MUJIキャラバン

MADE IN SEKI

2012年06月05日

突然ですが、問題です。
以下の3つの言い回しに共通することって何でしょう?

「相づちを打つ」
「反りが合わない」
「付け焼き刃」

その答えは、岐阜県中部の関(せき)市にありました。

関は、日本はもちろん、世界各国へ輸出されている「刃物」の産地。
そう、先ほどの3つの言い回しはいずれも、その語源が"刀"に関連するものです。

「相づちを打つ」→鍛冶(かじ)が刀を鍛えるとき、
師が槌を打つ合間に弟子が槌を打つことからできた言葉。

「反りが合わない」→「反り」とは刀の峰の反りのことであり、
刀身と鞘(さや)の峰の反りが合っていないと刀身は鞘に収まらないことから、
これを人間関係にたとえた表現。

「付け焼き刃」→切れ味のよくない刀に鋼(はがね)の焼き刃を付け足したものをいい、
鋼を足しただけのものはすぐに切れなくなり、
使い物にならなくなってしまうことからきた言葉。

今から約780年前の鎌倉時代、初めて関で日本刀がつくられました。
関には、刀づくりに必要な良質の土と松炭、長良川と津保川の水があったので、
刀匠(とうしょう)が多く集まるようになったそうです。

明治9年に廃刀令が布かれ、刀の需要はなくなります。
しかし関では、その技術を家庭用刃物の生産に転用し、
刃物の街として発展をしていきました。

家庭用刃物といえば、包丁、ナイフ、はさみ、カミソリ、爪切り…
私たちの身の回りに刃物ってたくさんありますね。

今回は、はさみを中心とした刃物メーカーの
「長谷川刃物」さんを訪ねました。

まず、はさみの製造現場を見せていただくと…

1枚1枚の刃を何度も何度も磨かれていました。

さらに刃の噛み合わせをよくするために
その隙間の空き具合を目視でチェックし、

ひとつひとつ手で調整していきます。

正直、こんなにも手作業ではさみがつくられているとは驚きでした。

続いて、ショールルームにご案内いただくと、はさみがズラリ。

同じはさみでも、事務用、手芸用、園芸用…
とそれぞれ用途によって刃のつくりが違うんだそう。

「事務用のはさみで、テープを切った後に
ベタベタして切れにくくなったことってありませんか?」

あります、あります、そういうこと。
そんな時のために刃に樹脂が塗られベタつかないはさみがあり、

「リサイクルのために牛乳パックを切る時って、
まっすぐのはさみだと手が当たってしまうんです。
このはさみだとスムーズに切れますよ」

確かに!
刃の先が牛乳パックの角にちょうど合うように
設計されているはさみもありました。

長谷川刃物さんでは、お客様の声をもとに
こうした"使い勝手のよい"はさみを開発しているそうです。

さらには"できるだけ多くの人が利用可能であるように"
ユニバーサルデザインへの取り組みもされています。

このカスタ(左)とネイル(右)は
関養護学校の生徒さんと一緒に、考え出した商品。

握力の弱い人でも使いやすく、
はさみは刃の部分にカバーがついていて安心、
また、どちらも切るたびにカチカチと音が響きます。

「価格では中国をはじめとしたアジア諸国に負けてしまうかもしれませんが、
使いやすさや"こんなものがあったらいいな"
というアイデアは負けませんよ!」

案内してくださった長谷川さんはそう、笑顔でおっしゃっいました。

生産の4割以上が世界各国で使われている、関の刃物。
「MADE IN SEKI」を通して、日本の文化を知る人もいるのかもしれません。

  • プロフィール MUJIキャラバン隊
    長谷川浩史・梨紗
    世界一周の旅をした経験をもつ夫婦が、今度は日本一周の旅に出ました。
    www.cool-boom.jp
    kurashisa.co.jp

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