連載ブログ 富士山麓通信

八方だし

2012年03月21日

食べることが大好きで、お料理も好きなほうですが、手の込んだお料理を毎日作る余裕はありません。だからといって、インスタント食品や化学調味料に流れるのも、ちょっと・・・というわけで、わが家ではお料理の基本装備のところには、少しだけ手をかけます。仕事で家を留守にすることも多いので、基本装備さえあれば、留守の間も家族(ちなみに、わが家は私以外、犬猫に至るまですべて男)がなんとか料理できるだろう、という思惑もあってのことですが・・・。
今回ご紹介するのは、八方だし。薄めて麺つゆ・天つゆに、そのままで、あるいは砂糖やお酒・お酢などをその都度足して、煮物に、おひたしに、焼き物に、炒め物に、酢の物に。「四方八方」に使えるところから付いた名前のようですが、まさに、これさえあれば日常の和風料理はほぼまかなえるという便利なだしです。

上の写真の茄子の揚げ煮も、手作りの八方だしで。素揚げした茄子を、薄めた八方だしの鍋に放り込み、少し熱を加えるだけです。

もちろん市販の麺つゆでも事足りるのですが、混ざりものの一切ない味というのは、やはり手作りならでは。以前ご紹介したパンチェッタもそうですが、家庭の味のベースになるところだけは、手作りで押えておきたいという思いがあります。

材料は、いたってシンプル。昆布、鰹節、干し椎茸という日本の三大だしの素に醤油と味醂のみ。お酒を加えて作る方法もあるようですが、わが家では、基本のだしには入れず、お酒は必要な時にその都度、加えるようにしています。

これらの材料すべてを鍋に入れて一晩おき、翌日、弱火にかけ、沸騰直前で止めて、おしまい。(弱火で少し加熱を続けるレシピもあるようです) 冷めたら、汁と具材に分けて、汁部分が八方だしです。丁寧なレシピには「紙で漉して」とありますが、私はざっと茶漉しで漉すだけ。丁寧にやって負担になるよりは、アバウトでも手作りを楽しむほうがいい、という理屈です。

昆布は、後で佃煮に使うので最初から細くカットします。味醂と醤油は、ほぼ同量。今回は味醂・醤油各900ml、干し椎茸5枚、昆布3枚と鰹節を使いました。

唯一こだわるのは、鰹節。もちろん、市販の削り節でも十分できますが、我が家では自分で削ります。なんといっても風味が違いますし、鰹節1本用意しておけば、急なお客さまの時も目の前で削って出せば、冷奴だってご馳走になってしまう。非常食にもよいと聞き、最近では非常用持ち出し袋にも1本入れています。

鰹節は削るのが大変、と避ける方も多いのですが、濡れ布巾に包んでビニール袋に入れて冷蔵庫で保管すれば、ほどよい湿り気で削りやすくなります。

だしをとった後の昆布、鰹節、干し椎茸は水を足して弱火で煮て佃煮にします。

椎茸を刻み、昆布・鰹節と一緒に鍋に戻し、水を足して弱火で煮るだけ。できあがった佃煮は小分けして瓶詰めし、瓶のまま冷凍保存しておくと、いつでも楽しめます。

ご覧の通り、作り方はいたって簡単。いろいろなお料理に使いまわしできますので、忙しい方にこそ試していただきたいおだしです。作りおきしておくと、家族の誰が料理しても一定の味に仕上がりますので、「おふくろの味」の刷り込みにも一役買っているかもしれません。

  • プロフィール くらしの良品研究所所員
    M.Tさん

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