各国・各地で「千葉・鴨川 ─里山という「いのちの彫刻」─」
棚田の村へ入ると、まるで時計の針を戻していくように過去へとタイムトラベルしていきます。しかし、ここでの暮らしから見えるのは、過去を突き抜けた「未来の風景」です。

しめ縄飾りワークショップ

2017年02月01日

2017年の新年も釜沼集落の稲わらでつくったしめ縄飾りで迎えました。
昨年の12月は、東京の無印良品有楽町店で2日間4回、吉祥寺店で1回、鴨川では棚田オーナー制度で1回、鴨川里山トラスト・有機米の会で1回、合計7回もワークショップを行い、延べ100名以上の方としめ縄飾りをつくりました。

毎年恒例となっている有楽町店のワークショップでは、長老たちや友人の畑中くんと泊まりがけで行き、参加者の方たちと2日間楽しい時間を過ごしました。そして、鴨川里山トラスト・有機米の会では、料理家の米山美穂さんにおいしい里山ごはんをつくって頂き、みかん狩りも楽しみました。
さらに無印良品は昨年から東京と鴨川のみならず、大阪、山梨、福岡、宮城、岡山、愛知など全国の店舗で各地域の稲わらを使い、それぞれの伝統的なしめ縄飾りワークショップを開催し、とても盛況だったそうです。
昨年は日本各地で、大勢の人がしめ縄飾りを自作して、新年を迎えたことでしょう。

暮らしのリズム

長老に聞くところによると、かつては年末になると父親が、稲刈り後に保管しておいた一番きれいな稲わらでしめ縄飾りをつくり、新年を迎える準備をしたそうです。
100年前は90%が農民だった日本では、どこでも当たり前に行われていた風習だったのですが、今では農村でさえしめ縄飾りをつくる人はごくわずかとなりました。

鴨川へ移住する前、僕は稲すら触ったこともありませんでしたが、お米をつくるようになった今では毎年しめ縄飾りをつくるようになりました。
無事に稲刈りを終えて1年の締めくくりに、感謝と祈願を込めてつくるしめ縄飾りは、瑞穂の国の人々にとって大切な「暮らしのリズム」なのだと、お米をつくるようになってから実感するようになりました。

Photo by Shinsui Ohara

笑顔の伝播

僕の暮らす大山地域の伝統的なしめ縄飾りは、大きく立派なもので農家の大きな玄関にはとても良く似合います。

でも、現代の家には大きすぎますし、ビギナーがつくるには1日もかかるので、僕らがお伝えしているのは伝統的なしめ縄飾りではなく、友人の畑中くんが考案した2~3時間で完成する小さなしめ縄飾りです。

ほとんどの参加者はしめ縄飾りをつくるのが初めてなので、みなさん最初は私にできるかな〜と不安な面持ちですが、段々と形になってくると目が輝いていくのがわかります。
そして、しめ縄飾りが完成すると満面の笑みとなり、その喜びが僕らにも伝播し、その場が笑顔で明るく照らされます。

完成したしめ縄飾りを手にしている笑顔を見ていると、何でも買える時代だからこそ、自分の手でつくる体験に価値があるのだと思います。
こうやって手仕事を通してお米の文化が日本中に広がっていくことは、近年の稲作をとりまく厳しい状況の中で、とてもうれしく思います。

Photo by Hirono Masuda

イベント情報

「鴨川里山トラスト・手づくり味噌の会(2016年度)」イベント「味噌仕込み」

みなさんと一緒に育てた無農薬の地大豆、地元の嶺岡山系の水、そして釜沼の有機米でつくった麹で、おいしい手づくり味噌を仕込みます。

開催日:2017年2月18日(土)
開催時間:10:30~15:30(予定)
開催場所:千葉県鴨川市
→詳しくはこちら

  • プロフィール 林良樹
    千葉・鴨川の里山に暮らし、「美しい村が美しい地球を創る」をテーマに、釜沼北棚田オーナー制、無印良品 鴨川里山トラスト、釜沼木炭生産組合、地域通貨あわマネーなど、人と自然、都会と田舎をつなぐ多様な活動を行っています。
    NPO法人うず 理事長

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