MUJIキャラバン

あおぞらポコレーション

2014年05月28日

滋賀県で出会ったカラフルな織物製品、
「coccori(コッコリ)」。

織物産業の盛んな滋賀県で、工場などで不要になった残糸を用い、
県内の福祉作業所で働く方々の独特のセンスで生み出された織物です。

coccoriは、それまで作業所の倉庫に眠っていたこれらの織物を、
日用品に加工し、製品化されたものでした。

その目的は、障がい者の賃金向上のため。

全国的に見て月平均約1万3000円といった障がい者の賃金を、
製品化して流通させることで、少しでも向上させようとしているのです。

こうした試みは、他の地域でも始まっており、
新潟県でも活発な動きが見られることを伺いました。

coccoriさんのご紹介で訪ねたのは、
阿賀野市にある福祉作業所、「あおぞらソラシード」。

新潟市内にある作業所「あおぞらポコレーション」のグループ施設です。

新潟市内から30分余り、内陸に車を走らせた山あいに、
あおぞらソラシードはありました。

「ここでは、社会とつながってお金を稼いでいける力はもちろん、
自分たちで食べていける力、自然の資源を生かしていける力を培っていけるよう、
こうした山あいに作業所を構えているんです」

施設長の本多佳美さんがそう話す通り、
施設の横には今後、農園やキャンプサイトとして運営していけるよう
広い空地が用意されていました。

こうした施設ができたことによって、
町中で働きたい人、自然のなかでのびのびと作業したい人と、
障がい者の働く環境の選択肢が広がったといいます。

本多さんは大学卒業後、就職した福祉施設がトラブルで閉鎖。

路頭にさまよってしまった利用者の受入先を作らなくては、という想いで、
理事長や理事の面々、地域の方々、保護者の協力のもと、
2003年、新潟市内に「あおぞらポコレーション」を設立しました。

杉の加工など、県内の企業の下請け事業で、作業所は軌道に乗りつつも、
震災によって、仕事が途絶えてしまう事態に陥ります。

「下請けだけでは事業基盤が弱い、
もっと独自の事業を手掛けていかないと」

そう考えた本多さんが運命的に出会ったというのが、奈良県にある
国産オーガニック化粧品会社、クレコスの副社長、暮部達夫さんでした。

クレコスは、米ぬかやへちまなど、
日本の伝統的な自然素材を生かした化粧品を20年以上前から手掛けています。

クレコスが、ちょうど新潟に直営店舗を構えたところで、
責任者としてやってきたのが暮部さんでした。

「手ぶらで行くのも失礼だったので、
下請け事業で出た越後杉の端材を持っていきました。
この杉の木で、石鹸箱を作らせてもらえませんか? とお願いしてみたんです」

そう切り出した本多さんに対し、暮部さんは独自のアイデアを返します。

「この杉を蒸留して、リネンウォーターにすれば、おもしろいかもしれない」

こうして生まれたのが、「熊と森の水 リネンウォーター」でした。

リネンウォーターは、カーテンやシーツ、衣類などに噴霧し、
雑菌・雑臭を除去する効果があります。

杉を蒸留することで、越後杉の香りを閉じ込め、
なおかつ杉の抗菌力を生かしたのです。

本多さんたちは、クレコスの暮部さんによる指導のもと、
品質管理や安定供給に対する意識と技術を身に付けてきました。

現在では、作業所員による厳しい成分チェックはもちろんのこと、

大手化粧品会社で商品開発に携わっていた責任者を招へいし、
製造管理全般について指導を仰いでいます。

他にも、地元の杉の端材や新聞紙と、
神社などで不要になった和ろうそくを用いて作る着火剤など、
次々とオリジナル商品を手掛けていく、あおぞらソラシード。

そこには、自然に囲まれた環境で、
イキイキと働く作業員たちの姿がありました。

「役割を与えられると、人は変わっていくんですよね。
これからも、地元の資源を生かしながら、
仲間と楽しくできることを手掛けていきたいです」

そう話す、本多さん。

リネンウォーターを代表とした、良い商品が前に出ていくことで、
作り手である障がい者や福祉作業所についても
世間に知られていく機会が増えていっています。

ちなみに、あおぞらポコレーションの"ポコレーション"は、
「poco(ちょっとずつ・ゆっくりと)」に、
「relation(つながり)」をくっつけた造語。

そこには、

「だれもがお互いを認め合い、幸せにくらせる社会。
青空のようにすっきりとした、ボーダーのない社会。
そんな社会へ向けて、ちょっとずつ、ゆっくりとつながりを広げていきたい」

という想いが込められていました。

施設を設立してから11年。

本多さんたちの想いが今、実を結び始めています。

  • プロフィール MUJIキャラバン隊
    長谷川浩史・梨紗
    世界一周の旅をした経験をもつ夫婦が、今度は日本一周の旅に出ました。
    www.cool-boom.jp
    kurashisa.co.jp

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