MUJIキャラバン

未来へ向かう、常滑焼

2013年03月14日

愛知県常滑(とこなめ)市は、知多半島西岸の中央部に位置し、
市の西部にある伊勢湾の海上埋立地には、
中部地方の玄関口"セントレア"(中部国際空港)を有しています。

そんな常滑市では、港に近く、良質な粘土と豊富な燃料があるという土地柄から、
日本六古窯の一つの「常滑焼」が古くから作られ、
窯業が主要な伝統産業とされてきました。

朱泥(しゅでい)の茶褐色の急須が代表作といわれますが、
土管や工業用タイルなどの産業陶器が多いことも特徴。
衛生陶器やタイルのメーカーとして知られるINAX(現LIXIL)の創業の地でもあります。

市内にある「やきもの散歩道」と呼ばれる道には、
登窯、煉瓦煙突、黒い板壁の工場など昭和の窯業施設の跡地が多く残っていました。

また、常滑は日本一の招き猫の産地でもあるそうで、
巨大招き猫が迎えてくれました!

実は無印良品でも数年前に、常滑焼シリーズを扱ったことがあります。
朱色は伝統的な朱泥で作り、黒色は同じ朱泥の生地を使い、
本焼後に炭でいぶすことで黒く仕上がります。

お茶をいれた時、朱泥に含まれる酸化鉄とお茶のタンニンが反応して、
苦み渋みがほどよくとれて、まろやかな味わいになるといわれているそう。

同じく無印良品のテラコッタ鍋も常滑産でした。

テラコッタとは、土の味わいを生かした素焼きの焼き物のことで、
水に浸してから、食材を入れて電子レンジにかけると、
鍋が吸った水分が蒸気に変わり、蒸し器へと早変わりするという逸品です。

(※無印良品の常滑焼シリーズは現在、販売を終了しています)

「常滑は職人気質が強くて、創作意欲の高い産地ではないでしょうか」

東京の陶器問屋に務めた後、常滑焼の窯元である実家に戻った
鯉江(こいえ)優次さんが産地の特徴について教えてくださいました。

全盛期300軒以上あったという窯元は、現在では約120軒に。
そして、今後も後継者不足の問題でさらに減少していくといわれているそうです。

問屋が販売してきた常滑焼の産地において、
窯元が自分たちで販売をするのは本来タブーとされていたそうですが、
9年前に実家に戻った鯉江さんは、
「自分たちが使いたいと思う陶器を発信していきたい」
とオリジナルのブランド「MOM Kitchen」を立ち上げました。

「MOM Kitchen」では"かわいい"をキーワードに
ひと手間かけた手づくりの器を展開。

「市場がF1のレースカーのスピードで進んでいるとしたら、
これまでの常滑は、軽自動車のスピードでした。
市場と産地のスピード感を埋めるのが自分の役目だと思っています」

と話す鯉江さんは、より多くのお客様に喜んでもらえるように
小ロットでの生産を心がけているといいます。

それが実現できるのは、祖父の代から引き継いでいる水引きろくろ機や、
自社で鋳込みの型職人を抱えていること、

さらには釉薬づくりも自社で手掛けていることが理由のようでした。

ここまで多様な機械・技法を用いる窯元は、
全国的にも珍しいと感じたほどです。

また、これまで窯元はきっちりとした納期を設けることなくやってきたそうですが、
鯉江さんは「一企業として納期を設定するのは当然のこと」と話します。

「僕が子供の頃の記憶ではこの産地も元気でした。
時代を築いてきた人たちが、子供には働かせたくない…というのが嫌で。
やり方によってまだまだやれることがあると思うんです。
まずは自分たちの窯が元気になって、周りを引っ張っていきたいです!」

力強い言葉を残してくださった鯉江さんは、
「今後は海外の市場に合わせたものも展開できたら」と
私たちが訪問した前日に、ドイツへの視察出張から帰ったばかりでした。

古くから常滑の地で作り続けられてきた常滑焼。
技術の面で伝統を残しながらも、一企業としてやり方を今の時代に合わせる。
一見当たり前のようなことこそ、伝統産業の発展の一歩なのかもしれません。

  • プロフィール MUJIキャラバン隊
    長谷川浩史・梨紗
    世界一周の旅をした経験をもつ夫婦が、今度は日本一周の旅に出ました。
    www.cool-boom.jp
    kurashisa.co.jp

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