研究テーマ

先進国と途上国の間で ―フェアトレード―

世界の国々の発展過程はさまざまで、国によって経済の浮き沈みもあります。「先進国・途上国」というくくりがあるとすれば、日本はたしかに先進国。かつてはヨーロッパやアメリカに追いつこうとしてきましたが、今や他の国から追いかけられる立場になりました。そして今後は、近隣の中国などが、日本の経済に追いつき追い抜いていく時代が来るのでしょう。

格差と市場原理の中で

世界を見渡すとき、先進国と途上国の間には明らかに格差があり、貿易はこの格差の中で行われています。さらに言えば、貿易自体が不平等の上に成り立っています。経済的にも政治的にも強い力を持つ国が、弱い国を相手に仕入れや輸出をするのですから、当然おこることでしょう。
途上国が先進国に対して優位に立つには、安い労働力を武器に、安い製品をつくって輸出することです。しかし輸入国は、自国の企業を守るために、高い関税をかけてきます。反対に、原料については、限りなく安さを求めてくるのです。市場原理に任せていると、安さの追求は世界規模での価格競争になり、とどまるところがありません。一生懸命働いて生産しても、他でもっと安いものがあれば買い手は安い方に流れ、その安さに市場価格が影響されたりもするのです。
これでは、生産者は安心して暮らせません。貧困から抜け出ることもできません。もし、あらゆる生産物の価格が労働時間との対価によって決められるならば、みんながなんとか暮らしていくことはできるでしょう。しかし、市場経済の中では、そうもいきません。中間マージンを取られたり、時には労働の対価とかけ離れた金額で販売せざるを得ない状況の中で、もっとも体を酷使している現場の生産者が、劣悪な環境での仕事を余儀なくされることもあります。それでは、教育を受けたり新しい技術に投資したりするどころか、人間らしい生活をするための休養すらとれないでしょう。

公正に取引する

こうした実情を背景に、先進国が途上国の生産者と取引をする際の環境を整えていこう、という取り組みが始まりました。「公正取引=フェアトレード」という考え方です。
必要な資金を前払いしたり、長期的な安定取引をしたり、市場価格より1~2割ほど高い値段で取引して生産者の技術向上や自立支援をしたり。農薬の使用を減らして、生産者の健康を守っていこうという取り組みにも繋がっています。
商品の価格は、ほんの少しだけ高いのですが、その差益がしっかりと生産者に還元されていく仕組み。そして味や品質については、フェアトレードならではのおいしさや丁寧さを追求することもできます。
いま、日本で認証されている商品はコーヒーや紅茶、切り花、カカオ、コットンなど。生産国は、インド、タイ、インドネシア、エチオピア、ケニア、アルゼンチン、ネパール、バングラディッシュなどですが、まだまだ一般的に認知されているとは言えません。世界でもっとも認知度の高いスイスでは、国民一人当たりのフェアトレード商品購入額が、年間3,000円。それに対して日本では、10円未満というのが実態です。

私たち全体の問題として

高度成長時代には、多くの国が自国の発展をなにより優先させて突き進んでいきました。経済的な繁栄国家を目指すという、未来社会のモデルがあったからです。しかし今、未来の理想はどこにあるのでしょう? 人口増加と食糧難、地球温暖化による生産の被害など、途上国の抱える問題は、そのまま私たちの住む地球全体の問題と言ってもよいでしょう。地球規模での問題を解決するには、先進国・途上国の区別なく、世界全体が手を組んでいくことが必要です。

無印良品では、2006年のレギュラーコーヒーに始まり、いくつかのフェアトレード商品を扱っています。またネット上では、フェアトレードに携わるフェアトレードジャパンの取材記事もご紹介しています。
みなさんの疑問やご意見をうかがいながら、フェアトレードの意味を一緒に考えていきたいと思います。そして、フェアトレード商品を購入していただいたみなさんの気持ちを、現地へ届けていきたいと考えています。

研究テーマ
食品

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