各国・各地で「千葉・鴨川 ─里山という「いのちの彫刻」─」
棚田の村へ入ると、まるで時計の針を戻していくように過去へとタイムトラベルしていきます。しかし、ここでの暮らしから見えるのは、過去を突き抜けた「未来の風景」です。

人類最高のクリエイション

2017年08月23日

鴨川里山トラスト「手づくり味噌・醤油の会」では、会員のみなさんと種蒔きから一緒に地大豆を育て、その大豆で味噌と醤油をつくります。
7月のある日、大豆の種蒔き準備のためにトラクターで畑を耕していると背中に熱い視線を感じ、振り向くと畑まわりの電線にとまっている数羽の鳩が僕のことを、じっと見つめていました。今年もおいしい豆が食べられそうだと、鳩たちは相談しているに違いありません。
実は昨年の種蒔き後、発芽した大豆を鳩に半分以上も食べられてしまったので、大豆畑は「鳩のレストラン」になってしまったのです。
鳩にとって、僕はまるでレストラン開店前のコックのようです。
今年は食べられないように工夫しようと心に誓いながら、鳩が見つめる中で僕は畑の準備をしていました。

7月22日土曜日、都会から「手づくり味噌・醤油の会」の会員さんが大豆の種蒔きに来てくれました。午前中は、醤油のために仕込んでいる醪(もろみ)の「天地返し」といって、大きな樽の中で熟成させている醪をまんべんなく混ぜ合わせました。

この作業を毎月繰り返し、約1年間後の来年の3月に熟成させた醪を搾って醤油をつくります。
通常、醤油は麦麹で醪を仕込みますが、鴨川里山トラストでは米麹でも醪を仕込み、2種類の醤油を搾ります。
コクのある麦醤油とさわやかな米醤油の2種類の味を料理や食事によって使い分け、それぞれの醤油を楽しみたいと思います。

分かち合う文化

午後、大豆の種を蒔くため畑へ行くと丁度まわりの田んぼの稲穂には、小さな白い可憐な花が咲き、スックと伸びた稲の葉が眩しい夏の日差しを受け、里山を清々しい緑に染めていました。夏の里山風景は、ゴッホのアルル時代の色彩を感じさせます。

畑に到着すると、まずは紐を張り、その紐に沿って三角ホウで種蒔き用の溝を掘っていきます。

その後、3粒ずつ大豆の種を蒔き、レーキで土をかぶせていきます。

そして最後に今年は鳥よけ対策として、種蒔き後に紐を張り巡らせます。
この作業をみんなで手分けして行いました。
うれしいことに子供たちが喜々として作業してくれます。

途中、長老のこんぴらさんが大豆畑の隣でつくっているスイカを冷やして持ってきてくれました。
「おお~い! いっぷくすっぺ~! みんな、スイカを食べてくらっしぇ~よ!」
と、まるで里山のトム・ソーヤーのように、元気一杯です。

そして、食べきれない程の沢山のスイカを持ってきてくれました。
「ほら、もっと食いんしゃい」
と何度も勧められて、みなさんお腹いっぱいにスイカをいただきました。

我が家の冷蔵庫にも、こんぴらさんからもらったスイカで一杯です。
物のなかった時代を生きて来た長老のこんぴらさんは、自分の食べる分以上の種を蒔き、収穫できると集落の人々に配ります。
農村に暮らしていると、近所の方から旬の野菜や料理を良くいただき、ここには分かち合う文化が色濃く残っています。

平和を噛みしめる

種蒔きから数日後、ちょうど良いタイミングで雨が降り、大豆の芽が出始めました。
しばらくすると、発芽した大豆を食べに鳩が畑に舞い降りているぞ、村人から連絡がありました。
急いで畑へ行くと、なんと6~7羽の鳩が大豆をつついているではないか!
よく見ると賢い鳩は紐をくぐって、発芽した大豆の双葉を食べていたのです。
僕は慌てて、鳥よけの紐の高さを低くして、鳩がくぐれないように調整しました。

少しは食べてもいいのだけど、半分以上も食べられては困るので、これでしばらく様子見です。
それから、每日のように大豆畑へ行っては、鳩を見かけると追い払いました。
今年は、「鳩のレストラン」にならないように大豆を育てようと思います。

丁度このブログを書いている日は、8月6日から9日でした。72年前、広島と長崎に原子爆弾が投下され、一瞬にして十数万人の生命が奪われた日です。

大戦中は、徴兵制により村から大人の男がみんないなくなり、多くは帰らなかったと戦争体験者の長老から聞きました。
男手のいない農村は、さぞかし大変だったでしょう。
こうやって僕が平和に大豆を育てることができる日常とは、戦争体験者にとって実は当たり前ではないのです。
畑で発芽した大豆を見ながら僕は、平和こそ人類最高のクリエンションだと、つくづく思いました。

Photo by Mebuki Nagasawa・Yoshiki Hayashi

イベント情報

天水棚田でつくる「有機米の会」(NPOうず・無印良品共催)第4回イベント「稲刈り」

「有機米の会」第4回イベントは、いよいよ「稲刈り」です。
刈り取った稲は、以前つくった「すがい縄」でくくり、「はざかけ」という竹を組んだ伝統的な天日干しを行います。

開催日:2017年9月9日(土)
開催時間:10:30~15:30(予定)
開催場所:千葉県鴨川市
詳しくはこちら

天水棚田でつくる「自然酒の会」(NPOうず主催・無印良品協力)第4回イベント「稲刈り」

「自然酒の会」第4回イベントは、いよいよ「稲刈り」です。
刈り取った稲は、以前つくった「すがい縄」でくくり、「はざかけ」という竹を組んだ伝統的な天日干しを行います。

開催日:2017年9月16日(土)
開催時間:10:00~15:30(予定)
開催場所:千葉県鴨川市
詳しくはこちら

2017年度「鴨川里山トラスト」スケジュール
有機米の会

2017年5月13日(土)第1回「田植え」
2017年6月10日(土)第2回「田の草取り」
2017年7月8日(土)第3回「田の草取りとすがい縄づくり」
2017年9月9日(土)第4回「稲刈り」
2017年10月14日(土)第5回「収穫祭」
2017年12月23日(土)第6回「注連縄づくりとみかん狩り」

手づくり味噌・醤油の会

(年会費:3,000円:できあがった味噌1kg、麦醤油500ml、米醤油500mlをお渡し)

2017年7月22日(土)第1回「大豆種まき」
2017年12月16日(土)第2回「大豆収穫」
2018年1月20日(土)第3回「大豆脱穀・選別」
2018年2月17日(土)第4回「味噌仕込み」
2018年3月17日(土)第5回「醤油しぼり」

自然酒の会

(年会費:10.000円:できあがった自然酒720mlX4本をお渡し)

2017年5月20日(土)第1回「田植え」
2017年6月17日(土)第2回「田の草取りとすがい縄づくり」
2017年7月15日(土)第3回「田の草取り・陶芸体験」
2017年9月16日(土)第4回「稲刈り」
2017年11月18日(土)第5回「収穫祭」
2018年2月4日(日)第6回「寺田本家蔵見学」

※天候不良などによる予備日はすべてありません。

  • プロフィール 林良樹
    千葉・鴨川の里山に暮らし、「美しい村が美しい地球を創る」をテーマに、釜沼北棚田オーナー制、無印良品 鴨川里山トラスト、釜沼木炭生産組合、地域通貨あわマネーなど、人と自然、都会と田舎をつなぐ多様な活動を行っています。
    NPO法人うず 理事長
    T&T研究所 研究員

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