MUJIキャラバン

広島から世界へ

2012年11月15日

広島に国産スニーカーブランドがあることをご存じでしょうか?

「SPINGLE MOVE(スピングルムーヴ)」

今から10年前に、広島県府中市で誕生したブランドです。

実はこのブランド、
1933年創業のゴム総合メーカー(株)ニチマンが立ち上げたものでした。

当初より、ゴム製の長靴や草履などを手掛けてきましたが、
輸入品などに押され、不況のあおりも受けて工場閉鎖の危機に。

「なんとか自社工場を残したい」という一心で、
約70年間にわたり培ってきた技術と知識を結集させ、
2002年に正式にスニーカー市場に参入したのです。

ブランド名の「SPINGLE MOVE(スピングルムーヴ)」とは、
スピンの進行形を意味し、世界に通用するシューズとして
一歩一歩らせん階段を上るように進化し続けたい、
という想いが込められていました。

すでにその技術力は海外からも評価され、
有名ファッションブランドとのコラボ商品も生まれていっています。

特筆すべきは、その製法です。

1839年にアメリカで開発された、
最も歴史のあるスニーカーの基本製法「バルカナイズ製法」。

アッパーとソール部分を別々に作り接着する
「セメンティング製法(写真左)」と比べ、
「バルカナイズ製法」で作られたもの(写真右)は、
アッパーとソールが密着している印象です。

この製法は、基本的に多くの工程を手作業で行うため、
生産効率の問題で、現在、国内工場はほとんど残っていないんだとか。

たまたまバルカナイズ製法で作られた靴が
加硫缶から出されるタイミングを拝見することができました。

「シュオーーーー!!」
という蒸気を発しながら開いた缶の中からは、

宙吊りのスニーカーが!
できたてほやほやのスニーカーに遭遇する機会はなかなかありません。

硫黄を混ぜたゴム材を加硫缶で加熱することで、
弾力のあるゴムに変わるんだそうです。

アッパー部分には創業当時、日本では珍しかったレザーが多用されています。

代表格のカンガルーをはじめ、牛、馬、豚、ラクダ、ゴート(ヤギ)、
シープ(羊)、クロコダイル、パイソン(ヘビ)、リザード(トカゲ)など、
実に様々なレザーが使用されてきましたが、
このバルカナイズ製法の加熱に耐えられる革を探すのは至難だそう。

これまでには、県内の尾道帆布を使用した布製靴など、
多種多様な素材・企業とのコラボレーションを実現していっています。

こうして生み出されるSPINGLE MOVEスニーカーは、
イタリアやアメリカの展示会でも高い評価を受け、海外へも展開し始めています。
おかげで現在では工場も朝から晩までフル稼働だそう。

生産者の持田さんは、
スニーカーづくりに対する想いをこう語ります。

「"安く仕上げよう"ではなく"より良いものを作ろう"。
これが、日本のものづくりに対する姿勢ではないでしょうか。
履き心地を追求して、細部にまでこだわっていきたい」

一度は閉鎖の危機に見舞われた日本の工場が、
想いと技術を結集させて蘇り、世界を席巻し始めています。

  • プロフィール MUJIキャラバン隊
    長谷川浩史・梨紗
    世界一周の旅をした経験をもつ夫婦が、今度は日本一周の旅に出ました。
    www.cool-boom.jp
    kurashisa.co.jp

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