして釜沼の土でぐい呑み陶芸体験(安房焼き)を行い、収穫祭では自分でつくった自然酒をマイぐい呑みで乾杯します。
「手づくり味噌・醤油の会」や「自然酒の会」は、遠方の方や仕事の都合で農作業に来られない方も年間会員になっていただけると、できた味噌や醤油、自然酒をお送りしますので是非ご参加ください。

そして、この「鴨川里山トラスト」を通して里山に「みんなのふるさと」をつくり、この美しい日本の原風景を未来の世代へ手渡したいと思っています。
来月は草取りです。地元のおばあちゃんにおいしい郷土料理を作ってもらい、みなさまのお越しを心よりお待ちしています。

Photo by Shouichi Nakamura・Yoshiki Hayashi

イベント情報

天水棚田でつくる「自然酒の会」(NPOうず主催・無印良品協力)第2回「田の草取りとすがい縄づくり」

「自然酒の会」は、無農薬栽培のため除草剤を使いませんので、草取りを行います。
午前中は、稲わらを使って簡単なわら細工のすがい縄をつくります。すがい縄とは稲刈りの時に、刈り取った稲を束ねるために使う伝統的な縄です。

開催日:2017年6月17日(土)
開催時間:10:30~15:30(予定)
開催場所:千葉県鴨川市
詳しくはこちら

天水棚田でつくる「有機米の会」(NPOうず・無印良品共催)第2回「田の草取りとすがい縄づくり」

「有機米の会」は、無農薬栽培のため除草剤を使いませんので、草取りを行います。
午前中は、稲わらを使って簡単なわら細工のすがい縄をつくります。すがい縄とは稲刈りの時に、刈り取った稲を束ねるために使う伝統的な縄です。

開催日:2017年6月10日(土)
開催時間:10:30~15:30(予定)
開催場所:千葉県鴨川市
詳しくはこちら

2017年度「鴨川里山トラスト」スケジュール
有機米の会

2017年5月13日(土)第1回「田植え」
2017年6月10日(土)第2回「田の草取り」
2017年7月8日(土)第3回「田の草取りとすがい縄づくり」
2017年9月9日(土)第4回「稲刈り」
2017年10月14日(土)第5回「収穫祭」
2017年12月23日(土)第6回「注連縄づくりとみかん狩り」

手づくり味噌・醤油の会

(年会費:3,000円:できあがった味噌1kg、麦醤油500ml、米醤油500mlをお渡し)

2017年7月22日(土)第1回「大豆種まき」
2017年12月16日(土)第2回「大豆収穫」
2018年1月20日(土)第3回「大豆脱穀・選別」
2018年2月17日(土)第4回「味噌仕込み」
2018年3月17日(土)第5回「醤油しぼり」

自然酒の会

(年会費:10.000円:できあがった自然酒720mlX4本をお渡し)

2017年5月20日(土)第1回「田植え」
2017年6月17日(土)第2回「田の草取りとすがい縄づくり」
2017年7月15日(土)第3回「田の草取り・陶芸体験」
2017年9月16日(土)第4回「稲刈り」
2017年11月18日(土)第5回「収穫祭」
2018年2月4日(日)第6回「寺田本家蔵見学」

※天候不良などによる予備日はすべてありません。

  • プロフィール 林良樹
    千葉・鴨川の里山に暮らし、「美しい村が美しい地球を創る」をテーマに、釜沼北棚田オーナー制、無印良品 鴨川里山トラスト、釜沼木炭生産組合、地域通貨あわマネーなど、人と自然、都会と田舎をつなぐ多様な活動を行っています。
    NPO法人うず 理事長
    T&T研究所 研究員

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