研究テーマ

夏に向かって ―干し野菜―

(今週のコラムは、過去にお届けしたコラムをコラムアーカイブとして、再紹介します。)

まぶしい光の中で爽やかな風が吹き抜ける5月。晴れた日は、野菜にもちょっと日光浴をさせてみませんか? お日さまの魔法がかかると、野菜がおいしく変身。食べ慣れた野菜でも、いつもと違う味わいを発見できるでしょう。

手軽にできる「半干し」

干すというと「乾物」を思い浮かべる方も多いでしょうが、今回ご紹介するのは、乾物と生野菜の中間の「半干し」です。保存のためというより、野菜をおいしく食べるためのもので、短いものなら2~3時間お日さまにあてるだけ。細切り・乱切り・いちょう切りなど、作りたい料理に適した形に切り、お日さまの下で野菜を広げます。薄く細く切ったものほど水分が飛びやすく、干す時間も短縮。仕上がりを待つ気持ちは、「家庭菜園で野菜を育てる楽しみに似ている」と言う人もいます。

干し野菜は、おいしい

お日さまをたっぷり浴びた干し野菜には、生の野菜では味わえない魅力がたくさんあります。その第一は、野菜本来のおいしさを楽しめること。たとえば、トマトは酸味や青臭さがやわらいで甘みが強調され、きゅうりは水っぽさや青臭さが減って弾力が出てくる、ニンニクはニオイがやわらいで甘みが感じられる、茄子は皮が気にならなくなって果肉の弾力が楽しめる、などなど。干すことによって野菜に含まれる水分が蒸発するため、素材そのものの味が凝縮され、旨みや甘みが強く感じられるのです。

お日さまが下ごしらえ

干し野菜を使って驚くのは、下ゆでや塩もみなどの下処理がいらず、生野菜よりずっと短い時間で調理できること。干すこと自体が、ひとつの調理工程になっているんですね。水分が蒸発しているから、サラダや和え物も水っぽくなりません。火が通りやすいので、ソテーや炒め物、煮物などの加熱時間を短縮できます。揚げ物は、油ハネしにくく、手早くカラッと揚がります。味噌汁やスープでは、煮くずれしにくく、濃縮された野菜の旨みを楽しめます。味がしみやすいので、調味料も少量に。干すというひと手間を加えただけで、料理がシンプルになるのを実感できるでしょう。また、捨ててしまいがちな皮や葉なども、干すことで食べやすくなって、無駄なく使えるのもうれしいところ。ただし、レタスや水菜など繊細で葉の薄い葉もの野菜は、不向きなようです。

干し野菜の栄養

野菜は、みずみずしいものほど栄養があると思いがちですが、干すことによって増す栄養もあります。
その代表選手は、しいたけ。生しいたけに含まれるエルゴステロールという成分は、紫外線にあたるとビタミンDに変化。天日に干すことによって、ビタミンDの含有量は生のときの何倍にも増えるといいます。ただ、市販の乾物製品は、天日干しではなく電気や温風乾燥のものが多く、製造過程ではビタミンDが作られません。市販の干ししいたけは、使う前に一度天日干ししてから食べるようにするとよいそうです。

必要なものは「陽射し」だけ

ベランダ、庭の片隅、出窓......晴れてカラッと乾燥した日には、できるだけ風通しのよいところを選んで、野菜を干してみましょう。ふとん干しと同じで、適した時間帯は陽射しの強い10時~15時ごろ。日が落ちてきたら、夜露を吸わないように屋内に取り込みます。干し足りないときは、翌日また干せばいいのです。
道具は、家にある調理器具で十分。竹ざる、ステンレスのざる、オーブンやバーベキュー用の網、ケーキクーラーなどなど、通気性のよいものなら、なんでも使えます。本格的にやるなら、釣具屋さんやアウトドアショップで売っている吊りネットを使う方法も。風が抜けるので、乾燥時間を短縮できて、鳥などに狙われる心配もありません。

太陽と風の力でおいしく変化する干し野菜は、自然の恵みを生かすことの大切さと楽しさに気づかせてくれます。暮らしの中でエネルギー消費量を抑えていくことが課題になっていく、これからの時代。干し野菜は、新しい暮らし方の小さな実践といってよいかもしれません。できることから、楽しみながら、始めてみませんか?

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食品

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