MUJIキャラバン

こぎん刺し

2012年07月18日

「こぎん刺し」は青森県津軽地方に伝わる刺し子です。
津軽地方では、作業着のことをこぎん(小布)と呼び、
作業着には糸の刺繍(刺し子)がされていたため、この名前がついたようです。

刺し子は、以前、岐阜県の「飛騨刺し子」も取材していたので、
地域による違いも気になり、弘前こぎん研究所を訪れました。

刺し子は補強・保温が目的で生まれたもので、
津軽の厳しい自然条件と、当時の藩政が関係していたそうです。

北国、津軽では綿の栽培が困難なために
一般に使用される衣服の多くは麻布でできていました。

麻は繊維が粗く、夏には風通しがよくて涼しく丁度よいのですが、
冬は津軽地方の冬の寒さを防ぐことができませんでした。
そのため、麻の糸で布目を埋めていき、木綿の糸が手に入るようになると
女性たちが競うように刺繍をして、暖かい空気を服の中にとどめたといいます。

同じこぎん刺しでも地域によって、模様は異なるようです。

これは岩木山の麓の地域に多く見られた"西こぎん"で
山に入って重い荷物を背負う林業が盛んだったために、
肩部分に縞(しま)模様があるのが特徴。

また、飛騨刺し子と比べて見ると、その違いは明白です。

こぎん刺し(上)と飛騨刺し子(下)、
こぎん刺しの方が布全体にぎっしり模様がつまっているのが分かります。

手で触ってみると、刺し子部分は布の厚さが3倍くらいに
感じられるほど、しっかりしています。
そして、その理由は作業を見ると分かりました。

こぎん刺しは、麻布の縦糸を数えながら
拾っていくように奇数の目を刺していくのです。

一方、飛騨刺し子の場合は、図案を布に写し、
線に沿って波縫いをしていました。

実際に私たちもこぎん刺しを体験してみました。

模様の図案を見ながら、ひとつひとつ刺していきます。

麻布の目が見えますか?
この縦糸を数えながら横縫いをしていくのです。
素人の私たちは図案が頭に入っていないので、
さらに図案の升目も数えながら行い、
かなりの集中力と根気がいる作業だということが分かりました。

だけど、徐々に模様が見えてくるのが楽しい!
これ、意外とハマりそうな作業です。
ジグソーパズルを完成させた時の達成感に似ているかも。

こぎん刺し歴30年の先生も
「出来上がった時は毎回『やったぁ!』って思いますよ」
とおっしゃっていましたよ。

「こぎん刺しは売り物じゃなくて、自分たちのために作ったものだから
大事に大事に使って、とっておいたんでしょう。
こうして昔の人たちが残してくれたこの技術を、
私たちには必ず次に伝えていく使命があります」

と、弘前こぎん研究所の成田社長。

最近はこぎん刺しの小物や、

はぎれ布を使ったくるみボタンなども作られています。

これはかわいい☆
シンプルな服やアクセサリーにしても、お洒落ですよね!
私は愛用中の無印良品の帽子につけてみました。

布の補強・保温だけであれば、上記の"西こぎん"に見られるような
縞模様だけで事足りたように思うのですが、
300種類以上の模様があるというこぎん刺しは、
女性の美意識が生んだものだと感じました。

美しく着飾りたいと思う感覚は、昔も今も変わらないのですね。

  • プロフィール MUJIキャラバン隊
    長谷川浩史・梨紗
    世界一周の旅をした経験をもつ夫婦が、今度は日本一周の旅に出ました。
    www.cool-boom.jp
    kurashisa.co.jp

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