各国・各地で「千葉・鴨川 ─里山という「いのちの彫刻」─」
棚田の村へ入ると、まるで時計の針を戻していくように過去へとタイムトラベルしていきます。しかし、ここでの暮らしから見えるのは、過去を突き抜けた「未来の風景」です。

文明への防波堤

2018年01月17日

鴨川里山トラストでは、春の田植えから始まり、夏の草取り、秋の稲刈り、そして収穫祭を終え、1年の締めくくりにその年の最も綺麗な稲わらでしめ縄飾りを作って新年を迎えます。
里山に暮らすようになって、1年365日8760時間という「時」が過ぎることを伝えてくれるのは、時計でもなくカレンダーでもなく、冷たく澄んだ冬の空気と、紅葉した楓の葉と、水仙の甘い香りと、しめ縄飾りを綯う手の感触などの"暮らしのリズム"です。

12月23日土曜日の鴨川里山トラスト「有機米の会」のしめ縄飾りとみかん狩りには、スタッフを含めると70名以上もの方が集ってくれました。
昨年から全国の無印良品の店舗でも、各地域の伝統的なしめ縄飾りワークショップを行っており、僕も鴨川の他に無印良品有楽町店と木更津店でもしめ縄飾りワークショップを行いましたが、すぐに定員に達するほど大人気のイベントとなっています。

ありがたいことに参加者の中には昨年、仙台の無印良品の店舗で参加した方が、東京に引っ越してきたので有楽町店のワークショップに参加しましたという方もいました。
参加者には親子連れ、祖母と孫、若いカップル、友人同士、会社の仲間等々、年齢層はとても幅広いです。

天空の舞台にて

講師陣には、しめ縄飾りをデザインしてくれて友人の畑中亨くんと釜沼北集落の長老たち、こんぴらさん、じいたさん、ごいちさんと"里山オールスター"です。
今回は参加人数が多かったので、ワークショップは棚田のウッドデッキで行いました。

この日は天候に恵まれ春のような暖かさで、最高に気持ちいいワークショップとなり、見晴らしの良い棚田のウッドデッキは、まるで"天空の舞台"のようでした。

毎年参加してくれるリピーターの方もはじめての方も、みんな真剣に稲わらを綯っていきます。
そして、だんだん稲わらが綯われていく美しさに、みんなの目が輝きはじめます。

午前中は「輪飾り」の部分までつくり、里山創作和食「心」の木村夫妻が用意してくれた美味しいお昼ごはんを食べに古民家へ戻りました。

午後からは「輪飾り」に「下がり」を差し込み、紙垂、稲穂、南天の実や葉などを飾りつけて完成させました。

「わ~い、できた!これで良い年を迎えられるね。」と、参加者のみなさんは自分で作った世界でひとつのしめ縄飾りに満面の笑みです。毎年思うのですが、完成した時の達成感と喜びがみんなに伝播し、ワークショップが終わるとその場がハッピーな空気に包まれます。

その後は、棚田の周りにある段々畑のみかん畑で、食べ放題のみかん狩りを楽しんでもらいました。
「いつか、ここに来たいと思っていたので、やっと来れました。普段はイギリスに住んでいるのですが、今回はタイミングが合い、念願かなって家族全員で参加できて良かったです。」
みかん狩りの時、あるご家族が僕に話しかけてくれたことは"地縁血縁を超えたふるさと"を作りたいと願っている僕にとって最高に嬉しい言葉でした。

天地が刻むリズム

民藝運動の父である柳宗悦さんの思想について、輪島に暮らす漆師の赤木明登さんはこう表現しています。
「柳さんは、農村で天地が刻むリズムとともに産まれ、生きて、死んでいった人々が、その土地の内部でつくりあげてきた暮らしの道具に自然の摂理に導かれた美を発見した。明治期に近代化が始まって、大地から人々が離床し、農民が労働者となり、手工藝品が工業製品に取って代わられていく一方、近代化された自我は、手工藝品を美術という表現の手段にしてしまった。その渦中で、民藝運動は、失われていくもの、崩れ去ろうとするものを少しでも留めておこうとする防波堤となろうとした。」
(季刊誌「住む。」2018 Winter 「名前のない道 『二十一世紀民藝』/赤木明登」より)

今時どこでも買えるしめ縄飾りをあえてわざわざ手づくりすることは、近代化によって失ってしまった「天地が刻むリズム」を少しでも自分の内なる野生に取り戻そうと、"文明への防波堤"になっているのかもしれません。

多くの人がしめ縄飾りづくりを楽しむ姿を見て、どんなにテクノロジーが発達しても、人は手仕事を愛するのだと思いました。

Photo by Shouichi Nakamura・Yoshiki Hayashi

イベント情報

天水棚田でつくる「自然酒の会」(NPOうず主催・無印良品協力)第6回イベント「寺田本家蔵見学」

今期最後の「自然酒の会」は、蔵元寺田本家への蔵見学です。

開催日:2018年2月4日(日)
開催時間:11:00~15:30(予定)
開催場所:(株)寺田本家(千葉県神崎町)
詳しくはこちら

「手づくり味噌・醤油の会」(NPOうず主催・無印良品協力)第4回「味噌仕込み」」

第4回は、「味噌仕込み」をおこないます。

開催日:2018年2月17日(土)
開催時間:10:30~15:30(予定)
開催場所:千葉県鴨川市
詳しくはこちら

「鴨川里山トラスト」今後のスケジュール
有機米の会

2017年5月13日(土)第1回「田植え」
2017年6月10日(土)第2回「田の草取り」
2017年7月8日(土)第3回「田の草取りとすがい縄づくり」
2017年9月9日(土)第4回「稲刈り」
2017年10月14日(土)第5回「収穫祭」
2017年12月23日(土)第6回「注連縄づくりとみかん狩り」

手づくり味噌・醤油の会

(年会費:3,000円:できあがった味噌1kg、麦醤油500ml、米醤油500mlをお渡し)

2017年7月22日(土)第1回「大豆種まき」
2017年12月16日(土)第2回「大豆収穫」
2018年1月20日(土)第3回「大豆脱穀・選別」
2018年2月17日(土)第4回「味噌仕込み」
2018年3月17日(土)第5回「醤油しぼり」

自然酒の会

(年会費:10.000円:できあがった自然酒720mlX4本をお渡し)

2017年5月20日(土)第1回「田植え」
2017年6月17日(土)第2回「田の草取りとすがい縄づくり」
2017年7月15日(土)第3回「田の草取り・陶芸体験」
2017年9月16日(土)第4回「稲刈り」
2017年11月18日(土)第5回「収穫祭」
2018年2月4日(日)第6回「寺田本家蔵見学」

※天候不良などによる予備日はすべてありません。

  • プロフィール 林良樹
    千葉・鴨川の里山に暮らし、「美しい村が美しい地球を創る」をテーマに、釜沼北棚田オーナー制、無印良品 鴨川里山トラスト、釜沼木炭生産組合、地域通貨あわマネーなど、人と自然、都会と田舎をつなぐ多様な活動を行っています。
    NPO法人うず 理事長
    T&T研究所 研究員

最新の記事一覧