MUJIキャラバン

発酵と人生の設計図

2014年04月30日

宮崎県のほぼ中央にある綾町は、「有機農業の町」として知られており、
私たちもキャラバン中にその町づくりを取材しに訪れた場所です。

そんな綾町で造られているお酢があると聞き、生産者を訪ねました。

Found MUJI でも取り扱っている「綾の有機黒玄米酢」です。

「うちのお酢は代々、酢杜氏によって引き継がれてきたものです」

大山食品株式会社の4代目社長・大山憲一郎さんに
お酢づくりの現場をご案内いただくと、
そこには辺り一面に並んだ瓶(かめ)の数々が目に飛び込んできました!

南国の太陽が降り注ぐ南斜面にあることに加え、
雨よけのアルミ傘が光を反射し、とても眩しい光景です。

「この瓶の中に、綾産の有機玄米と綾の地下水、黒麹、種酢を
入れるだけのシンプルな製法ですが、
昭和5年の創業以来変わっていないやり方です」

大山食品では、この瓶仕込みの際に、焼いた状態の備長炭を入れるそう。
それは瓶内を発酵しやすい環境にするための工夫だとか。

また、瓶の蓋には通気性の良い米袋を使用し、
その上に5円玉を置くことで、その色の変化で中の発酵状況を
見極めているといいます。

「宮崎の焼酎蔵の多くも瓶を仕込みに使っていますが、
お酢づくりにはこの瓶がもってこいなんです。
瓶の中で最初アルコール発酵が起こると、アルコールは軽いので自然と上に行き、
次に酢酸発酵すると、酢酸は重いので下に行く。
下の部分がとんがった瓶の中で自然と対流が起こり、発酵が促されるのです」

さらに、屋外に瓶を置くことで、昼と夜との温度差が
味に深みとコクを与えてくれるんだそう。

瓶から直接汲んだ黒玄米酢を味見させていただくと、
お酢特有の鼻に抜けるようなツンとした感覚はなく、
とてもまろやかで、コクのある優しい味わいでした。

大山食品の"黒玄米酢"とは、「黒麹」を使ったお酢のこと。

一般的にお酢を仕込む際に使う「白麹」だと、さっぱりとした味の仕上がりに、
大山食品の使う「黒麹」だと、コクのある仕上がりになると大山さんは話します。

また、お酢は春と秋に仕込んで、瓶の中で6ヵ月発酵させ、
さらにタンクに移してからも最低6ヵ月熟成させます。
そうすることで、さらに味がまろやかになるのだそう。

ところで、大山食品の本社は綾町のお隣、国富町にあります。
てっきり「有機農業の町」だから、綾町に工場を構えたのかと思っていたら、
こんなお話を聞くことができました。

「40年ほど前に綾に工場を移転したのですが、
それはお酢の仕込みに欠かせない"水"を求めてきたからです。
当時の綾は過疎化が進み、『夜逃げの町』といわれていたくらい。
それでも『有機農業の町』としての方向性はありましたから、
原料にこだわりのあるお客様からの依頼とも一致して決めました」

今年から会社として、農業の本格スタートもした大山食品。

「目標は、すべての原料を自分たちで作って、加工、販売もすることですね」

そう話す大山さんは、着々と自分の夢を実現させていました。

20歳でお酒の魅力にハマり、将来お酒造りをしたいと決めた大山さんは、
現在、どぶろく造りも手掛けています。

そのための製造や販売を行う施設も作り、一歩一歩前へと進んでいます。

そんな大山さんがいつも持ち歩いている手帳には、
○歳で○○をするという、明確な人生の設計図が描かれていました。

「大きな将来の絵を描いて、それを繰り返し見ることで
やりたいことを潜在意識に摺り込みます。そうすると自然と行動に移せる。
発酵食品を極めて、世の中に貢献するのが私の人生の目標です」

お酢の伝統製法と味は守りながらも、
自らの道を決めて、歩み続けている大山さん。

すっきりと澄んだ「綾の有機黒玄米酢」の味は、
まっすぐとした眼差しで前を向いている、
大山さんの信念そのものかもしれません。

【お知らせ】
MUJIキャラバンで取材、発信して参りました生産者の一部商品が
ご購入いただけるようになりました!
その地の文化や習慣、そして生産者の想いとともに
産地から直接、皆様へお届けする毎月、期間限定、数量限定のマーケットです。

[特設サイト]Found MUJI Market

  • プロフィール MUJIキャラバン隊
    長谷川浩史・梨紗
    世界一周の旅をした経験をもつ夫婦が、今度は日本一周の旅に出ました。
    www.cool-boom.jp
    kurashisa.co.jp

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