MUJIキャラバン

栃木の職人魂にふれる

2012年05月03日

栃木は京都に次いで伝統工芸品の数が多いそうです。

徳川家康公を祀る日光東照宮の建立のために、
日本全国から集められた優秀な棟梁たちが、その後定住したため、
手先の器用な人たちが多かったことが、一つの要因といわれています。

今回はそんな伝統工芸品を作る職人を訪ねました。

まずは、着物でも最高級品として知られる、結城紬。

結城紬というと、茨城県の結城市を想像しますが、
実際は、結城市から栃木県の小山市、
茨城県下妻市にかけた一帯が産地となっています。

この地域は、昔から養蚕業が盛んで、
1本1本の糸を繭から紡いで作られる紬は、本当に軽くて柔らかいんです。

真綿絹を原料に、地機を使い、人によって織られるその代物は、
2010年、ユネスコの無形文化遺産に登録されました。

「1mmでも模様がズレると、金額に雲泥のような差が出るのが結城紬。
使い心地の良さは変わらないんですけどね」

紬の染め職人の大久保さんから発せられた言葉からは、
作り手としての職人魂と、使い手としての気持ちの両面を感じました。

職人気質で、芸術的な技術を見せてくださったのが、
日光市でお会いした木地師の鈴木さん。

鈴木さんの手にかかれば、みるみるうちに
大きな丸太も生活雑貨へと形を変えていきます。

中にはこんなものまで。

この形の急須を、いっさい接着することなく作りだすのですから、
その技術力は相当なものです。

「私は、言われた通りのものを作りだすことはできるんですけどね。
アイデアをひねり出すのは苦手なんですよ」

こうした技術を生かすのは、
新しい時代にどのようにそれを活用していくか。
そのアイデアが重要なのかもしれません。

日光下駄職人の山本さんは、
伝統工芸を今の時代にアレンジする職人でした。

江戸時代、格式を重んじる寺社では、
社内参入の際、草履を履くことが原則でしたが、
日光エリアでは石や雪、また坂道も多く草履では不便だったため、
草履の下に木の下駄をつけた御免下駄(日光下駄の原型)が考案されました。

その履きやすさゆえに、明治中期には広く一般にも普及したようです。

山本さんは、この日光下駄を、現代においても普段使いしやすいように、
ソールに改良を加えるなど、さらに進化させています。

実際履いてみると、その履き心地の良さに納得。

草履部分の竹皮の清涼感と、鼻緒のフィット感は、
ゴムサンダルよりも気持ちが良い感覚です。

「結局はお客さんに良いと思ってもらわなければ、
伝統工芸品とはいえ、意味がないからね」

伝統を守る立場ながらも、その柔軟な姿勢には、驚きを隠せませんでした。

実際、こうした技術を目の当たりにすると、
伝統工芸は守るべき文化だと素直に感じます。
しかし、今日の生活スタイルの変化によって、
日常生活の中で取り入れられるものと、取り入れられないものがあります。

伝統工芸を今後も残すためには、時代のニーズに合わせて、
その技術の活用方法を変化させるなど、様々なヒントはあるはずです。

  • プロフィール MUJIキャラバン隊
    長谷川浩史・梨紗
    世界一周の旅をした経験をもつ夫婦が、今度は日本一周の旅に出ました。
    www.cool-boom.jp
    kurashisa.co.jp

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