各国・各地で「千葉・鴨川 ─里山という「いのちの彫刻」─」
棚田の村へ入ると、まるで時計の針を戻していくように過去へとタイムトラベルしていきます。しかし、ここでの暮らしから見えるのは、過去を突き抜けた「未来の風景」です。

世代交代 ~50年後この風景は残っているか~

2018年05月16日

集落の長老たちと続けてきた釜沼北棚田オーナー制度も10年目を迎え、今年から長老たちが引退し、すべての運営を引き継ぎました。
師匠のきんざさんは5年前に亡くなり、90歳を迎えたこんぴらさんは現在入院し、五一さんも瀬戸さんも80の半ばを超え、いつかこの時が来ると思っていましたが、とうとうそれが今年となりました。

逆算すると長老たちは、75才から80才の時に新しいチャレンジである「釜沼北棚田オーナー制度」を始めたのだと思うと、改めてそれはスゴイことです。

釜沼北棚田オーナー制度は、都会と田舎を結ぶ架け橋であり、地元住民と移住者と都市住民、さらに外国人をもつないでいく場であり、それは限界集落に差し込む希望の光です。

そして、農家生まれでない移住者の僕を仲間に入れてくれ、天水棚田の稲作と里山暮らしの文化、そして助け合う心を10年間、丁寧に教えてくれました。

宝物の発見

それは、決してお金では買えない貴重なものでした。
里山で長老たちに出会った時、僕は現代社会に埋もれていた宝物を発見したような気がしたのです。
その宝物が消えないうちに記録しようと、2013年にNPO法人うずの仲間たちと長老たちの知恵をまとめた「里山の教科書」をつくりました。

また、この宝物を多くの人に伝えていこうと、2012年と13年には地球とつながるワークショップ「鴨川地球生活楽校」を開催し、長老たちに里山暮らしの知恵を伝える先生になってもらいました。

持続可能な社会を創造することは、今や全人類のテーマです。
その社会へ向かうために、実は僕らの足元に多くのヒントがあると思っています。

バトンを引き継ぐ

先日、デンマークのファイユ島から来日したエネとミックと一緒に、「古民家ゆうぎつか」にて1泊2日のワークショップを行いました。
昨年、デンマークツアーで彼らのパーマカルチャー・フィールドを訪れた時、僕は鴨川の棚田の写真を見せると2人はとても感激し、突然ミックは涙を流し始めました。

「ぜひ、来てください」というと、彼らは本当に鴨川へ来てくれたのです。
この旅は彼らにとって18年ぶりの海外旅行となったそうです。
「里山xデンマーク」というキーワードに惹かれて多様な人々が集まり、ワークショップの参加者は予想をはるかに超える30名近くになりました。

起業家、デザイナー、ゲストハウスオーナー、会社員、公務員・・・その中に17才の高校生の青年がいました。
17才でこのキーワードに興味を持ったことに驚いて僕は彼に質問しました。
「どうして、ここに来ようと思ったの?」

すると、彼は透き通った目で、ゆっくりと言葉を選びながら、静かにこう話してくれた。
「学校や社会で言われている価値観に違和感をおぼえるんです。いい大学へ行き、いい会社へ入ることが幸せではないと思う。"地に足の着いた自立した暮らし"に幸せがあるのではないかと思い、ここへ来ました。」

心のアンテナを伸ばして感受性を高め、心から紡ぎだされた彼の言葉に、僕は感動しました。
エネとミックも鴨川の里山風景、伝統文化、料理、農村の美に感動してくれました。
「何もない里山風景」は、実は日本の宝であり、世界にとっても大切な価値ある場所なのです。
50年後、ここの里山風景が残っているだろうか?
1千年の時をかけ、人と自然が共創した里山という「いのちの彫刻」を僕らの時代で消滅させず、次の時代へ残せるだろうか?

それは、長老たちからバトンを受け取った僕らにかかっています。
しかし、このバトンを引き継ぐのは、これからは地元の人だけではなく、僕のような移住者も、通ってくれる都会の人も、ここが好きな外国人も、応援してくれる企業や大学も、地縁血縁を超えた新しいコミュニティが引き継いでいくのです。

そして、アメリカ先住民のことわざにあるように、この宝物を未来の子供たちへ手渡していこうと思います。

"自然は先祖から預かったものではなく、未来の子供たちから借りているだけである"
ーアメリカ先住民のことわざー

Photo by Hirono Takemoto・Yoshiki Hayashi

イベント情報

天水棚田でつくる「有機米の会」(NPOうず・無印良品共催)第2回「田の草取りと茶碗づくり」

「有機米の会」は、無農薬栽培のため除草剤を使いませんので、草取りを行います。
また、釜沼北集落の田んぼの土を使って陶芸家西山光太さんの指導による茶碗づくり(あわ焼き)も行います。

開催日:2018年6月9日(土)
開催時間:11:00~15:30(予定)
開催場所:千葉県鴨川市
詳しくはこちら

天水棚田でつくる「自然酒の会」(NPOうず主催・無印良品協力)第2回「田の草取りとすがい縄づくり」

「自然酒の会」は、無農薬栽培のため除草剤を使いませんので、草取りを行います。
また当日は、稲わらを使って簡単なわら細工のすがい縄をつくります。すがい縄とは稲刈りの時に、刈り取った稲を束ねるために使う伝統的な縄です。

開催日:2018年6月16日(土)
開催時間:11:00~15:30(予定)
開催場所:千葉県鴨川市
詳しくはこちら

「鴨川里山トラスト」今後のスケジュール
有機米の会

2018年5月19日(土)第1回「田植え」
2018年6月9日(土)第2回「田の草取りとごはん茶碗づくり」
2018年7月7日(土)第3回「田の草取りとすがい縄づくり」
2018年9月8日(土)第4回「稲刈り」
2018年10月13日(土)第5回「収穫祭」
2018年12月22日(土)第6回「注連縄づくりとみかん狩り」

手づくり味噌・醤油の会

(年会費(3,000円):味噌1kg、麦醤油500ml、米醤油500ml)

2018年7月21日(土)第1回「大豆種まき」
2018年8月18日(土)第2回「大豆畑の草刈り」
2018年12月1日(土)第3回「大豆収穫」
2019年1月19日(土)第4回「大豆脱穀・選別」
2019年2月16日(土)第5回「味噌仕込み」
2019年3月16日(土)第6回「醤油しぼり

自然酒の会

(年会費(10,000円):720ml×4本)

2018年5月26日(土)第1回「田植え」
2018年6月16日(土)第2回「田の草取りとすがい縄づくり」
2018年7月14日(土)第3回「田の草取りとぐい呑みづくり」
2018年9月15日(土)第4回「稲刈り」
2018年11月17日(土)第5回「収穫祭」
2019年1月26日(土)第6回「寺田本家蔵見学」

※天候不良などによる予備日はすべてありません。

  • プロフィール 林良樹
    千葉・鴨川の里山に暮らし、「美しい村が美しい地球を創る」をテーマに、釜沼北棚田オーナー制、無印良品 鴨川里山トラスト、釜沼木炭生産組合、地域通貨あわマネーなど、人と自然、都会と田舎をつなぐ多様な活動を行っています。
    NPO法人うず 理事長
    T&T研究所 研究員

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