研究テーマ

各国・各地で

"MOTTAINAI"

日本語の「もったいない」を"MOTTAINAI"という世界共通語にして広めたのは、環境分野で初のノーベル賞を受賞したケニア人女性、ワンガリー・マータイさんでした。日本のお家芸だと思っていた「もったいない」は、今や世界共通の意識に。特にヨーロッパでは、捨てられる運命にあった食材やモノを救い出し、新しい価値に変換する取り組みが始まっているといいます。今回は、そんな活動についてご紹介しましょう。

誰も欲しくないものを売るスーパーマーケット

昨年の春、デンマークのコペンハーゲンで、他のお店が欲しがらない商品を販売するスーパーマーケットがオープンしました。そのお店「ウィー・フード(WeFood)」が扱っているのは、賞味期限(おいしく食べられる期限)が間近、ラベルが間違っている、包装に傷や汚れが付いている、といった理由で他のお店が取り扱わない食品や化粧品、家庭用品など。これまでは捨てられていたこれらの商品を、さまざまな企業から無料で仕入れ、普通のスーパーよりも30~50%安い価格で販売しているというのです。値段を下げることで、収入の少ない人でも買い物ができるのはもちろん、意識の高い消費者も関心を持って買い物に訪れるとか。運営しているのは、ホームレスを支援する非営利団体とキリスト教系の慈善団体で、すべての利益は飢餓に苦しむ国への支援活動などに充てられます。

"ゴミ"を食材とするレストラン

同じくコペンハーゲンには、"ゴミ"を食材として利用するレストランもあるそうです。NPOによって運営されるそのレストラン(Spisehuset Rub & Stub)は2013年秋にオープン。形が悪くて売れない農作物や生協・スーパーマーケットで賞味期限切れになった商品など、安全に食べられる"厳選されたゴミ"が寄付され、使われています。「食品廃棄物と闘う」ことを目的にするこのレストランは、最初の1年半で3.5トンもの"ゴミ"を生き返らせたとか。食事の中の"ゴミ"の割合は平均40%(2017年3月現在)。この割合を上げようと日々挑戦しているといいますから、目指すラインはもっと高いところにあるのでしょう。
当日にならないと、どんな"ゴミ"が調達できるかわからないから、メニューは日替わり。「ゴミを出さないことは、消費しないこととは違う」という考えから、おかわりも持ち帰りも自由にして「消費しながらもゴミを減らせるサステナブル(持続可能)な道」を実践しています。

フランスの鶏、スペインの冷蔵庫

デンマークだけではありません。フランスでは、2015年、スーパーマーケットが売れ残った食品を廃棄処分することを禁止する法律を制定。さらに、一般家庭から出る生ごみの量も無視できないとして、各家庭で鶏を飼い、野菜の皮などの生ゴミを鶏の餌に再利用する動きも広まっているとか。参加者には採卵鶏が提供され、産みたて卵も手に入るという一石二鳥の取り組みです。
一方、スペイン・バスク自治州のガルダカオで地域のボランティア団体が立ち上げたのは、余った食事を困窮者へ届ける「冷蔵庫」プロジェクト。屋外に設置された「連帯冷蔵庫」を通して、近隣の住民やレストランが、残りものや賞味期限切れ間近の食品を提供することで、食品ロスも減らしていこうというものです。冷蔵庫の中身のチェックもボランティアの手で行われています。

日本にも新しい動き

日本でもスーパーの片隅に「見切り品」「処分品」として、賞味期限間近の食品が割安で置いてあるのはよく見かけます。もちろん、すぐに食べるなら何の問題もない品々。でも、なんとなく遠慮がちに置いてあるせいか、「古い=安い=おいしくない」といったイメージになりがちで、それを買って消費することが食品ロス削減になるという前向きな意識にはつながりにくいかもしれません。
そんな中、食品ロスを減らしながら社会活動団体への支援もできる、社会貢献型ショッピングサイト(KURADASHI.jp)が登場し、注目を集めています。いわば、デンマークのスーパーマーケットのインターネット版で、価格は定価の約30~90%引き。賞味期限が迫っていて、販売単位も一人で使うにはやや多すぎるのですが、ご近所で分け合うなど使い切るための工夫ができれば、意味のある買い物になりそうです。

そもそも、"ゴミ"とは何でしょう?

魚の鮮度によって、刺身→焼き魚→煮魚と料理を工夫するのは、かつての日本人ならごく常識的なことでした。魚の内臓だって、それを活かせる人には立派な食材になりますし、活かせない人にとっては単なるゴミ。ついさっきまで食材だったものも、「捨てる」と決めたその瞬間から、ゴミになるのです。
デンマークのスーパーで売られている野菜は、若干フレッシュさには欠けるかもしれませんが、調理の工夫次第で何とかなりそうですし、加工品にいたっては品質も変わらずお買い得。そう考えると、十分使えるもの、食べられるものを"ゴミ"にしているのは、私たち自身ではないか? という気もしてきます。お金を出せば何でも買えることに慣れてしまった私たち現代人は、「工夫する」喜びを忘れてしまい、それが食品ロスの増加にもつながっているのかもしれません。

国連の世界食糧計画によると、世界で生産される全食品の約3分の1にあたる約13億トンが、毎年無駄にされたり廃棄されたりしているといいます。その一方で、世界中で約7億9500万人の人が栄養不足に苦しんでいるという現実も。"MOTTAINAI"を形にするために、今の私たちにできることは何でしょう?

研究テーマ
食品

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