MUJIキャラバン

別府のいいものみつけた

2012年09月05日

大分県別府市。

市内各地で温泉が湧出し、源泉数は2800ヵ所以上。
日本の総源泉数の約10分の1を占めるんだそうです!

別府では、温泉に浸かるのはもちろんのこと、
温泉から噴出する蒸気熱を利用した「地獄蒸し料理」を
楽しめる場所もあります。

温泉地だからこそのアクティビティですね。
でも、この「地獄蒸し」は観光目的に作られたわけではなく、
昔から湯治目的で温泉に長期滞在している宿泊客が自炊に使っているものだそう。

別府は明治から昭和の初期にかけて、観光地として栄えました。
しかし、その後、観光客の数は伸び悩み、
新しい観光振興のあり方が課題となっていました。

そんななか、16年ほど前から民間と市が一緒になり
地域を見つめ直していく動きが始まりました。

今回私たちが取材したのは、2005年に発足し、
町とアートのつなぎ手として活動を続ける「BEPPU PROJECT」。

2009年に別府現代芸術フェスティバル「混浴温泉世界」を実施し、
現在は同フェスティバル2012の開催準備の真っ最中です。

他にも、中心市街地の活性化を目的に
空き家をリノベーションして、様々な取り組みがなされています。

駅のプラットフォームのように、多くの人が集い交流し、
別府のまちがいきいきとした活動の場となることを目指して作られた
8ヵ所の「platform」があり、そのうちの4スペースの運営を担っているそう。

例えば、築100年のこの長屋はplatform04。
別府の工芸品やアート作品を扱うセレクトショップとして営業しています。

店内にはおもわず手に取ってしまいたくなる、
洗練されたグッズの数々が並んでいました。

この「SELECT BEPPU」店主の宮川さんは、東京都出身。
学生時代に参加した都市デザインプロジェクトをきっかけに別府を訪れ、
大学卒業後、別府に移り住んだといいます。

「別府には面白い人がたくさんいて、
東京ではお金を払って会うようなアーティストさんが
ふらっとお店に来たりするんです」

興奮気味に話す彼女に勧められて、商品の制作現場を訪れました。

商店街の一角にある、platform07「別府竹細工職人工房」では
竹細工職人さんたちが実際に作業している様子を
目の前で見ることができました。

別府竹細工の歴史もやはり温泉とともに歩んできました。
湯治客が滞在中の自炊のために使用するザルなどの竹製生活用品から始まり、
その後お土産品としての市場が拡大し、地場産業として定着したのです。

別府市には全国で唯一の竹細工の訓練学校があり、
全国から竹細工を学びたい人が集まってきているそう。

大阪府出身の竹職人の清水さんもその一人。
大学卒業後、訓練学校で竹細工を学び、そのまま別府の町に住み着いています。

関西弁で冗談まじりにおしゃべりしながら
竹を1mmよりも薄くして、器用に編んでいきます。

話しているうちにいつの間にかこの通り、箸置きを作ってくれました。
まるでリボンを編むかのような早業でした。

もともと東南アジアを旅するうちに竹細工に興味を持ち、
竹細工職人になったという清水さんに
ちょっと意地悪な質問をしてみました。

"海外の竹細工と日本の竹細工の違いってなんでしょうか…?"

「海外にも竹細工の技術が高い人はたくさんいますよ。
王様に献上するモノとか作っていますから。
ただ彼らの作るモノは中国雑技団のように、超人芸というか…。
日本人の作るモノは美しいんです。
そのモノだけではなく、周りの空間も含めて美しくしている気がします」

なるほど。清水さんの言わんとすることが妙に腹に落ちました。
確かに、「SELECT BEPPU」に置かれていた竹細工の商品は
どれも使うシーンの想像を掻き立てられるモノばかりでした。

続いて、伺ったのは「別府つげ工芸」。

昭和5年に建てられた長屋を守り、昔も今もこの地で
つげの木を使った工芸品を作り続けています。

もともとは、3代目の現社長のおじいさんが
くし職人としてスタート。

印鑑や将棋の駒に主に使われるつげの木は、
非常に堅く、細かい細工が可能なんだそうです。

おじいさんが若い頃に作ったというこのブローチ、
その細かいデザインと艶が木材とは思えませんでした。

観光地として別府が賑わっていた頃には、
50人の職人をかかえ、細工品を作っていました。
しかし、お客様が増えれば増えるほど、粗製濫造になり、
ついにはつげの木ではない木材を使ったりもしていたんだとか。

「今は原点を見直している時期なんです。
いいモノを作って、後継者を育てたい。
商品はマネできても、この場所での歴史はマネできないですから」

そう話す安藤社長は、時代に合わせた商品づくりにも余念がありません。
くしの需要が減っていくなか、つげを使ったブラシも作るようになりました。

つげの堅さとブラシの形状が頭皮にマッサージ効果を与え、
またあらかじめブラシに染み込ませてあるツバキ油が
髪に艶を出し、まとまりやすくしてくれるんだそう。

もちろんそれらはすべて手づくりです。

折りたたみブラシのちょうつがい部分にも
つげの木を利用しているのには驚きました。

工房には近所の方たちが集まってきて作業されていました。

「これをきちんとした産業として育てていきたいんです。
職人さんが食べられなくて、商品ができるわけはないからね」

社長の力強いお言葉に、つげ工芸のさらなる可能性を感じながら
工房を後にしました。

ちなみに、「SELECT BEPPU」に置かれていたこれらの商品が
9月末から福岡のMUJIキャナルシティ博多で販売されるそうです!

※詳細はこちら

実物を手に取って見られるチャンスです♪

別府のいいもの、みつけてみませんか?

  • プロフィール MUJIキャラバン隊
    長谷川浩史・梨紗
    世界一周の旅をした経験をもつ夫婦が、今度は日本一周の旅に出ました。
    www.cool-boom.jp
    kurashisa.co.jp

最新の記事一覧

カテゴリー