MUJIキャラバン

刺し子の美しさ

2012年06月06日

「刺し子(さしこ)」は、手芸のひとつで、
布地に糸で幾何学模様などの図柄を縫いこんでいった、伝統的な刺繍です。

これらの小物はすべて刺し子。

なかでも、岐阜県高山市で出会った、飛騨の刺し子は
糸を玉どめしないため、裏の模様も綺麗に出て、
リバーシブルで楽しめるんだそう。

「刺し子は布を丈夫にするので、何十年も使えるんですよ。
傷んだところは、そこだけまた布を変えて刺していけば直せますしね」

そう教えてくださったのは、職人歴30年の池田さん。

模様を楽しむためのものかと思っていましたが、
昔は質のよい布が簡単に手に入らなかったために、
木綿や麻の布に補強をしたのが始まりなんだとか。

そうすることで、当時貴重品だった布を長く使い続けることができ、
また布を重ねて刺していくので、保温性もあるといいます。

橋がなかったその昔、荷物や人を運ぶ仕事をしていた人の足袋は、
川の中ですべらないように、刺し子が使われたそう。

また、こたつの下掛けとしても使われました。
熱を逃がさず、焦げに耐え、
こたつ布団がすべり落ちるのを防いだそうです。

私たちの身近なところだと、柔道着や剣道着にも
使われているそうですよ。

それから、気になったのが幾何学模様。
これには何かの意味があるのでしょうか?

池田さんに尋ねてみると、面白いお話を聞くことができました!
模様には、各々意味があるそうなのです。

〈麻の葉:あさのは〉

この基本模様は麻の葉をデザインしたもので、
着物や和小物などにもよく使われています。

麻の葉はもともと魔よけの効果があり、
すくすくと真っ直ぐに、さらには強く丈夫に成長する特徴があることから、
親が子に「早く元気に育ってほしい」と
赤ちゃんのための肌着や産着などに用いられました。

〈青海波:せいがいは〉

これは、どこまでも広がる大海原に
いつまでもくり返される穏やかな波のごとく、平穏なくらしが続くように
という願いが込められているといいます。

そういえば、この模様は端午の節句の鯉のぼりにも見ることができますね!

〈七宝:しっぽう〉

こちらは、無限に連鎖する輪が、平和や豊かさと円満を象徴しているそう。

池田さんの言葉を借りると、
刺し子は、"生活の中に存在する美術"だそうです。

取材後にそうTwitterでつぶやくとこんな感想をいただきました。

「刺し子って、長く連れ添う伴侶のようですね」

とてもしっくりくる表現でした。

現代の私たちの周りには、モノがあふれていて
さらにそれが低価格で手に入る環境があり、
ひとつのモノを長く使い続けるより、
ダメになったら新しいモノを買う…
そんなサイクルになっているかもしれません。

刺し子は、使っていくほどに風合いが出てきて、
傷んだらまた直して使い続けられる。

まさに生涯の付き合いになる、伴侶のようですね。
エコの語源は、ギリシャ語の家族にあることを思い出しました。

  • プロフィール MUJIキャラバン隊
    長谷川浩史・梨紗
    世界一周の旅をした経験をもつ夫婦が、今度は日本一周の旅に出ました。
    www.cool-boom.jp
    kurashisa.co.jp

最新の記事一覧

カテゴリー